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レポート:MR GAY JAPAN 2019
桜咲く3月31日、GAYの未来を切り拓こう、世の中を変えていこうと「MR GAY JAPAN 2019」が開催されました。真っ直ぐな気持ちが表現され、祝福感に満ちた、本当に心洗われるイベントでした。
2019年3月31日(日)、原宿のイベントスペース「Case B」で第2回となる「MR GAY JAPAN」が開催されました。オシャレな会場でGOGOみたいなイケメンを選ぶコンテストというイメージだったのですが(それはその通りなのですが)、いい意味で予想を裏切られました。会場は終始、祝福感やポジティブなオーラに包まれていて、主催者や参加者のみなさんの真摯で純粋な思いがまっすぐに表現され、まさかの号泣モノのサプライズもあり、素晴らしい時間となりました。レポートをお届けします。(後藤純一)
MR GAY WORLDとは?
例えば、プライドパレードはどういう趣旨のイベントなんですか?と聞かれたら、「セクシュアルマイノリティのビジビリティを高める(可視化する)」「世間にLGBTの権利についてアピールする」「コミュニティの祝祭」などと答える方が多いでしょうし、何をするんですか?と聞かれたら、公園に大勢集まって、ステージでショーとかがあって、街をパレードして、と答える方が多いでしょう。たとえ参加したことがなくても、何となくイメージできると思います。
一方、「MR GAY JAPAN」はどうかというと、よくわからないけど…イケメンのコンテストなんでしょ?というふうに答える方が多いのではないでしょうか。日本ではあまり馴染みがない、理解されていない気がします。ですから、まずは、これがどういう趣旨のイベントなのかということを簡単にお伝えします。
第一に、「MR GAY JAPAN」は「MR GAY WORLD」の日本代表を決めるコンテストです。
ミス・ユニバースなどの優勝者が世界の様々な問題を世に広めるPRやチャリティの活動に従事するように、LGBTQイシューについてのアンバサダーとなるようなゲイの代表を選ぶのが、MR GAY WORLDです。決してイケメンコンテストではなく、世界的に注目を集める大会を催し、LGBTのことを世界に発信していけるような、ポジティブなロールモデルとして活動していける人材を見つけることが目的です。
MR GAY WORLDは2009年にカナダのウィスラーで開催されたプライドスキーウィークエンドで第1回の世界大会が開催されました。その翌年はノルウェーのオスロで、その翌年はフィリピンのマニラで、というふうに、世界のいろんな国で開催されています(実は今年、香港で開催される予定だったのですが、中国当局の圧力によって開催できなくなり、急遽、南アフリカで開催されることになりました。4/28~5/4です)
MR GAY WORLD
https://www.mrgayworld.com/
そして、MR GAY WORLDの趣旨に賛同しつつも、より日本の状況に即した趣旨(何のためにやるのか、何を目指すのか)として、公式サイトに「MR GAY JAPANは、日本国内のLGBTQ+の認知と理解の向上を目的としています。これに賛同し、メッセージを発信するスポークスマンを探しています」と書かれています。メディアに出たり、いろんな形で活躍しながら、日本における課題(例えば結婚の平等の実現など)の解決に貢献できるような人材を発掘するということです(司会の方が「社会を変えて行く」と何度もおっしゃっていました)。公式Facebookには、代表の猪股さんが思いを綴ったメッセージが掲載されていますので、そちらもぜひ読んでみてください。
いかがでしょう? わかったような、わからないような…という感じでしょうか?
それでは、実際にどういうイベントだったのか、レポートをお届けします。ご覧ください。
MR GAY JAPAN 2019レポート
2019年3月31日(日)、桜舞い散るなか(東京中のゲイバーがお花見をやっているなか)、キラー通りの奥の方にある「Case B」というイベントスペースで、第2回となる「MR GAY JAPAN」が開催されました。原宿駅に着いて驚いたのは、日曜の午後の原宿ってこんなに人が多いんだ?(外国人が本当に多い)ということでした。人混みをかき分けて、なんとか会場にたどり着きました。そこは半地下でガラス張りのオシャレなスペース。ちょっと見たことないレベルの巨大なレインボーフラッグが掲げられていて、迫力がありました(のですが、性の多様性のシンボルである6色のレインボーではなく、7色になっていたのが気になりました。何か意図があるのでしょうか…)
会場にはフォトブースが設けられていたほか(ちゃんと撮影用の女優ライトが用意されていたのが素敵)、ドリンクコーナーもあり、外で喫煙もでき、なかなか快適でした(トイレはオールジェンダーでした)
15:45を回った頃、イベントがスタート。司会のジョージさんがノリのいい軽快なトークで盛り上げつつ、MR GAY JAPANとはどういうイベントなのかといった趣旨を説明しました。
