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ゲイだらけで音楽を楽しむ幸せなひととき〜「プレリュード」レポート

7月17日土曜日、「なかのZERO大ホール」で東京プライドパレード公式プレイベント「プレリュード」が行われました。暑いさなか、大勢の人たちが集まり、いっしょにゲイの楽団や合唱団の演奏を楽しみ、幸せな時間を共有しました。

ゲイだらけで音楽を楽しむ幸せなひととき〜「プレリュード」レポート

 「プレリュード」は東京プライドパレードの公式イベントとして、2005年から四谷区民ホール(収容人数約450)で開催され、パレードがお休みをしている間も毎年恒例のコミュニティイベントとして継続されてきました。
 最初の頃は参加者も140人(6団体)くらいでしたが、年々成長を遂げ、今年は会場をなかのZERO大ホール(収容人数約1300)に移し、9団体・200人以上による一大コンサートとなりました。

 土曜日のお昼、しかも真夏日の暑いさなか、昨年を上回る約330名(出演者、スタッフを合わせると600名近く)もの人たちが「なかのZERO大ホール」に集まりました。(中野駅に着いたとたん、イカニモ系な人たちがあちこちにそしてホールは文字通りゲイだらけで、それはもう、壮観な眺めでした)

 オープニングは「海外からの特別ゲスト(笑)」ドリームガールズ。今年5月に上演されたミュージカルとそっくりの衣装で登場し、舞台上を左に右にと動き回りながら、ゴージャスなパフォーマンスで会場を華やかに盛り上げました。

 こうして「プレリュード」は華やかに幕を開けました。前半は合唱パート。3つの合唱団が登場しました。

 まずは「Sing Out! Tokyo」。NHK合唱コンクールの課題曲にもなったいきものがかりの「YELL」のせつないメロディを思いをこめて歌い、「サウンド・オブ・ミュージック」の名曲「Climb Ev'ry Mountain」で感動を与えてくれました。代表の方も「お祭りなので、みんなの知ってる曲をやりました」と語っていましたが、「これぞゲイの演奏会」という感じの、素敵な演奏でした。

 続いて老舗団体の有志による「東京カマさんコーラス『コーロ・エレガンテ』」の演奏。オープニングのドリームガールズもまざり、指揮者の方もレインボーの派手なシャツを着ていたのですが、「男声合唱とピアノのための『祈りの虹』から『4.ヒロシマにかける虹』」というたいへんシリアスな歌を聴かせてくれました。かなり難しい曲だったと思いますが、見事な演奏でした。

 それから、結成10年を迎える「新宿男声合唱団」が登場。ルネサンス期の声楽曲(聖歌?)である「Viril Galilaei」という曲をアカペラで演奏し、谷川俊太郎による歌詞が美しい「春に」という曲をのびやかに、さわやかに歌いました。クマのイラストが描かれたおそろいのTシャツを着ていました。

 そして、3つの合唱団+α(女性の方も参加していました)による合同演奏では、総勢約60名ほどでアンジェラ・アキの「手紙~拝啓、十五の君へ~」と和田アキ子の「あの鐘を鳴らすのはあなた」を演奏しました。途中、ドリームガールズの1人がアンジェラ・アキに扮して(ステージの後ろの方で着替えて)登場し、会場を沸かせました。迫力のある、元気が出てくるような演奏でした。

 休憩後、今度は合奏の部がスタート。

 トップバッターは「SSK48」。以前、中野婦人吹奏楽団という名前で活躍していた老舗の楽団です。チャイコフスキーの「スラブ行進曲」を、まるでオーケストラのように重厚な、ものすごい迫力で演奏しました。圧倒されました。「スラブ行進曲」はチャイコフスキーが自分のセクシュアリティについて悩んでいた時代の作品だそうで、そういう意味でも感慨深いものがありました。

