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TOKYO FM × LIVING TOGETHER ポエトリーリーディング「Think About AIDS」
6月4日(金)、TOKYO FMホールで第6回目となる「Think About AIDS」が開催されました。今回も各界の著名人の方々がライブやリーディングを披露し、また、このイベントが始まって以来の素晴らしいゲストも登場し、感動を呼びました。その模様をレポートいたします。(撮影:竹之内祐幸)
TOKYO FM × LIVING TOGETHER ポエトリーリーディング「Think About AIDS」(主催:TOKYO FM/後援:エイズ予防のための戦略研究(研究リーダー:市川誠一)MSM首都圏グループ)は、2007年12月から年2回ペースで開催されてきました。新宿二丁目で始まったLIVING TOGETHERムーブメント(HIV陽性者の手記集を作り、当事者の代わりにそれを朗読することで、HIVのことを身近でリアルに感じるとともに、陽性者への共感を示すこともできる)に影響を受けたTOKYO FMのディレクター・東島由幸さんやその周りのスタッフの方たちの熱意で始められたイベントです。
今回は、NHK教育テレビ「ETV特集」が朗読とライブの模様を収録していました。 7月4日放送予定だそうです。
初めに司会を務める柴田幸子さんが登場し、「新総理が誕生した夜に、ようこそおいでくださいました」と挨拶(ちょうどこの日、菅直人さんが総理大臣に就任し、世間はその話題で持ち切りでした。ゲイ的にはSATC2公開で盛り上がっていましたが)。それから客席に「今回初めて来られた方は?」と尋ね、初参加の方と常連の方が半々くらいだということがわかりました。(ゲストによってお客さんが毎回異なるのです)
続いてLiving Together計画の張由紀夫さんも登場し、「気づかないかもしれないけど、HIV陽性者の方たちはすぐ隣でいっしょに暮らしています。そのリアリティをなんとか目に見える形にしたいという思いでLiving Together計画をスタートさせました」「現実って苦しいけど、音楽やアートで包み方を変えることで飲んでいけるようになると思うんです」と語りました。
それから、もう1人の司会である堀内貴之さんが、ゲイの陽性者手記集「EASY!」から「続く道」という手記を朗読しました。
そしてTOKYO FM「LOVE CONNECTION」でお昼の顔になっているシンガーソングライター、LOVEさんが登場し、パフォーマンスのトップバッターを務めました。
力強いギターと歌声で「Life Like A Tree ~あすなろ」「君は僕のセンユウ」「STAY」の3曲を披露し、観客を魅了しました。また、高校時代に世界のエイズ対策について研究発表をしたこと、初めて検査を受けたときの緊張などを関西弁で語り、あたたかい空気が流れていました。
そして、たぶんこの方を観るために駆けつけた方多数、と思われるゲスト、吉田秀彦さんが登場しました。「絶対噛みますんでよろしく」と笑顔で雰囲気を和らげながら、吉田さんは「EASY!」の中の手記を朗読し、オリンピックの選手村にたくさんのコンドームが用意されていたこと、自身も命がけの仕事であることなどを語りました。また、格闘技の選手は試合前に検査を受けることが義務づけられているそうです。
司会の堀内さんに「緊張しましたか?」と聞かれ、「試合よりも緊張しました」と笑い、学生時代に二丁目によく飲みに行っていて、ゲイの人たちは気さくで楽しかったと語ってくれました。
続いて、芥川賞作家である平野啓一郎さんが登場、やはり「EASY!」の手記を朗読しました。
今までに2回HIV検査を受けたことがあり、2週間結果を待っている間に「もし陽性だったら…誰かにうつしたかも…」といったことをリアルに考えた、という経験を語ってくれました。「みんないろんなトラブルを抱えていると思います。虐待や、破産や…同じように、HIVを持った人も大変やなあと思う。こういうイベントは本当に有意義だと思います」
そして、世界的なアコーディオン奏者である(あのビョークのワールドツアーにも参加した)cobaさんのライブがスタートしました。
ピアソラの「リベルタンゴ」のほか、オリジナル曲の「過ぎ去りし永遠の日々」「僕が鬼」「明日ね」などを演奏し、とても楽器一台での演奏とは思えない迫力とラテン音楽の情熱的な曲想で観客を圧倒しました。
アコーディオンはとても重く、演奏には体力を使うそうで、1曲終わるごとに玉の汗を拭きながらトークをはさみ、という感じでライブが進行。3歳からピアノを習っていたが、ある日、父親にプレゼントされたアコーディオンにハマって現在に至るということ、また、フェリーニの「制度がイタリアを壊す」という言葉を紹介しながら、空想と現実の境がかたまっていない子どもの発想力の豊かさについて語ってくれました。
本日最後のリーディング・ゲスト、テレビ「CBSドキュメント」などでも知られるブロードキャスター(音楽評論家、ラジオDJ)のピーター・バラカンさんが登場、やはり「EASY!」からユウジさんの手記を朗読してくれました。
昔亡くなったミュージシャンの友達のこと、そこら中に近所の人がいるような田舎では陽性者が手帳を申請するのはとても勇気が要る、といった具体的なエピソードをまじえながら「出る杭は打たれる」日本の社会が変わることを期待します、と語りました。
その後、サプライズゲストとして、手記を書いたユウジさんが会場に登場し、驚きとともに大きな拍手で迎えられました。
司会の堀内さんとピーターさんがユウジさんを間にはさみ、トークがスタート。 「陽性者として出ることには抵抗がない。いいタイミングがあれば、と思っていました」「親には2年前にカミングアウトしました。びっくりして、黙ってましたね…」とユウジさん。前回のこのイベントにご両親といっしょににいらしていたそうです。
「感染の告知を受けてから立ち直るのにどれくらいかかりましたか?」という質問に対しては、「1日です。友達と会って、一晩泣いて。次の日には平気になってました」「今はそんなに免疫値も低くないので、元気に暮らしてます」と答えていました。
どこにでもいるようなふつうの(さわやかな)リーマンであるユウジさんの姿は、何よりも雄弁に、Living Togetherということをみなさんに印象づけたと思います。ポエトリーリーディング「Think About AIDS」も第6回を迎え、初めてHIV陽性者の方が登場してくださったわけですが、このイベント(をはじめとするLiving Togetherムーブメント)が続いてきたからこそ、なんだと思います。
感動に包まれたイベントを締めくくってくれたのは、元サニーデイ・サービスの曽我部恵一さんのライブでした。「おとなになんかならないで」「キラキラ!」など3曲をギター弾き語りで披露してくれました。
曽我部さんは2008年12月にもTOKYO FMの「BIBLE」という番組で手記リーディングをしており、今回、満を持してステージに登場してくれました。今回はMCで「なかなかLiving Togetherと思えることって多くない。目に見えないけど、いつも探して、感じるしかないと思います」「みんな愛の病。Love Sick」と語っていました。
エンディングでは、司会の柴田さんと堀内さんが再び登場し、「ユウジさんに会えてよかった」と語りました。次回は12月17日(金)だそうです。今度はどんな素敵なゲストが来てくれるのか、楽しみです。
(後藤純一)
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