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2日間で約160万人が視聴したTRP「#おうちでプライド」

第10回という記念すべき回になった東京レインボープライドのメインイベント「#おうちでプライド」。総視聴数が2日間でのべ約160万人に上り、昨年を大きく上回りました。24日にはオンラインパレードも開催され、SNSがレインボーカラーに染まりました。

2日間で約160万人が視聴したTRP「#おうちでプライド」

  第10回という記念すべき回になった東京レインボープライドのメインイベント「#おうちでプライド」が4月24日・25日に開催され、総視聴数が2日間でのべ約160万人に上り、昨年の総視聴数約43万人を大きく上回りました。初日の24日には「#おうちでプライド2021」「#声をあげる世界を変える」のハッシュタグによるオンラインパレードも開催されました。
 

 「#おうちでプライド」1日目は、2019年のパレードと昨年の「#おうちでプライド」の様子をダイジェストで振り返る、とてもカッコいい映像でスタートしました。
 共同代表の杉山文野さんと山田なつみさん、司会のブルボンヌさんがスタジオ?からお送りするかたちで(出演者・スタッフ全員、PCR検査で陰性の確認をしているそうです)、次々に登場するゲストのみなさんを中央のモニターでお迎えし、トークを進めていきました。
 最初に、九州レインボープライド、三重レインボープライド、レインボーフェスタ和歌山、名古屋レインボープライド、さっぽろレインボープライド、青森レインボーパレード、いわてレインボーマーチ、奈良レインボーフェスタ、ピンクドット沖縄という全国のレインボーイベントの方たちがリレーでメッセージ動画を送ってくれました。ここで今年の開催スケジュールを発表する団体もあり、とてもパレードらしく、有意義な時間となりました。
 ゲストの方たちのトークのなかで、特に注目を集めたのは、SHELLYさんのアライとしての素晴らしさ、そして水原希子さんの過去の差別的な番組への出演についての心からの謝罪だったと思います。

 SHELLYさんは、ふだんからお子さんに『にじいろのしあわせ』や『王子と騎士』のような同性愛をテーマにした絵本も読み聞かせているでそうで(英才教育!)、YouTubeに性教育のチャンネルをつくってセクシュアリティのことについても発信しています。
 そして、「(LGBTQのことに限らず)今の社会で本当に変えたいと思うルールは?」という質問に対し、SHELLYさんは「一冊の本にできるくらいあるけど、大至急、本当に今、実現してほしいと思っているのは同性婚です」と答えました。
「やっぱり、同性婚が認められないと、LGBTQのコミュニティみんなが『否定』されてるというか、同じような権利が認められていない状態。日本はそんな国であってほしくない」
「同性婚を実現することは、同性カップルを家族の形として国が認めますということ」
「制度として認められてることで、偏見のある人を否定するというか…。同性カップルの子どもは学校でいじめられるからかわいそうって言う人がいるけど、いじめてる人を教育してあげるのが本来の、本当に子どもに優しい社会。大人の偏見を外さないと」と、素晴らしすぎるコメントをくださいました。

