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PACS(パクス)

 Pacte Civil de Solidarité(通称PACS)は、1999年11月15日にフランスで民法改正によって施行された「異性あるいは同性の自然人たる二人の成人による共同生活を組織するために行われる契約」、平たく言うと「準婚姻制度」です。
 日本語では民事連帯契約、市民連帯契約法案、連帯民事契約、連帯市民契約、連帯市民協約などと訳されます。
 
 PACSは、リオネル=ジョスパンを首相とする左派連立政権が、法的な権利が与えられていない同性カップルのために創設したものです。同性愛者の人権問題に精通している社会党のパトリック=ブローシュ下院議員が起草しました。国会では右派の猛烈な抵抗にあい、一度は否決されましたが、120時間もの審議の末、99年10月に成立したそうです。
 ブローシュ下院議員は「PACSによって民法で初めて同性カップルの権利を認められました。『同性愛』がタブーでなくなったのも、PACSのお陰です。PACS以前は、同性愛という言葉を発するのさえ嫌がるような人々もいました。PACSが国民的な議論になり、同性愛の問題が自由に議論されるようになりました」「PACS以降、同性カップルは自分たちの性的指向を隠さずにすむようになり、道で手をつないで歩くというようなことも当たり前になりました。同性愛者であることを両親や友人に公言できるようになったということは、解放と認知という効果があったことを示します。これまで差別され、戦時中には迫害さえされてきた人々が、PACSによって人間としての尊厳を取り戻すことができたのです」と語っています。
(及川健二のパリ修行日記/ポット出版「フランスの準結婚制度「パクス」って何? 同性間もオッケー!──成立8年で28万カップル」より)
 
 PACSは同性・異性を問わず、共同生活を営もうとするカップルを対象とする契約(非婚カップル保護制度)であり、当事者自身が相互の権利と義務の関係を決めて契約書を自由に作成し、それを裁判所に提出して公証してもらうことにより、当事者だけでなく第三者にもその効力を発生させるものです。結婚と異なり、PACSには貞操義務がありません。
 PACSの関係であっても事実婚の関係であっても(子に対する認知があれば)親権は両親が行使します。離婚や離別があっても、原則として共同親権のままです。(在マルセイユ日本国領事館「フランスと日本の親権制度の相違点」より)
 PACSの解消(契約の破棄)は必ずしも両者の合意を必要とせず、また、一方に婚姻や死亡があれば自動的に終了します。

 このようなPACSは、同性カップルのみならず、まだ結婚は早い・結婚は重いと考えるような異性カップルにも非常に人気が高く、実はPACSを利用しているカップルの半分以上が異性カップルで、年々その割合が増え、2006年には93%にまで達しています。
 フランスでは2013年に婚姻平等が達成されましたが、それ以降もPACSの制度は維持され、毎年約20万人が新たにPACSを結んでいます。

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