 続いて「BASUE吹奏楽部」。浴衣姿で登場し、見た目にも楽しい演出を随所に織り込みながら、「まちぶせ」「待つわ」「かもめはかもめ」などの場末系歌謡曲をオリジナル・アレンジでつないだ「ジャパニーズ・グラフィティBASUE2010~今年の夏も独りよがり」というメドレーで楽しませてくれました。

 そしてプレリュード史上初のジャズのビッグバンド「Swingin' Panda Orchestra」がツナギのコスチュームで登場。指揮者を中心に弧を描いて座るのではなく、全員前を向くボックス型の編成で(しかもトランペット、トロンボーン、サックスが4人ずつという徹底ぶり)、「Dinner with Friends」「Orange Sherbet」「Strike Up The Band」の3曲を演奏。実にカッコよかったです。

 東京だけでなく全国どこの人でも参加できる開かれた楽団であり、全国のパレードにも積極的に参加してきた「Brass MIX!」は、「エヴァンゲリオン・ファンファーレ!」「butterfly」「矢島美容室メドレー」「プラウド・メアリー」という、素晴らしくゲイテイストな曲目で魅了。カラーガードと言われるフラッグのパフォーマンスも華やかでした。

 横浜や川崎の人たちを中心に結成された「音響侍」は、「吹奏楽のための民話」「ブロックM」という、ブラバン経験者なら誰もがやったことのあるなつかしの定番曲を演奏し、部活時代の思い出を甦らせてくれました。「侍」とプリントされたおそろいの濃紺のTシャツもシブくて素敵でした。

 弦楽合奏団「アンサンブル・ディベルティメント」は、アレンスキーの「チャイコフスキーの主題による変奏曲」という曲を披露。夏の終わりを思わせるようなピアニッシシモが印象的でした。団員も増えて音に厚みが増しただけでなく、本当に演奏が巧かったと評判でした。表現力豊かな指揮者の方の指導のおかげなのかも?と思いました。

 器楽合同演奏はワーグナーの名曲「『ニュルンベルグのマイスタージンガー』より第一幕への前奏曲」でした。印象的なフレーズがたくさんちりばめられた祝祭的な雰囲気が「パレードへのプレリュード」という趣旨にぴったり合っていたこともあり、また、演奏も本当に美しく、素で感動しました。

 最後に、合唱団も楽団も全員参加し、総勢約200名でエルガーの「威風堂々」第一番(これもブラバン経験者にはおなじみの曲)を演奏しました。指揮者の方が「BBCの『プロムス』コンサートで演奏される『威風堂々』に感動して以来、この曲を指揮するのが夢でした」と語り、思い入れたっぷりにタクトを振っていました。中で歌われる「希望と栄光の国」は、以前の「ハレルヤ」同様、祝祭的な、フィナーレにふさわしい曲でした。

 演奏が終わると大ホールは割れんばかりの大きな拍手に包まれました。中にはスタンディングオベーションする方もいました。

 司会をつとめた中村美亜さんが、「楽しく、喜ばしい記憶を作っていくことが生きるうえでとても大切だと思いますが、今日の演奏はまちがいなく、みなさんにとっていい記憶として残るものだと思います」というようなことをおっしゃっていて、本当にその通りだと思いました。  音楽の力は本当に偉大です。音楽が引き合わせる縁もまた、本当に偉大だと思います。

 東京プライドパレードの旗の下に、ふだんは別々に活動している合唱団や楽団が一堂に会し、日頃からの練習の成果を披露したり、ゲイならではの選曲や演出で喜ばせたり泣かせたりそして最後には全員いっしょに祝祭的な名曲を演奏し、感動のフィナーレを迎える、そんな「プレリュード」を、たくさんのゲイの方たちが毎年楽しみにし、結果的にパレードにも貢献しているのは、本当に素晴らしいことです。
 来年もまた、「プレリュード」の開催を心待ちにしたいと思います。

(後藤純一)

 

東京プライドパレードは814日開催です!
http://parade.tokyo-pride.org/7th/

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