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レポート:日本酒パーティ「酒未来」第四回

平成28年1月31日(日)、二丁目の「Arty Farty」で開催された日本酒パーティ「酒未来」第4回のレポートをお届けします。たくさんの方々の日本酒愛と心意気が結晶した奇跡のイベントです。きっと日本酒が苦手だったあなたも「ちょっと飲んでみようかな」と思えるはず。

レポート:日本酒パーティ「酒未来」第四回

平成28年1月31日(日)、二丁目の「Arty Farty」で開催された日本酒パーティ「酒未来」。たくさんの方々の日本酒愛と心意気が結晶した奇跡のイベント。会場のいろんなところにこだわりや気遣いがあふれ、ゴキゲンな音やショータイムまで楽しめる、素晴らしいパーティでした。これを読めばきっと日本酒が苦手だったあなたも「ちょっと飲んでみようかな」と思えるはず。レポートをお届けします。(後藤純一)

 

日本酒パーティ「酒未来」とは


 もともと日本酒が好きだった吉野さん。本当に日本酒が好きで、たくさんの種類をそろえているようなお店って二丁目ではとても少なくて、じゃあ自分のお店に置こうと思って、3年くらい前から取り寄せてお客様にお出ししていたそうです。そんなときに「タクシードライバー」という希少なお酒を運よく手に入れ、うれしくて「入荷しました」ツイートをしたところ、なんと「タクシードライバー」の蔵元・喜久盛酒造の社長さんがリツイートしてくれたそうです。それがきっかけで、さまざまな縁が重なって(以前から喜久盛酒造の社長さんは二丁目でも売りたいと考えていたそうです)、おつきあいさせていただくようになり…そうやっていくつかの蔵元や酒屋の方と何年もかけて懇意になり、(手に入りづらいだけでなく、モノによっては一升瓶が10万円を超えるような)幻の銘酒を1コインで提供するという奇跡のようなイベントが実現しました。いわば、「酒未来」とは日本酒を愛する人たちの思い、心意気が結晶したイベントなのです。

 吉野さんは「日本酒って年配の方のイメージがあるかもしれないし、若い方はあまり嗜んで来なかった人も多いと思うけど、幻と言われるような日本酒の銘酒を1コインで楽しんでいただくことで、日本酒にあまりなじみのない方にもその素晴らしさを体験していただきたい。二丁目はドラァグクイーンとかのゲイカルチャーだけじゃなく、お酒の街でもあるわけで、二丁目からそういうイベントを発信することの意味があると思う」と語ります。

 巷では日本酒ブームと言われていて、日本酒をつくっている蔵元の方たちもずいぶん若い方が多くなってきていますが、それでも新酒の発表会があれば昔と全く変わらないやり方だし、来る方たちも昔ながらの日本酒ファンがほとんどというのが現状だそうで、そういうところに風穴を開けるようなイベントとして、二丁目のクラブカルチャーと日本酒の融合というコンセプトで始めたのが、この「酒未来」なんだそうです。

 ゲイだけでなくどなたでも入れるイベントにするために、吉野さんは広く一般の世界で活躍する桜井青さんに協力をお願いし、快く引き受けてくれたことから昨年7月末に第1回「酒未来」が開催されました。以後、貴重な日本酒を何種類もいただける贅沢さはもとより、クラブミュージックやショータイムも楽しめるとあって、口コミで評判を呼び、回を重ねるごとにお客さんも増えてきているようです。

日本酒パーティ「酒未来」
奇数月最終日曜日19時〜
@Arty Farty

 

日本酒パーティ「酒未来」第四回・レポート


主催者の吉野さん

日本酒を堪能するお客さん
(湾岸くん)

ファンが泣いて喜ぶような
希少銘柄がズラリ

熱燗コーナー。右が桜井青さん
左がBAR「浮かぶ」のママさん

舐め塩のコーナー。美味!

DJ POPPOさん

イズミ・セクシーさん

バンザイきょう子さん

日本酒講座、面白かった!

飲み比べのコーナーも!

再びイズミさん&バンザイさん

星野晃代さんのライブ

DJ J.R.さん
 心配されていた雪も降らず、寒いながらも人肌恋しく、二丁目に出ようかなと思う方も少なくなかっただろう1月31日(日)の夜。オープンから1時間余が経過した20時過ぎに会場の「Arty Farty」へ。すでにお客さんがたくさん来られていて、上機嫌でお酒を楽しんでいます。会場には杉玉(蔵元の店先に吊るされているアレ)が飾られ、そこはかとなく杉のよい香りが漂います。
 まず、バーカウンターで1stドリンクをオーダーします。オススメの「ミネラルウォーター飲み放題チケット」をお願いしました(正直、日本酒ってすぐ酔いが回って苦手という方も多いと思うのですが、たくさんお水を飲みながらゆっくり、いろんな種類のお酒をいただくようにすれば、悪酔いもせず、大丈夫です。ぜひ、この方法で飲んでみてください)
 カウンターには「十四代」をはじめ、銘酒の一升瓶がズラリと並んでいます。その横に吉野さんはじめスタッフの方がいて、お酒を注文すると一升瓶からついでいただけます(リストバンドに頼んだ数を書いていきますので、お財布をいちいち出さずに手軽に頼めます)。最初の日本酒は、この季節しか飲めないという青森の「田酒(山廃仕込)」を頼みました(私、青森出身ですので)。甘すぎず、辛すぎず、すっきりした飲み口でありながらコクも感じられ、素直に美味しいと思いました。
 また、カウンターでは、日本酒と相性のよい特別な舐め塩がフリーで提供されていて、なんと粋な心遣い!と思いました。特製塩こんぶも超美味でしたし、チベット産のマグマ塩(ゆでたまごの味がします)も美味しかったです。
 ほかにも、今回は特別に、愛知日間賀島産とらふぐを漬け込んだ「ひれ酒」や、某ホテル総料理長特製だしで割った「だし割り酒」といったたいへん珍しい熱燗が飲めるコーナーもあって、人気を博していました(わざわざ「だし割り酒」を飲むために来たという方もいたくらいです)。「だし割り酒」の美味しさは、ちょっと筆舌に尽くしがたいものがありました…日本酒の枠を超えた和の芸術と言いますか、贅沢の極み、みたいな。体がポカポカしてきて、本当に幸せな気持ちになれました。

