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レポート:畑智章写真展『THE NIGHT IS STILL YOUNG』
LA在住のゲイのフォトグラファー、畑智章さんの写真集発売を記念した個展『The Night Is Still Young』が、江東区清澄白河のギャラリー「AKAAKA」で開催されています。2000年前後の時代、関西のクラブシーンで活躍していたドラァグクイーンやゴーゴーボーイの写真が、10年近い時を経て蘇ります。愛しさと、悦びと、切なさと…さまざまな思いを喚起する、素晴らしい写真展の模様をレポートします。


清澄白河の駅からのんびり歩いて3分ほどの住宅街の一角に、赤いハンカチというかフラッグが掲げられた民家があります。そこが「AKAAKA」です。透明のビニールをくぐり、中に入ると、さまざまな写真集が置かれ、手に取って見ることができるスペースになっています。真ん中のテーブルには、写真集『THE NIGHT IS STILL YOUNG』が平積みにされ、奥の壁にカーテン代わりにかけられたスパンコールの布…その向こう側が、ギャラリーという名の非日常空間になっています。
スパンコールの向こう側へと飛び込めば、そこはミラーボールが回り、『Dancing Queen』や『Relight My Fire』や『Let The Sunshine In』といったダンスクラシック(ゲイ・ディスコ・アンセム)が流れ、ドラァグクイーンやゴーゴーボーイの写真がスライドショーで映し出される空間です。

薄いラメのカーテンをくぐると、そうした写真のマスターピースが展示されるギャラリースペースになっていました。フロアにはラメがキラキラと輝き、白い壁に展示されたクイーンや男の子たちの写真が、生き生きとした姿で微笑み、誘惑し、生を爆発させています。最高にグラマラスで、猥褻で、ゴージャスで、場末で…思わず「素敵!」「大好き」「That's Gay!」と言いたくなるに違いない写真の数々。その中に友達を発見したりすると倍増だと思いますが、本当に楽しく、幸せな気持ちにされてくれます。
再び薄いラメのカーテンをくぐり、ミラーボールの下、ベンチに座り、ディスコミュージックを聴きながらスライドショーを眺めていると、不覚にも涙がこぼれそうになりました。その写真たちは、ある時代、あるシーンを切り取った記録というだけでなく、その時代、そのシーンを最高に素敵な姿で駆け抜けた人たちへの「愛」のメッセージであり、「讃歌」だと感じたからです。人は死ぬとき、人生を走馬灯のように振り返ると言いますが、その映像とはこうしたものかもしれない…そう感じました。

キュレーターのエリック・C・シャイナーさんは「畑と、彼の写真は、毎週土曜日に幸福と創造性、そして社会的なアクティヴィズムに包まれていた場所の儚い姿に対して静かに祈りを捧げているのである。」と書かれていました。本当にその通りだと思います。
写真家とは時に、自分の表現にこだわるあまり、被写体からその生き生きとした表情や有機性を奪い、モノのように、1つの素材として扱うことがあるかと思います。また、被写体の抱える怨念のようなものを見る物に訴えかける写真、というものもあるかと思います。畑さんの写真は、そうしたところから最も遠く隔たっています。一見とてもクールに見える写真が実は笑いを誘うものであったり、メイクがどろどろにとけてしまったドラァグクイーンがたとえようもなく美しい表情で写っていたり…それはまさにゲイテイストというものではないでしょうか。「夜の生き物」たちがクラブで見せる至福の悦び、最高に人間くさい瞬間を、限りない愛情を込めて写し出しているのです。

最後に、畑さんがこの作品のシリーズについて語ったコメントを紹介したいと思います。
日本のドラァグクイーンは80年代のNYのクラブシーンを模倣すると言う形でスタートし、日本と言う、まさに独自の文化を持つ孤島で進化しました。
僕はシモーヌさんが始めた頃のドラァグのシーンを一部の映像でしか見たことはありませんが、恐らく今回の写真に関して言えば、そのシーンの黎明期から爛熟期に当たる、狂乱の時代を切り取ることができたものだと思っています。そしてその日本のドラァグ、というのが、再びNYに逆輸入と言う形で戻ってゆき、出版と言う形で再び世界へと流れてゆく、という循環を作り出せたのであれば、僕の写真家としての使命はほぼ達成されたと言っても良いかもしれません。
そういう意味で、今回の本を見た若い世代の子達が、付け睫毛とウィッグで武装し、欺瞞に満ちた社会に対して全く別の「欺瞞で」それを無効化し、笑い飛ばし、陳腐な歌をリップシンクしながら、日々自分たちに押し付けられる「何か」に対して抵抗し、それを破壊していく――そうやって新しい世界を自らのものにする――そういうきっかけになって欲しいと思います。
畑智章写真展「THE NIGHT IS STILL YOUNG」
会期:10月1日(金)~10月30日(土)
開館時間:12:00~20:00
休館日:日・月曜日
場所:スペースAKAAKA(東京都江東区白河2-5-10)
(後藤純一)
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