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レポート:PluS+ 2010 FINAL
2003年以来、毎年少しずつ異なった趣向で訪れる人を楽しませてきた野外フェスティバル「PluS+(プラス)」。今年でファイナルを迎えるということで、いつにも増して盛況で、素晴らしく華やかに、感動的な成功を収めました。
2010年10月10日(日)、ゲイタウン堂山から徒歩数分というロケーションにある扇町公園で「PluS+ 2010 FINAL」が開催されました。
会場にはたくさんのブースが立ち並び、活気あふれる雰囲気を醸し出していました。HIV予防団体や陽性者支援団体、LGBTの家族と友人をつなぐ会、G-FRONT関西といった団体、手話サークルやベアクラブジャパンといったサークルはもちろん、食べ物やドリンクを売るたくさんの屋台、バディ、ビデオメーカー、アンダーウェアブランド、洋服屋などのフリーマーケット・ブースも会場をにぎやかに彩っていました。
2004年から2008年までは、道路をはさんだ公園の北側エリアにステージが設置されていましたが、昨年から広い南側エリアをめいっぱい使う形になりました。そのおかげで、たくさんのブースとイベント会場が渾然一体となって、ぱーっと見て終わりじゃない、本当に1日中楽しめるような、とてもじゃないけど全部を見きれないような、あまりにも濃厚で充実したイベントとなりました。
一説には6000人以上が訪れたと言われていますが、本当にそうだと思います。本当にものスゴい人出(イケメンも多数!)でした。
13:30、MASH大阪やRainbow Ring、ANGEL LIFE NAGOYAなど全国のHIV予防団体の活動の礎を築いてくださった市川誠一さん(名古屋市立大学看護学部教授)がご挨拶しました。
「PluS+ RADIO STATION」ではその後も「和太鼓衆 響組」による和太鼓演奏や、「新虹」によるエイサー演舞など、勇壮なパフォーマンスが繰り広げられました。合間にはFM OSAKAでパーソナリティをつとめる遠藤淳さんによるトーク、福田典之さんによるライブも行われ、そしてDJ korがスタートからフィナーレまで素敵な音楽を届けてくれました。
「CAFE PEGASUS+」「PANSY+CANDY BAR」「P+COCK LOUNGE」といったパビリオンは、食べ物を売る屋台やフリマのブースと同じ並び(テント群の中)にあり、まぎれるような、よく見ないと入り口がわからないような感じで設けられていました。そして、「P+COCK LOUNGE」のDRAG QUEENやGO-GO BOYのパフォーマンスが行われるステージのすぐ横に「感染経路を断つ!」といったフリップが掲げられ、ショーを見る人たちの目に予防啓発のメッセージが必ず飛び込んでくるようなしかけがなされていたのです。お祭り的なこと(楽しいこと)とHIVのこと(考えさせられること)をセットにして届けようというスタンスが徹底されているのが印象的でした。
また、そうした華やかなショーの合間には、「つけさえしたらエエのか?~市民として、様々な予防の可能性を探る」といったシンポジウムも行われました。感染症の疫学の専門家である市川誠一さんは、ハッテン場をリサーチして、最初のHIV予防キャンペーンに「必着」と書いたキャッチフレーズをつけました。1990年代の終わり頃、ウリ専で働いていた野原周作さんは、働いていた店が「必着の店にする」と決めたとき、「これでは商売ができなくなる」と反対をしました。同じ頃、ビデオメーカーで働いていた三池義教さんは「必着の会社にする」と言って社長とケンカになったそうです。「コンドームを必ず着ける」というHIV予防キャンペーンが現在では陳腐化し、「予防疲れ」が起こっているのではないか、という問題提起がなされました。MASH大阪の山田創平さんは、さまざまな妥協点があることを知った上で、個人個人が自分でセーファー・セックスについて考えることが「予防疲れ」に効くのではないかと語っていました。 「CAFE PEGASUS+」では、PEGASUS SHOWと題された東西のDRAG QUEENによる素晴らしいショー&レビューが繰り広げられました。テーブル席でお茶を飲んでいる人たちのすぐ横で突発的にショーが始まり、DRAG QUEENが縦横無尽にテーブルの間を走り回り、客にからみ、といった趣向で、ゲイに限らず、子ども連れのファミリーなども大いに楽しんでいました。