 それから、水原希子さんが過去に同性愛をネタにするテレビ番組の企画に出演したことについて、心からの謝罪の言葉を述べました。
 水原さんが出演した番組は、2015年に放送されたいわゆる「ドッキリ」もので、水原さんが別のタレントに対し、女性のマネージャーと恋人関係にあるような振る舞いを見せて、最後にそれがドッキリだと明かして驚かせるという内容でした。番組が放送されてから6年近く経ちますが、水原さんがレズビアン役を演じたNetflix映画『彼女』が配信されるにあたり、レズビアンの方などから当時の番組企画や水原さんの言動に対する批判の声が上がっていました。
 水原さんは番組の企画について「今自分で言うのも本当に嫌なくらい、レズビアンの方々に対してとても差別的な内容だった」と語りました。「今自分がこうやって言っているだけでも本当にありえないし、無神経すぎるし、自分でもびっくりするんですけど、その当時の私はその番組に映画の宣伝で出させていただいて、仕事だと思って自分も『わかりました』という感じでやっていたんです、本当に正直なところ。そこに対しての違和感というのはその当時の自分はなかったかなと思います」
「その当時はあまり『これはいかがなものか』という(視聴者からの)コメントとかはなくて、自分もそのとき自分がしてしまったことに対していかに差別的なことだったのかをずっと気づかずに何年も過ぎていって。ここ最近Twitterのコメントとかでその番組のこと、レズビアンの方に対してそんな差別的なことをしているのに、こういう活動をしていることに対して違和感を覚えるという方が何人かいらっしゃって。そりゃそうだと思いましたし、自分でも振り返って考えてみたときに、なんてひどい企画なんだと思ったし、自分もそのとき何も違和感を覚えずに当たり前のように差別的なことをしてしまっていた」
「その間ずっともしかしたら何かしらトラウマだったりとか、嫌な思いをさせていたのかもしれないなという、自分の行動によって。本当に胸が苦しくて」
「このこと自体を今日東京レインボープライドで言うのはどうなんだろうと思っていたんですけど、これは私がしてしまったことだし、文章にするのも嫌だなと思っていて、何か面と向かって伝えたいなとずっと感じていた」
「こうやって今自分が『あれは本当に差別的なことだったし、本当に申し訳ないな』って気づけたのは、たくさんの方がSNSとかで発信してくださったりとか、いろんな人たちに出会っていろんな国に行っていろんな方たちにジェンダーのこととか教わって、教育していただいて気づけたことだった。そういう世の中になって良かったな、というふうにもすごく思ったし、そういう(誤りを指摘する)声がちゃんとSNSを通して届くという環境があること自体も自分にとってはすごくありがたくて、気づかせていただいた」
 この心からの謝罪の言葉に、司会のブルボンヌさんは「嫌ってるかもしれない人が見てるとこに出てきて、こうして語ってくれて、本当に嬉しいです。素晴らしい」と語りました。みなさん、泣いていらっしゃいました。

 1日目のゲストトークとしては、このほかにも、ロバート・キャンベルさんが「国民は完全に分岐点を越えていて、多様性のことをみんな考えている。3年前は点々と星が光っていたのが、今は銀河のようになった。みなさんの長い活動のおかげ。でも、国政が動かない。固まっていて、現実から乖離している。投票に行こう。政治家に声を届けよう」と力強いコメントをくださったり、阿部知代さんが、初めてTRPでMCをしたとき、周囲から「政治的」と言われたことを明かし、それでも、「ゲイやレズビアンの友達がいる私にとっては当然のことだった」と、胸が熱くなるようなトークを披露してくださったりしました。
 また、様々な方たちからコメント動画も届けられました。kemioさんが「世の中や社会で『これが普通だ』『ああであるべき』『こうであるべき』とか言ってくる人がいますけれど、そういうのは結果的にエキストラなんです。やっぱり自分の人生って、あなたが監督で、あなたがディレクションするんです。だからエキストラの意見はシャットダウンして、自分の生きたいように、自分のやりたいように、自分の人生を楽しんでくれたらいいなと思います」と語っていてシビれました。青山テルマさんの「コミュニティがどんどん声をあげることを躊躇しないような世界になってほしい」という言葉も素敵でした。
 

 2日目は、YOUTH PRIDE JAPAN(以下、YPJ)のメンバーがりゅうちぇるさん、乙武洋匡さんをゲストに迎え、語り合う企画がありました(りゅうちぇるさんがTRPのタオルなどのグッズを「フルコーディネイト」して登場し、「これがプロです(ドヤ顔)」と言ってたのがウケました)
 前半は、「マイノリティが生きやすい日本へのみんなの一歩」というテーマでトーク。りゅうちぇるさんが「メイクをしてるだけでいろんなんことを言われた。知らないから拒否、否定してしまうということもあると思う。だから僕は、今後もメディアに出て多様な生き方があるということを体現していって、知ってもらうきっかけを作っていく必要があると思ってます」と、乙武さんは、小学校の先生をしていたとき、教科書に「男の子が女の子を好きになり、女の子が男の子を好きになる時期を思春期と言います」という記述があったのでパタンと閉じて、「教科書にはこんな風に書いてあるけど、男の子が男の子を好きになることも、女の子が女の子を好きになることもある。それはおかしなことじゃないし、笑ったりしていいものではないよ」と伝えたそうです。「僕はたまたま身近にそういう友人がいたからこう言えたけど、早く(同性愛のことも)教科書に盛り込んでほしいですね」と語っていました。
 後半は「もっと自分を好きになるには セルフラブ・自己肯定感」というテーマ。YPJのメンバーのFumiさんが、「自分らしい見た目を表現できるようになって、かっこいいねと言われたりもするけど、内面がまだ自己肯定できてない…」と打ち明けると、りゅうちぇるさんは「自分に軸を持つことは大事。周囲からのいい言葉を素直に信じたほうが幸せになれるし、キラキラにつながるよ」と、乙武さんは「まず自分に自信を持つこと、と思ってる人が多いけど、僕も自信はない。でも自分のダメなところもひっくるめて自分は自分だと肯定してる。自信がなければ自分を好きになれないというのであれば、ハードルが高いよね。人からの評価で変わる相対的自己肯定感よりも、人からどう思われようが変わらない絶対的自己肯定感を持てるほうがいい」と語ってくれました(奥が深いですね)