そして早速、オープニング・アクトとして水着審査がスタート。BLACKPINKの「BOOMBAYAH」が流れ(アガりました)、MOAさん、TAKUMIさん、AKIRAさん、BENSONさん、TIGERさんのファイナリスト5名のみなさんが2階から1人ずつ登場し、ポーズを決め、順番にウォーキングし、会場からは黄色い歓声が上がりました。
ファイナリストのみなさんが着替えている間に、審査員の方々の紹介が行われました。昨年の覇者・SHOGOさんをはじめ、ユーチューバーのかずえちゃん、ぷれいす東京の生島さん、中村キース・へリング美術館プラグラム&マーケティングディレクターのHIRAKUさん、東ちづるさん、「Miss Grand Japan 2018」日本代表・小田はるかさんなど、多彩で素敵な方々でした。
続いて、スポーティなコスチューム(PUMA提供だそうです)に着替えたファイナリストたちへの質疑応答です。あらかじめ審査員から用意された質問を、順番に引いていき、その質問に答えるという、緊張感あふれる審査です。「MR GAY JAPANのステージにどんな気持ちで立っていますか?」という質問もあれば、「カミングアウトについて、いろんな考え方の人がいますが…」というけっこう難しい質問もありました。運も左右します。どんな質問が出るかわからないなか、どもったり、戸惑ったりもせず、みなさん、たいへんスマートに、いい答えを言っていて、なかなかやるなぁと、感心させられました。
それから、一人ひとりのスピーチが行われました。カナダに留学してその先進性に触れたことから、日本でも堂々と手をつないで歩けるようになってほしいという思いを強くした、という方もいれば、本当に大切に思っているお母さんにカムアウトして受け入れてもらえなかったことがショックで、世の中をもっとLGBTフレンドリーに変えていきたいという気持ちで参加した方もいらっしゃいましたし、学校でいじめられたり性的虐待を受けたつらい経験を乗り越えて、教育現場でLGBTのことを発信していきたいと語る方、日本でも同性婚を実現したい、と熱く語る方もいらっしゃいました。真っ直ぐな気持ちが伝わってきて、みなさん本当に素晴らしかったです。
そのあと、審査タイムに入り、会場の方たちも5人の中から1人選ぶ(壁に投票のボードが掲げられ、シールを貼って投票する)ということになったのですが、正直、「みんないい子だし、とてもじゃないけど、誰か一人なんて選べないよ…」と思いました。
ゲストの方のライブが行われたあと、昨年の優勝者(初代MR GAY JAPAN)であるSHOGOさんのスピーチの時間となりました。「パートナーがオーストラリアからたまたま来日しているので」と言って、パートナーの方をステージに上げたSHOGOさん、ポケットから小さな箱を取り出し、会場から悲鳴にも似た歓声が上がり、司会の方が「Oh my god!」と叫び、ひざまづいてプロボーズの言葉を述べる前にパートナーさんがSHOGOさんを抱えあげてギュッと抱きしめ…そのドラマチックな展開、誰も予想していなかった素敵すぎるサプライズに、会場のみなさんも、泣くわ喚くわで、たいへんな騒ぎとなりました。いやあ、ええもん見してもらいました〜(とか言いつつ、涙をこらえるのに必死だったのは内緒です)。この素敵なお二人に、末永くお幸せに!と申し上げたい気持ちです。
さて、審査が終わり、いよいよ、優勝者が決まる、運命の瞬間が訪れました。特別賞と、3位、2位、1位が発表され、第2代MR GAY JAPANの称号は、TIGERさんに贈られることとなりました。TIGERさんは喜びのあまり、泣き崩れたりもしていましたが、マイクを手に取り、本当にありがとう、今日は母も来ています、応援してくれたみなさんに心から感謝します、といったスピーチを(英語で)していました。
それから、ファイナリストや審査員、ゲストのみなさんが壇上に上がり、記念撮影がひとしきり行われ、お開きとなりました。1時間余りのイベントでしたが、あっという間に感じました。
みなさん本当におつかれさまでした、ありがとうございました。
☆「MR GAY JAPAN 2019」のフォトアルバムはこちら
MR GAY JAPAN の意義
運営の方たちや出演者の方たちの真っ直ぐでひたむきな気持ちがヒシヒシと伝わってきて、プライドイベントのような祝福感、ポジティブなオーラに包まれ、まさかのプロポーズの場面では思わず泣いてしまったりもして、心洗われる素晴らしいイベントだなぁと思いました。ジーンときました。
イベントが終わってからMR GAY JAPANの公式Facebookをつらつらと、だいぶ前の投稿まで遡ってじっくり見てみました。
昨年の優勝者(初代MR GAY JAPAN)のSHOGOさんは、HIV予防啓発の活動に携わっていて、昨年のTOKYO AIDS WEEKS 2018のGay Men’s Chorusなどにも参加したり、U=Uをコミュニティに広めるようなお手伝いもしてくれています(拍手!)
