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レインボーフラッグのある博物館 リニューアルを控えた「リバティおおさか」レポート

「リバティおおさか(大阪人権博物館)」。日本では珍しい性的マイノリティの人権についての展示がある博物館です。間もなくリニューアルを迎える博物館のこれまでとこれからについてレポートします。

レインボーフラッグのある博物館 リニューアルを控えた「リバティおおさか」レポート

 

 レインボーフラッグがいつでも展示されている場所が大阪にあります。

 リバティおおさかの愛称で知られる大阪人権博物館。この博物館には日本では珍しい、性的マイノリティの人権を扱った展示が常設されています。レインボーフラッグはその展示の最初に掲げられています。レインボーフラッグの後にはレインボーマーチ札幌の映像や「府中青年の家」裁判についてのパネルが続きます。
 大阪人権博物館の展示の特徴の一つは、名前の多い点にあります。人権のために声をあげたその当人にスポットライトを当てる展示が多いのです。多様な人権運動を丁寧に調査し、展示してきた大阪人権博物館ですが、間もなく大幅なリニューアルが予定されています。
 大阪人権博物館のこれまでとこれからについて学芸員の松永真純さんに伺いました。

大阪人権博物館のこれまで

 大阪人権博物館は、1985年、大阪人権歴史資料館として開館しました。博物館が建設されたこの地域は、浪速部落という被差別部落でした。
 当時、被差別部落への同和対策事業の一つとして、住環境の整備が進められていました。しかし地域の開発が進められていく中で、かつて地域の重要な産業であった靴作り、皮に関わる仕事の資料や、差別と戦ってきた水平社運動の資料などが散逸してしまう問題が浮上してきました。これらの資料を保管するだけではなく、展示し、多くの人が差別について知り、学ぶために、地元の運動団体を中心に、大阪府、大阪市の協力を得て、資料館が設立されました。

 1995年、現在の大阪人権博物館という名称に変更しました。最初の大きなリニューアルでした。このリニューアルによって被差別部落についてだけではなく、様々な人権についての資料が展示されるようになりました。
 当時は大きく4つのコーナーを設けていました、部落問題について扱う「被差別部落と身分」、女性や高齢者、子どもについて扱った「性と家族」、在日コリアン、沖縄の人たち、アイヌの人たちについて扱った「民族と列島の南北」、障害者、病者、公害について扱った「身体文化と環境」。人権博物館という名前にふさわしく、扱う領域が大幅に広がりました。

 2003年に、現在の性的マイノリティの展示の原形となる企画展が開催されました。大阪を中心に、性的マイノリティ当事者のサークルや個人に声を掛け、ワーキングチームを結成し、数回の会議を経て、企画展が開催されました。
 2005年に博物館の2回目のリニューアルが行われました。この時より性的マイノリティの人権についての常設展示がはじまりました。この時に性的マイノリティのさまざまな「表現」についての展示も追加されました。劇団や映画祭の資料、レインボーマーチ札幌の映像が展示されるようになりました。

 大阪という土地柄からこの人権博物館の展示について被差別部落や在日コリアン、障害者の人権問題を最初に連想する人は多いのですが、そのような展示に加えて、性的マイノリティの問題を扱っていることを評価する人は少なくありません。

大阪人権博物館のこれから

 大阪人権博物館は今年12月より2ヶ月間の休館を経て、2011年3月よりリニューアルオープンされます。
 大阪人権博物館は、これまで独立した財団法人が運営してきましたが、大阪府、大阪市からの助成金が大きな財源となっています。2008年に橋下府知事の訪問を受けて以降、この助成金が大阪府の財政再建策の対象とされるようになりました。
 子どもにもわかりやすい展示に変更しなければ公金を投入することはできないとの意向を受けて、今回、展示のリニューアルが行われることになりました。小中高校生を対象にわかりやすい展示を目指すことが大きな目的となります。
 職業意識を育み、命や世界の子どもについて知るための展示が増える一方で、性的マイノリティの展示をはじめとするこれまでの展示は減ることになります。松永真純さんは、テーマが増えることに二の足を踏む気持ちを持ちつつも、新しいテーマの中に人権や差別について考えるための切り口を盛り込んでいきたいと考えています。

 3月のリニューアル以降、レインボーマーチ札幌の映像は撤去されることになりそうです。レインボーマーチ札幌の感想を語る地元のレズビアンのインタビューは(おそらくは子どもにとっても)感動的なものですが、これからは見ることができなくなるかもしれません。さまざまな性的マイノリティの劇団のパネルも外されることになるかもしれません。関心のある方は、12月までに足を運んでおいた方がよいでしょう。

 今回学芸員の松永真純さんに話を伺い、大阪人権博物館の学芸員が人権のために声をあげた人たちと誠実に関係を結び、丁寧に展示物を作ってきたことが改めてわかりました。大阪人権博物館が今後どのような要請によってリニューアルされることになったとしても、そのような学芸員が関わっている限り、展示内容が空虚になることはないでしょう。
 リニューアル後の博物館を楽しみにしたいと思います。感想や意見を博物館に届けることは学芸員のはげみになるばかりでなく、博物館の今後のありかたにもつながっていくはずです。

 自分たちの人権を広く伝えるための場所があります。毎日人権のことを考えるわけではないけれど、レインボーフラッグがいつでも展示されている場所があるということを、時々、思い出したいと思います。


リバティおおさか 大阪人権博物館
http://www.liberty.or.jp/ 
住所 大阪市浪速区浪速西3-6-36
JR環状線「芦原橋駅」下車、南へ約600メートル
JR環状線・大和路線「今宮駅」下車、西へ約800メートル
大阪市バス・赤バス「浪速西3丁目」バス停下車、西へ200メートル
南海汐見橋線「木津川駅」下車、東へ300メートル 

開館時間 10:00-17:00(ただし入館は16:30まで)
入館料 大人    個人250円   団体200円 
    高大生   個人150円   団体100円
      特別展示開催時
          大人    個人500円   団体400円 
          高大生   個人300円   団体200円 
        *小中学生以下、65才以上、障害者(介護者を含む)は無料
        *人権週間(12月4日~12月10日)は無料
        *見学の予約をされた場合、下見の予約をして頂ければ、3名まで無料で下見できます。 
休館日 毎週月曜日(ただし、祝休日はのぞく)
          祝休日の翌日 (ただし、日曜日はのぞく)
          毎月第4金曜日・年末・年始・臨時休館日 
*詳細については大阪人権博物館ホームページをご確認ください。 

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