 それから、ゲストトークとしては、せやろがいおじさん、ミラクルひかるさん、YOUさん、テリー伊藤さん(スタジオにリアルで登場)に続き、アンミカさんが在日コリアンのお友達が作ってくれたというレインボーカラーの衣装でリアル出演し、ハイテンションなトークを繰り広げました。先日のレスリー・キーさん&ジョシュアさんの結婚式について、「だれかの励みになる素晴らしい第一歩。いや第百歩かな」「もとはむちゃくちゃネガティブだったから、光がありがたい」と語り、また、以前の某政治家の「生産性」発言について、「人間に「生産性」を当てはめるなんてあってはならないこと。「生産性」がないから権利がないなどということはない。みんなが平等。線引きされない」と力強く語ってくれました。
 それから、「Z世代のオピニオンリーダー」長谷川ミラさんは、「私自身は『LGBTQではない』ではなくて『まだわからない』というふうにしています」と語りはじめ(素晴らしい)、子どもの時から身長が高くてメンズ服を着ていたら「レズビアンなの?」と聞かれたりした、そのときの思いからオールジェンダーのファッションブランドを立ち上げたと語りました。ニューヨークのプライドに参加したこともあり、そこで撮影した写真をプリントしたTシャツを作ったりもしたそう。最後に、若い世代に向けて「選挙に行こう!」と、「投票することがLGBTQのことだけでなく、コロナのこともそうだし、あらゆる社会課題の解決につながっていく」と、「政治家を自分の手で決めていくっていうことが必要だと思います」と呼びかけました。
 大トリは夏木マリさん。2014年の東京レインボープライドへの出演について「お友達が周りにたくさんいるから。躊躇はなかった」「お声かけいただいてうれしかった」「行動することが、みんなが動く第一歩」「性の多様性は文化の多様性」と語ってくださいました。そして、同性婚実現について、「日本って途上国、大きく言えば。政治の人も変わってほしい」「LGBTにQがつくようになったっていうのはみんなの意識が変わったってことですよね」「まず自分が動くこと。そうすれば変わっていくと思います」と語りました。

 また、事前にお名前はクレジットされてはいなかったのですが、「#おうちでプライド」の直前にパンテーンのCMへの起用で話題になっていたトランス女性モデルのイシヅカユウさんのトークの時間も設けられました。イシヅカユウさんは今回の起用を「うれしかった」と語り、小学生のときに性別違和のストレスから自分で髪を抜いて脱毛症になってしまったという経験を明かしながら、「もっとたくさんの人が自由に生きていくことができるように、モデルを続けていきたい」と語りました。

 今回の「#おうちでプライド」は、出演ゲストが発表された際、LGBTQコミュニティのメンバーから、過去にレズビアンを侮辱する番組に出ていた人物(水原希子さん)や女性蔑視発言をしていた人物(これはどなたのことかわかりません…)を出演させるのか、といった批判の声が上がっていました。そうしたことを踏まえて、水原希子さんが今回、75万人が視聴しているなかで心からの謝罪の言葉を語ってくれました。
 また、2日目のとある出演者の方がトーク本番中に女性同性愛者に対する差別用語とされる言葉を使ってしまっていました(とても素晴らしいトークだっただけに、残念でした)
 こうしたことを踏まえて、最後に、共同代表理事の杉山文野さんから「声をあげる時には、正しい表現を使用することは大切ですが、今は、少しの間違いを大きな問題として批判する人が多いように感じます。声をあげた人の本質的な意見や、問題が見えなくなってしまっていることを、変えていきたいですね」とコメントしていました。司会のブルボンヌさんも「水と風は100年かけて森を育てるけど、火は1日で燃やしてしまう」とナウシカを引用しながら「火の使い方には気をつけないとね」と語っていました(さすがです)