それから、ファイナリストの一人で惜しくも入賞しなかった(個人的にはいちばんタイプだった)Takumiさんが、当日のスピーチではお母様との関係について語っていて、身につまされるものがあったのですが、コンテストが終わって、もう結果が出てしまっているにもかかわらず、「LGBTの家族と友人をつなぐ会」に参加したことを報告していて、「LGBTの子どもを持つ親の気持ちをダイレクトに聞くことができて、いろいろなヒントをいただけて、本当によかったです。ありがとうございました」と綴っていて、グッときました。
単にスポットライトを浴びてちやほやされたいというのではなく、もともと、世の中を少しでもいい方向に変えていこう、何か自分にできることをしようという気持ちで日頃から行動している方たちが選ばれてあのステージに上がっていたんだな、ということがよくわかりました。
同じ公式Facebookで、「私たちが発信したいことを代弁してくれています」と紹介されていたので、GAY STAR NEWSがMR GAY JAPANをレポートした記事を読んでみました。
「東京で過ごした経験から気づいたことは、東京はとてもゲイシーンが繁栄しているということだ。コンスタントにクラブパーティが開催され、プライドも毎年行われ、MR GAY JAPANのようなイベントもある。LGBTIが安全に暮らしていける。その割には、日本ではビジビリティが足りない。メディアにLGBTIのポジティブな代表が出ていないことが大きいのではないか。テレビや新聞では、ユーモアがあって人を笑わせられるような人たちが目立っているが、同性カップルが祝福されている姿はほとんど見ない。MR GAY JAPANがビジビリティを生み出すうえでとても重要であるということの理由の一つは、そういうことだ」
今回優勝したTIGERさんへのインタビューも載っていました。
「TIGERは学校で、ゲイであることをからかわれ、いじめに直面したが、「先生にいじめられていることを話したら、『自分でなんとかしろ』と言われた」という」「その後、彼はテレビでカムアウトし、自身の経験から、日本の義務教育でLGBTについてのカリキュラムが盛り込まれるようになってほしいと語った」「国連のLGBT関連のイベントに自腹でチケットを買って参加したこともあった」
「『黙って座りながら変化が訪れるのを待つようなことはしたくないんです』とTIGERは言う」
「今回彼がMR GAY JAPANというタイトルを手にしたことで、今後、文科省に働きかけたり、社会に変化をもたらすことがやりやすくなるだろう」
それから、初代MR GAY JAPANのSHOGOさんが、昨年の世界大会に関わった南アフリカのエンリケ・グロブラーという方が書いた「Do we even need Mr Gay World?」という記事を紹介していて、こちらもたいへん素晴らしい記事でしたので、ご紹介します(翻訳が間違っていたらすみません…)
エンリケさんは仕事として、南アフリカでのMR GAY WORLD世界大会(以下MGW)の運営に関わることになるのですが、初めは「ゲイのビューティ・ページェントがLGBT解放運動にとって、一体どんな貢献ができるのか理解できなかった」と率直に語っています。「競パンを穿いたイケメンモデルたちというステレオタイプが、ゲイコミュニティの分断に手を貸すだけだ。みんなある特定の外見にフィットすることを目指すべきだという考えを押し付けて」
ところが、いざ、世界中から集まった各国の代表たちと接するうちに、彼の認識はだんだん変わっていきます。「すぐにわかったのは、他のコンペと違って、MGWは見た目の基準はないということだった」「アバクロのような要求事項はなかった。むしろ逆だった」「どの人にも、美しさが宿っていた」「全員が、肌の色やボディタイプ、身体的特徴にかかわらず、プライドを持っていた」
コンテスト期間中に、タイの代表の方がネットで叩かれて、それを、同じように叩かれていたフィリピンの代表の方が慰めている場面に遭遇したそうです。「彼らは、我々がしないようなことを成した。両手を挙げて、(叩いた彼らを)鼓舞したい、社会の変化の一部になりたい、レインボーフラッグを平等と受容のために掲げたい、と言ったのだ」
「コンテスト期間の間中、我々はどの代表からも同じような言葉を聞いた。みんな、変化を渇望していた。この世界を少しでも良くするためにできること。誰一人として、イケメンコンテストなどに参加してはいなかった。彼らは身を呈してロールモデルとなるための機会にチャレンジしていたのだ」
「(南アフリカのアパルトヘイト抵抗運動の活動家である)スティーヴ・ビコの『抑圧者が手にしている最も強力な武器は抑圧される側の心だ』という言葉、ボブ・マーリーの『奴隷根性から君自身を解放するんだ、自らの精神を自由にすることができるのは君だけだ』という言葉、彼らがビーチの清掃のボランティアをしているとき、この有名な言葉が脳裏をよぎった。彼らがこれまで行ってきた活動が、どれほどの成果があったかはわからない。だけど彼らはすでに、絶望にあえぐ若者たちのためのロールモデルになるためのステップを、勇気を持って踏み出してるんだ。僕も負けてられない!」
いかがでしょう。きっとMGWの意義をご理解いただけたのではないかと思います。
今後も、MR GAY JAPANに参加したみなさんの活躍に期待しましょう。そして、我こそはという方は、来年、この栄えあるステージにチャレンジしてみてはいかがでしょうか?
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SCHEDULE
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- 12.14G-ROPE SM&緊縛ナイト
- 12.14SURF632
- 12.15PLUS+ -10th Anniversary-