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レズビアン・パワーが結集! クリスティーナ・アギレラ『Bionic』
マドンナやカイリーと並ぶゲイ・イコンでありゲイの強力な味方として知られるクリスティーナ・アギレラ。「Not Myself Tonight」のPVで再び世界に強烈なインパクトを与え(ゲイを歓喜させ)、素晴らしいクオリティのニューアルバム『Bionic』も順調に売り上げています。が、実はこのアルバム、多くのレズビアン・アーティストが携わっているのです。
ガリガリにやせた男の子や女装者やゲイに対して「You're beautiful」と歌いかけ、2003年のGLAADメディア賞の特別賞を受賞したクリスティーナ・アギレラ。インシンクのランス・バスのカミングアウトの際は「周りが騒ぎ立てる意味がわからない。勇気のある素晴らしい行為だわ」と彼を絶賛し、カリフォルニア州で同性婚が禁止された際は「人種差別だわ」と抗議するなど、ことあるごとにゲイへのエールを送り続けています。
また、2004年のMTVアワードではブリトニーとともにマドンナにキスするパフォーマンスを見せたり(写真右)、女性への性的関心も堂々と認めている(応援の気持ちをこめて「あえて」バイセクシュアルと言っているフシもある)、真のスーパースターです。
そんなクリスティーナ・アギレラのニュー・アルバム『Bionic』は、前作『Back To Basics』が過去に遡った(クラシックテイストの楽しさでゲイたちを魅了した)のに対し、未来がコンセプト。R&B、HIP HOP、エレクトロ、パンク、ラテンなど様々なテイストを盛り込み、エッジでポップなエンターテインメント作品に仕上がっています。
ここには今まで誰も聴いたことのないアギレラがいます。アギレラはちょうどマドンナがそうだったように、次々に自分自身を塗り替えながら新しい世界を切り開き、オーディエンスを熱狂させ、見事に成功を収めてきました。が、『Bionic』の脱皮のレベルは、予想をはるかに超えて、一種、突き抜けたアートの高みに達しています。「スゴい…いったいこの人、どこまで進化するんだろう」というような、ちょっと鳥肌モノの興奮を覚えます。アギレラは本気です。そして本物です。
この『Bionic』、実は多くのレズビアン・アーティストが製作に関わっており、かつてないほどレズビアン・パワー満載なアルバムでもあるのです。
まず、ポロウ・ダ・ドン(ファーギー、ウィル・アイ・アム、アッシャー他)やトリッキー・スチュワート(ビヨンセ、ブリトニー・スピアーズ、リアーナ他)と並んでプロデューサーの一人に名を連ねているのが、リンダ・ペリーです。
リンダ・ペリーはレズビアンとしてカミングアウトしながら音楽的にも成功を収め、米国のレズビアンに絶大な支持を得ている人です。(詳しくはこちら)
彼女は「Beautiful」や「Keeps Getting' Better」も手がけており(「Beautiful」の感動はリンダ・ペリーのおかげでもあるんですね、きっと)、アギレラとはすでに蜜月な関係です。ちなみにリンダ・ペリーはアダム・ランバートのデビュー・アルバムにも「A Loaded Smile」を提供しています。
「Woohoo」ではリル・ウェインの秘蔵っ子ニッキー・ミナージュとコラボしています。ニッキー・ミナージュはマライア・キャリー、リル・ウェイン、リュダクリスらとコラボしてきたことで人気に火がつき、リル・キム(「レディ・マーマレイド」でアギレラと共演)の再来とも言われていますが、これからデビューアルバム(プロデューサーにカニエ・ウェストなどの大物を指名したというからスゴイ)を売り出そうというタイミングである今年4月、バイセクシュアルであることをカミングアウトしました。まるでアダム・ランバートのようですが、HIP HOP界に生きる黒人女性としてのカミングアウトはもっと勇気が必要だったはずです。素晴らしいです。(詳しくはこちら)
今年1月に発表されたマライア・キャリー「Up Out My Face ft. Nicki Minaj」のPVでは、まるでバービーのような、ドラァグクイーンのようなカワイイ姿で楽しませたニッキー・ミナージュですが、「Woohoo」は2ndシングルになるそうなので、アギレラとのコラボPVも製作されるハズで、『Telephone』に次ぐアガる(クィアな)コラボPVになりそうな予感。とても楽しみです。
「My Girls」では、 ダイク・アイコンとして崇められているピーチズと競演し、音楽ファンだけでなくレズビアン・シーンも歓喜させたそうです。(詳しくはこちら)
その「My Girls」はプロデューサーにLe Tigre(ル・ティグレ)を迎えて製作されました。ル・ティグレは元BIKINI KILLのキャサリーン・ハンナのエレクトロでローファイなガールズ・パンク・バンドですが、キーボード担当(ジャケ写の真ん中のひげを生やしている方)であるJDサムソンがレズビアンであることをカミングアウトしています。
そして、オーストラリアの不思議系シンガー・ソングライター、Sia(シーア)とも多数、共作しています。シーアはバイセクシュアルであることをカミングアウトしており、JDサムソンとの交際が伝えられています。(詳しくはこちら)
今月号でアギレラが表紙を飾っている『OUT』誌のインタビューでも、シーアとLe TigreのJDのことが語られています。
ボーナストラックとして収録されている「Monday Morning」では、2008年に衝撃のデビューを果たしたサンティ・ゴールド(サントゴールドから改名)とコラボしています。
サンティ・ゴールドが公にセクシュアリティについて言及したことはないようですが、彼女もレズビアンではないかと噂されています(その特異な感性は絶対ストレートじゃないだろうと思わせるものがあります)。ゲイ的にも絶対ウケる音楽性です。
ともかく、『Bionic』ぜひ聴いてみてください。
そして、この素晴らしいアルバムにはたくさんのレズビアン(やバイセクシュアルな)女性たちのパワーが詰まっているんだということを、周りの人たちに伝えてあげてください。
(後藤純一)
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