 幸せな気持ちのまま、DJ POPPOさんのアッパーめなHOUSEを楽しみながらフロアで体を揺らす心地よさ。クラブイベントだからなのでしょう、意外にもお客さんは若い方が多く(ゲイもノンケさんも)、美味しいお酒を飲みながらイェイイェイ踊ったり、友達どうしで乾杯したり、みなさん楽しそうです。美味しい日本酒って人を幸せにするんだなあって思いました。
 そうこうしているうちに、ショータイムがスタート。前回のゲストはバビ江ノビッチさんでしたが、今回は同じ「marohige」の人気クイーン、イズミ・セクシーさん&バンザイきょう子さんが登場! イズミさんが白いレオタードでセクササイズする鉄板ネタを、バンザイきょう子さんが宇多田の歌に合わせていろんな「あああああああ」にまみれるショーを披露してくれました。ここで、お二人のお着替えの時間を利用して日本酒講座が行われました。日本酒がどうやってつくられるのか、麹や酵母とは何か、知らないことばかりだったので、たいへんためになりました。同じお米やお水を使っていても酵母が違うと全然違う味になるということで、お客さんをステージに上げて「山本」の飲み比べをするというコーナーもあって、本当に面白かったです(20年くらいゲイナイトに通ってますが、知的好奇心を刺激するような講座が行われるクラブパーティって初めてかも)。それからハイレグのイズミ・セクシーさん&バンザイきょう子さんによるセイントフォー(爆笑)、そして着物姿の星野晃代さんのライブで大盛り上がりしました。 
 DJがJ.R.さんに交代し、HARD HOUSE系の体にズンズンくるサウンドに。お客さんもボルテージが上がってきて、(週末のArtyっぽく)ステージに上がったり、ハグしたり、フロアに現れたイズミさん(写真は撮ってないのですが、バニーガールでした)やバンザイさんとお話したり、思い思いに楽しんでいます。 
 お友達と楽しそうに飲んでいた20歳のゲイの方に感想を聞いてみると、「居酒屋でサービスで日本酒が出てきて飲んだことがあるけど、全然美味しくなくて、それ以来飲んでなかったです。でも、今日は日本酒ってこんなに美味しいんだ!って感動しました。ショーも楽しかったし、酒未来にハマりそうです」と語ってくれました。
 いやあ、日本酒って本当にいいものですね。と思いながら、ほんわかした幸せな気持ちで会場を後にしました。


 日本の伝統である日本酒をゲイのクラブカルチャーと融合させるのってすごく新しいと思うし(世間で二丁目が「禁断の」とか言われてた時代にはありえなかったと思います)、二丁目的にカスタマイズして再発信することで、実はユニバーサルな、外国人の方なども親しみやすいかたちに仕上がっているのではないかと思いました(クールジャパン!?)
 もともと二丁目ピープルだった方たちがクラブやショーを入り口として日本酒の魅力に触れるようになる、逆に日本酒を入り口として二丁目に来るようになる方たちもいる、そういう方たちがいい具合に混ざり合って同じ空間を楽しんでいるのもいいな、と。
 二丁目といえばたしかに、お酒の街ですし、贅沢なお酒、本物のお酒を、いろいろ楽しむ豊かさを味わえるイベントって、ありそうでなかったもの。まさに未来を感じます。
 
 たとえば海外のゲイの方っていろんなワインを嗜むじゃないですか。これは何年のどこ産で、とか、芳醇な香りが、とか。同じように、日本のゲイの世界でも、焼酎のお茶割りだけじゃなくて、日本酒を嗜む(美味しく飲める、味がわかる)ことのカッコよさがもっと浸透してほしいなと。こんなに奥が深くて、上品で、知的で、豊かな世界があるのにスルーしてるのってもったいないですよね。
 それに、最近では海外から旅行で来てるゲイの方たちのなかにも日本酒好きな方がいるんだから、ぼくらも「ここに行けば美味しい日本酒が飲めるよ」とか教えてあげられるくらいになろうよ、おもてなしできた方がいいよね、とも思うのです。
 たとえば海外旅行に行ったり、ブランドものに散財したり、贅沢っていろいろあるけど、本当の贅沢って、お金をたくさん使うということより、豊かさを味わうということじゃないでしょうか。そういう意味で、日本酒の世界の奥深さを味わう旅は、身近にあってどなたでも楽しめる本当の贅沢なんだと思います。 
 

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