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レポート:「gaku-GAY-kai 2020」
2020年12月29日・30日、ゲイの劇団フライングステージとその愉快な仲間たちによる年末恒例お楽しみイベント「gaku-GAY-kai 2020」がリアル開催されました。新型コロナウイルス対策で、いつもとはちょっと違う雰囲気とはなりましたが、それでもゲイテイストな芝居やパフォーマンスの数々が繰り広げられ、本当に楽しいイベントになりました。
2020年12月29日・30日、歌舞伎町の「シアター・ミラクル」で開催された年末恒例お楽しみイベント「gaku-GAY-kai 2020」。新型コロナウイルス対策として、ステージから座席までの距離を取る、席数を減らす、お客さんはマスク必須&手指消毒、コール&レスポンスはナシ(笑うのはOK)、終演後の出演者とのお話の時間もナシ(その代わりステージ上から出演者がお見送りする)というカタチになり、いつもとはちょっと違った雰囲気にはなりましたが、それでも、例年通り、劇団フライングステージとその愉快な仲間たちが歌やダンスを交えたゲイテイストな芝居を上演し、第二部ではたくさんのパフォーマーの方たちが多彩なパフォーマンスで楽しませてくれました。「gaku-GAY-kai」のお知らせがあると年末だと感じる、「gaku-GAY-kai」を観なければ年が越せないというファンの一人として、今回、無事に開催されたことは何よりで、本当にうれしいことでした。30日昼の部のレポートをお届けします。(後藤純一)
第一部『贋作・十二夜』
劇団フライングステージとその愉快な仲間たちによる第一部のお芝居は、贋作シェイクスピアシリーズ第4弾『十二夜』。シェイクスピアの恋愛喜劇をにぎやかに翻案したものです。例年ですと、歌やダンスがふんだんに盛り込まれ、約2時間の大作ミュージカルとして上演されてきたのですが、今年は歌やダンスがほとんどなく(そこは残念ではあったのですが)、時間も短めでしたが、十分楽しく観ることができました。
こんなストーリーです。
双子の兄妹セバスチャン(芳賀隆宏さん)とヴァイオラ(モイラさん)の乗った船が嵐に遭い、ヴァイオラは二丁目の海岸に打ち上げられる。彼女は消息の分からない兄を死んだと思い、身を守るため兄そっくりに男装してシザーリオと名乗り、二丁目のセレブであるオーシーノ(さいとうまことさん)に小姓として仕えることにする。
オーシーノは伯爵の娘であるオリヴィア(エスムラルダさん)に恋をしていたが、オリヴィアは兄の喪に服したいという理由で断り続けていた。オーシーノは、シザーリオをオリヴィアのもとに遣わし、自分の気持ちを伝えるよう命じる。密かにオーシーノに淡い思いを抱いていたヴァイオラはその命令に苦しむが、その務めを果たす。オリヴィアは使者としてやって来た「美少年」シザーリオにすっかり心を奪われてしまう。
一方、遭難でヴァイオラと生き別れとなった双子の兄セバスチャンは、別の船の船長アントーニオ(中嶌聡さん)に助けられており、彼と共に二丁目にやって来ていた。アントーニオはセバスチャンを気に入っていたが、二丁目を出禁になっており、セバスチャンと別れて人目に付かないよう行動していた。
オリヴィアにはオーシーノのほかにも求婚者がおり、オリヴィアの叔父トービー(岸本啓孝さん。女装)の遊び仲間であるアンドルー(永山雄樹さん)もその一人だった。アンドルーは愛しいオリヴィアが小姓に熱を上げているとトービーにそそのかされ、シザーリオに決闘を申し込む。シザーリオは仕方なくその決闘を受けるが、シザーリオのことをセバスチャンだと思い込んだアントーニオが割って入り、決闘を止める。しかし、アントーニオは警官(水月アキラさん)に捕まってしまい、シザーリオ(ヴァイオラ)は彼が自分のことをセバスチャンと呼ぶのを聞いて、兄が生きていることを知る。
その頃、二丁目見物をしていたセバスチャンは、偶然、オリヴィアと出会い、見ず知らずの美しい姫に求婚されて夢ではないかと戸惑うも、その申し出を受ける。オリヴィアはシザーリオ(本当はセバスチャン)が求婚をOKしてくれたと喜び、気が変わらぬうちにとすぐに結婚式を挙げる。
オーシーノは、オリヴィアが自分の小姓(本当はセバスチャン)を夫と呼ぶのを聞いて、裏切られたと激怒する。身に覚えのないシザーリオ(ヴァイオラ)はそれを否定するが、今度はオリヴィアが裏切られたと叫ぶ。そんな口論の最中にセバスチャンが現れ、一同は驚く。ヴァイオラとセバスチャンは互いに素性を確かめ合い、生き別れになっていた兄妹の感動の再会を果たす。一方のオーシーノはシザーリオが実は女だったと知り、改めて求婚する。こうして2組のカップルがめでたく誕生する。