そのすぐ隣では「HIV陽性の人の恋愛についてどう思いますか?」といった問いに自分なりのコメントを書けるような「+-=○(プラス マイナス イコール まる)【ライブメッセージ展】」が行われていました。なかなか顔出しで自分のことを語るのは難しい陽性者の人たちと、会場を訪れた人たちとが、この自由なボードを通じてコミュニケーションできていることが素晴らしいと感じました。
同様に「PANSY+CANDY BAR」では、アートやクラフトワークについての講習会と同時進行で性や身体についてのトークディスカッションが行われていました。たとえば「呼吸のチカラ『身体から行うメンタルケアの最前線』」というトークイベントでは、薬物依存を経験したダルク大阪の倉田めばさんやパフォーマーのブブ・ド・ラ・マドレーヌさんらが今だけに集中して生きていくことの大切さや、呼吸をコントロールすることで心が安定する、といったお話をしてくれました。
日がな一日、お祭り騒ぎに明け暮れた公園にもすっかり夜のとばりがおりた19:30頃、ボランティアスタッフの方たちが、最後まで会場に残ってくれたお客さんたちに白とピンクの風船を配りはじめました。「PluS+ 2010 FINAL」もいよいよフィナーレを迎える時が来たのです。
野外ステージでバビ江ノビッチさんによる「Proud Mary」(そう、あのティナ・ターナーの)ショーが始まると、客席のテンションは一気にヒートアップ! そして「P+COCK LOUNGE」のアンダーウェア・ショーを盛り上げたGO-GO BOYたちが次々にステージに駆け上がり、アンジェリカさんの「You spin me round」(Dead or Alive)ショーがスタート。セクシー&ゴージャスに魅せました。それから、MCのマーガレットさん&シモーヌ深雪さんの紹介で、「PluS+ 2010 FINAL」に協力してくれた方たちが風船を持って一人ずつ登場し、拍手を浴びました。ゴージャスなクイーンたちがステージに並んだところで、HOSSYさんが登場し、「DIVA」(Dana International)ショーを披露、この記念すべきイベントの華麗なるフィナーレ…と思いきや、客席の後方からナジャさんが登場し、本当の「Last Dance」(Donna Summer)で盛り上げました(さすがは関西、演出も手がこんでいます)。ゲイにとって思い入れの深いこの名曲の感動の真っ最中、白とピンクの風船が一斉に空に放たれ、参加者の人たちもさまざまな感慨とともに風船を空に見送りました。
そして、この「PluS+(プラス)」という素晴らしいイベントを7年間にわたって運営してきた中心メンバーである辻宏幸さん、内田優さん、後藤大輔さんの3人がステージに登場すると、ひときわ大きな拍手が贈られ、辻さんが感極まって涙しながら挨拶し、感動のうちにイベントは幕を閉じました。
年々規模が大きくなり、スタッフの方たちも本当に大変だったと思います。お祭りを楽しんだ方たちからの心からの拍手が、何よりもこのイベントの成功を物語っていたと思います。
「PluS+」は、こうして今年でファイナルを迎えることとなりましたが、また来年、違う形で、HIVのこととコミュニティのお祭りがセットになった(そして素晴らしくカッコよく楽しくゴージャスな)イベントが開催されることと思います。その日を楽しみに待ちましょう。
そして、「PluS+」がプレゼントしてくれた「プラスな何か」を胸に、僕らができることを実践していきましょう。(後藤純一・門戸大輔)
☆「PluS+ 2010 FINAL」のフォトアルバム
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