 「キャンセル・カルチャー」という言葉も聞かれますが、どこまでが妥当な指摘・批判でどこからが行き過ぎなのかという判断を誰がどうやってするのかというのは決して一筋縄ではいかない問題です。根本には、そもそもジェンダーやセクシュアリティに関する世間の差別が圧倒的すぎて今まで声を上げられずにいた人たちが、ようやく「あれは差別だった」と言えるようになったということがある、ということを見逃してはいけないでしょう。長年足を踏まれ続けてきた人たちが踏んでた人を「許せない」と言うのは当然のことで(保毛尾田保毛男の時のように)、その怒りは共有しつつ、もうこういう思いは二度とごめんだと思った時、誰にどう物を言えばよいのかということは、今後もコミュニティ内でも議論されるべきテーマなのではないかと思います。
 
 ともあれ、2日間にわたる「#おうちでプライド」は、2日間でのべ約160万人という記録的な視聴数で幕を閉じました。
 世の中、嘘や心ない言葉、ヘイトにあふれていますが、この「#おうちでプライド」は真実の言葉、心からのリスペクトや愛にあふれていた、素晴らしい時間だったなぁと感じました。
 共同代表の杉山さんと山田さん、司会のブルボンヌさん(いつもながら、あらゆる場面で機転を利かせ、その場に最もふさわしいコメントを瞬時に発していて、素晴らしかったです)、本当におつかれさまでした。

 
 それから、「#おうちでプライド」のYouTube配信と並行して、SNS上では「#おうちでプライド2021」「#声をあげる世界を変える」というハッシュタグを使ったオンラインパレードが開催されました。
 全国から(なかには海外からも)参加した当事者の方たち、アライの方たち、大使館の方、企業の方など、本当にいろんな方たちがメッセージを発信していました。
「東京に行けなくても、TRPに参加できて幸せ!オンライン化ありがとうございます」
「来年こそはオフラインで開催されるといいな」
「セクシュアリティやジェンダーの違いで理不尽なことならないようにしようね」
「生きやすい世の中になるといい」
「誰もが人目を気にせず手をつないで歩ける世の中に」などなど。
 前にパレードを歩いた時の写真、手をつないでいる写真、カップルでキスする写真、街で見かけた素敵なPRIDEのメッセージ、自筆のイラストなど、見ているだけでパレードに参加しているような、幸せな気持ちになれましたし、仲間がたくさんいるんだなぁ、こんなにいろんな方たちが参加してるんだなぁ、と思えました。パレードの意義って必ずしもカミングアウトだけじゃなくて、多様な性のありようを祝福し、コミュニティのみんなが自身のジェンダーやセクシュアリティを肯定できるようになること、自分は独りじゃない、仲間がたくさんいると感じられる、そういうところにもあると思いますが、このオンラインパレードは、そういう意味でも、とてもいいパレードだったと思います。



 TRPの「プライドウィーク」は5月5日まで続きます。オンラインでたくさんのイベントが行なわれます。こちらからご覧ください。

 
 
参考記事:
【イベントレポート】約160万人が視聴!テリー伊藤さん、夏木マリさん、水原希子さん、りゅうちぇるさんなど16名のゲストが登場東京レインボープライドのオンライン配信「#おうちでプライド2021」(PR TIMES)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000075635.html
「大至急、実現して」日本でも同性婚ができるように…声をあげた芸能人たちの言葉(BuzzFeed Japan)
https://www.buzzfeed.com/jp/sumirekotomita/supporting-marriage-equality-in-japan
水原希子さん「無神経すぎた」 同性愛ドッキリの番組企画に出演の過去、反省語る(ハフポスト日本版)
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_6083e8abe4b003896e043f63
「私って私じゃんと思えるようになった」kemio、カミングアウトからの2年を振り返る(BuzzFeed Japan)
https://www.buzzfeed.com/jp/saoriibuki/trp2021-kemio-message
「障害者はかわいそう」「パパがメイクなんてありえない」 そんな風に思ったことはありますか?(BuzzFeed Japan)
https://www.buzzfeed.com/jp/saoriibuki/trp2021-youthpridejapan
「選挙に行こう」「政治家を自分の手で決めよう」長谷川ミラさんが話す理由(BuzzFeed Japan)
https://www.buzzfeed.com/jp/sumirekotomita/hasegawamila-trp2021

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