サイドストーリーなのですが、いつも王様とか男らしい役を演じている尾崎太郎さんがまさかの女装をするシーンがあって、とても新鮮でした。太郎さんはオリヴィアに仕える執事マルヴォーリオの役で、トービーの一味に騙されて、オリヴィアに気に入られようと黄色いヅラとズドンとしたワンピース、赤いヒールという(お世辞にも美しいとは言えない)女装姿でアピールするのですが、オリヴィア(エスムラルダさん)は「私はノンケがネタで中途半端な女装してるのがいちばん嫌いなの」と激怒…思わず爆笑してしまいました。
あと、時々現れてうまく事が運ぶように手助けしてくれる二丁目の女神を関根さんが演じていたり、マルヴォーリオを陥れるオリヴィアの侍女マライアをオバマさんが演じていたり(相変わらずグレイス・ジョーンズ風味な女装で、キレのよいセリフで面白かったです)、ほかにもいつもの皆さんが安定の魅力で楽しませてくれました。
第二部
今年も岸本さんの司会で第二部のパフォーマンスが繰り広げられました。
佐藤達さんの紙芝居はいつにも増してドラマチックでファンタジックな大作でした。「森の熊さん」がモチーフだったのですが、熊さんがコロナに気をつけるあまり、落とした貝殻のイアリングを拾わず、女の子と距離を取りながら延々追いかけて教えてあげるというところが面白かったです。
水月モニカさんは、オスカー・ワイルドの「幸福な王子」を、二丁目に建つドラァグクイーンの像に翻案した「幸福な女装」というお話を披露。コロナ禍の影響で仕事や家を失い、野宿している人たちに、ツバメがルビーやサファイアを届けるという、ジーンとくるお話でした。
関根さんは、いまエスムラルダさんたちが取り組んでいるドラァグクイーンの絵本の読み聞かせのような感じで、ネコの中で一匹だけイヌのような姿形で異質であることに悩む…という絵本をリーディングしてくれました。
ぶー子さんは、「女装としての葬式」をあげながら、コロナ禍の影響で演劇界が深刻な状況にあるというメッセージを伝えていました。
モイラさんの「小夜子なりきりショウ」は、今年は和物の衣装で、相変わらず美しかったです。
ジオラママンボガールズは、これまでにない、なんだかすごい衣装?装置?で驚かせてくれました。途中でスイッチを操作して背後のエイリアン?がしぼんだり膨らんだりするのを見せていたのも面白かったです。
中森明菜のモノマネで毎回笑わせてくれる中森夏奈子さんは、「今年も特にお知らせがなく…」と謝ったあと、どうしてもこの歌をみなさんに聴いてほしいと言って、坂本○美さんの『ブッダのように私は死んだ』を熱唱。素晴らしかったです(女装紅白でもリルさんがやってましたが、スゴい歌ですよね。演歌界からひさびさにゲイの琴線に触れる名曲が登場した感、あります)
そして今回も、エスムラルダさんがトリをつとめました。ひさびさの「じょんから」(張り型ネタ)と「フーガ」(コマみたいなジャグリング…珍しく失敗)で盛り上げたあと、恒例の「エスムラルダ・デ・マンボ」をコール&レスポンスなしで歌い(年々歌が上手くなっていくのがスゴいと思いました)、最後に出演者が全員ステージに登場して大団円を迎えました。
今年も観れて本当に良かったです。いつもと同じかもしれないけど、いつもそこにあるありがたみというか、なくならずにあってくれることの幸せを噛み締めた「gaku-GAY-kai 2020」でした。
すごく気を遣って、対策をとりながらやっていただけでなく、出演者とスタッフの方たちは、この公演が終わってから2週間、毎日検温し、体調を管理して過ごすと最後にアナウンスされました。いつもやっている打ち上げも今年はナシだったそうです(飲み会を楽しみにしていた方も多かったでしょうに…)。それでも皆さん、「gaku-GAY-kai」の灯を絶やすまいと、毎年楽しみにしているファンの方たちのために、リスクも承知のうえで、出演してくれたのでした。その心意気に、胸が熱くなる思いでした。本当にありがとうございました。
【追記】
2週間後、フライングステージからアナウンスがあり、「gaku-GAY-kai」での感染拡大はなかったそうです。
「終演から2週間経ちました。終演後もキャストスタッフは、毎日検温をして体調管理に務めてきましたが、新型コロナの感染はなく、感染についての問い合わせもありませんでした。
多くのご声援をいただいたうえ、ご来場くださったみなさまには感染症対策にもご協力をいただき、本当にありがとうございました。この場を借りて厚く御礼申し上げます」
次回のフライングステージの公演は、6月23日〜27日、「アイタクテとナリタクテ/お茶と同情」2作を日替わりで上演、新作短編を本編の前に上演予定、だそうです(その頃までにはコロナ禍が収束しているといいですね)
★「gaku-GAY-kai 2020」のフォトアルバムはこちら
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