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パレード、その先を見るために! 第八屆台灣同志遊行(2)

台湾パレードとその周辺の状況について、主催団体広報担当のレックスさんにお話を伺いました。コミュニティのために関わっている人ならではのメッセージをお届けいたします。

パレード、その先を見るために! 第八屆台灣同志遊行(2)

 性的マイノリティが自分自身で可視化を進めることによって、はじめてさまざまな政治的な解決がのぞめる、というシナリオは当たり前のことのようですが、多くの性的マイノリティが避けていたことでもあります。避けていたことをテーマとして正面から打ち出し、成功を収めた台湾プライドパレードは、日本における性的マイノリティの未来を思い描く人にとっても示唆に富むものに違いありません。
 台湾LGBTプライドパレードとその周辺の状況について主催団体、台湾LGBTプライドコミュニティの広報担当のレックス(Rex Shau)さんにお話を伺いました。レックスさんは、ゲイのための出版社「基本書坊」の編集長を務めながら、パレードに関わって来られた方です。 

——政府はパレードをどのようにサポートをしていますか。資金的な援助はあるのでしょうか。東京プライドパレードでは行政からの支援を得るのにとても苦労しているので、ぜひ台湾の状況を教えてください。

 日本でも状況は同じだと思いますが、これまで台湾政府及び台北市当局は台湾LGBTパレードをサポートしてきませんでした。パレードに関わる人はすべてボランティアで活動しており、資金は寄付に頼っています。
 LGBTのアクティビズムがはじまった1990年代中盤以降、台湾政府、省庁、政界はLGBTコミュニティからの要望に反応することすらしてきませんでした。
 年ごとにパレードに参加する人は増え、昨年度は2万5000人が参加するまでに至りましたが、依然政府は私たちを無視し続けています。コミュニティに対しても、メディアに対しても何も語ろうとしないのです。

——台湾では性的マイノリティの連帯はとてもうまくいっているように見えます。日本ではインターネットなどでさまざまなネガティブな反応が起きるため、パレードに関わる人はモチベーションを失いがちです。台湾ではどうですか。

 LGBTコミュニティは非常に大きな集団ですが、私たちは個人においても、それぞれのコミュニティにおいても、互いに異質な存在です。
 台湾の場合、おおよそ15年のLGBTアクティビズムの経験を経て、必要なときには様々な団体、組織が連帯するようになりました。パレードを行うときや、社会的な差別事件が発生したとき、私たちは連帯します。
 台湾ではLGBTの団体、組織がいつも連帯しているので、うまくいっているように見えるのかもしれませんね。
 毎年、特にパレードの準備が行われている間は、インターネットなどでパレードに対して挑戦的な発言をする人が現れます。そのような人たちが行っているのは単なる中傷ではないかもしれません。私の考えでは、もしかすると、そのような人たちは公共的な空間に討論する場を作ろうとしているのかもしれないと思います。私は、そのような行動は社会運動のためにはよいことだと考えています。パレードやLGBTのコミュニティの状況に関わるアクティビスト、あるいはその他の人々にとっては、たとえばパレードの理念や毎年打ち出されるテーマといったものを、より明確にするためのチャンスが与えられているのです。

 パレードの外にはいつも中傷者がいるのかもしれません。それに対して私たちができることは限られています。私たち自身が何をしているのか自覚すること、そして自分たちのしていることがLGBTコミュニティを将来的によりよい状況に導くものであると信じること、だけです。

——今年のテーマは昨年と比べて政治的なものになりました。台湾LGBTプライドパレードの変化について教えてください。

 台湾にとって今年が特別な年であるのは、11月末に5大都市の市長選を控えているからです。これが今年のテーマを「Out & Vote」(カミングアウトしよう、投票しよう)にした最も重要な理由の一つです。台湾の法律においてLGBTコミュニティは認知されておらず、不可視の状態のままにあります。私たちは、私たちのおかれている法律のありかたや婚姻の状況、政治的に、公共的に支払っているものについてきちんと知るべきだということを伝え、教育したいと考えています。これらの問題はこの数年間、まったく変化していません。
 市長候補者たちは、これまで私たちのコミュニティに対して何も反応せず、公約もしてきませんでした。
 7年間のパレードを経て、LGBTの可視化は以前よりも進みました。私たちが必要としているものをLGBT以外の人たちや著名人たちに訴えるためのタイミングが訪れていると考えています。

——日本の性的マイノリティへメッセージをお願いします。

 みなさんが台湾においでになり、台湾を好きになることを願っています。日本と同じように台湾のLGBTコミュニティは特別で、とても興味深いものです。みなさんと情報や経験を交換しあっていけるような関係になっていくことを願っています。


 台湾LGBTプライドコミュニティは二大政党である国民党、民進党の争いを超えて人々に「カミングアウトして政治参加しよう」と呼びかけています。気になる5大都市(台北、新北、台中、台南、高雄)の市長選投票日は11月27日。選挙結果とその影響が性的マイノリティの状況をどのように変化させていくのか、注目したいと思います。(門戸大輔)

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