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特集:2023年初春のアート展

2023年初春(1月〜2月)に開催されるLGBTQ関連のアート展をいろいろご紹介いたします。

特集:2023年初春のアート展

(『アンディ・ウォーホル・キョウト』より)
 

寒い日が続きますね…こんな寒いのにわざわざ美術館とかギャラリーに行く気がしないし、行っても暖かくはならないよね…と思われるかもしれませんが、そうおっしゃらずに、ぜひ週末、天気の良い日にお出かけください。2023年初春(1月〜2月)に開催されるLGBTQ(性的マイノリティ、クィア)関連のアート展をいろいろご紹介いたします。新たな展覧会の情報が入ってきましたら、順次追加していきます。
(最終更新日 2023.2.1)


開催中 高知
土佐深夜日記―うつせみ

 国内有数の写真賞「林忠彦賞」を2002年に受賞した高知県南国市在住の写真家・角田和夫さんの個展「土佐深夜日記―うつせみ」が高知県立美術館で開かれています。1980年代から現在に至るまでの高知の夜の街や、ゲイバーで働いていた叔父を撮影したモノクロ写真など約150点を3部構成で展示し、当時まだ「社会の日陰者」だった叔父の姿を通じて人間という存在の悲哀や強さを伝えているそうです。音信不通になっていた叔父と1984年ごろに再会したことが、夜の街を撮影するきっかけとなったそうで、角田さんは「優しく思いやりがあった。家族に迷惑をかけまいと気を使っていたが、『家族の傘の中に入りたい』との気持ちも持っていた」と語っています。叔父は酒浸りの生活を送り、56歳で亡くなったそうです。ゲイバーで働く人々や叔父の姿を収めたカットは、当時のゲイたちの貴重な記録にもなっています。
 
土佐深夜日記―うつせみ
会期:〜1月9日(月祝)
会場:高知県立美術館
観覧料:一般当日370円、大学生260円、高校生以下無料
※身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳、戦傷病者手帳及び被爆者健康手帳所持者とその介護者(1名)、高知県及び高知市長寿手帳所持者は無料




1月22日 東京
「ウェンデリン・ファン・オルデンボルフ 柔らかな舞台」展 関連プログラム『IWAKANと考えるジェンダーと創造』

 ジェンダーやセクシュアリティに関するSNS上の議論に、対話の余地がなく分断を感じるような風潮の中、ジェンダーにまつわる違和感を多角的かつ創造的に問い直す試みをしてきたIWAKANがコレクティブやアーティストたちと連帯し、あらゆる人が自分たちの持つ違和感について会話できる空間を1/22 東京都現代美術館(MOT)にて創出し、このテーマに関わる対話を止めることなく続けていきます。
 オランダの現代美術を代表するアーティストの一人であるウェンデリン・ファン・オルデンボルフの個展「柔らかな舞台」の会期中、IWAKANとの共同企画で「IWAKANと考えるジェンダーと創造」が開催されます。このイベントでは、「もしもあなたの体がなくなったら、何をもって女性を定義しますか?」という問いに答えた女性たちの声を再生するインスタレーション「女声展」、フェミニズム、クィアに焦点を当てた雑誌やZINEを制作しているコレクティブによるラウンドテーブル、そしてアーティストのハスラー・アキラ氏をゲストに迎えてのトークセッションを開催します。また会場には、loneliness booksがクィア、ジェンダー関連の書籍を紹介するコーナーもあります。
【タイムスケジュール】 
10:00-13:30 女声展
14:00-16:00 BGU、over and over、IWAKANによるラウンドテーブル
16:15-18:00 アキラ・ザ・ハスラー、IWAKAN、崔敬華(東京都現代美術館)によるトークセッション
  
「ウェンデリン・ファン・オルデンボルフ 柔らかな舞台」展 関連プログラム
IWAKANと考えるジェンダーと創造
日時:2023年1月22日(日)10:00-18:00
会場:東京都現代美術館 B2F 講堂
定員:180名(事前予約不要・先着順) ※途中入退場自由
参加費:無料
登壇者:
【IWAKAN】Andromeda、Jeremy Benkemoun、Lana Kageyama、Yuri Abo
【over and over magazine】saki – sohee、miyaki kai
【B.G.U. zine】森本優芽、マヨ
ハスラー・アキラ
loneliness books




 

開催中 京都
アンディ・ウォーホル・キョウト

 NYを拠点に活動し、時代を席巻したポップアートの旗手であり、20世紀のゲイのアーティストを代表する存在でもあるアンディ・ウォーホル(1928~87年)。その大規模な回顧展「アンディ・ウォーホル・キョウト」が、京都市京セラ美術館で開催されています。美術界で成功する前のイラストレーター時代から晩年まで、幅広い時代の200点を超える作品と資料から、ウォーホルが取り組んだテーマや人物像に触れることができます。有名な「キャンベル・スープ」シリーズや、マリリン・モンローなど著名人のポートレート(アレサ・フランクリンや坂本龍一さんもいます)といったポップ・アートだけでなく、多彩な作品が展示されているようですが、注目すべきは展示の最後を飾る、最晩年に取り組んだ絵画「最後の晩餐」です(画像はこちらでご覧いただけます)。イエス・キリストらの肖像に、現代的な記号であるバイクや値札を組み合わせて描写した作品で、中央の文字「THE BIG C」は、キリストの頭文字であると同時に、当時のエイズへの偏見を伴った異名「GAY CANCER」を示すとされています。アンディ・ウォーホル美術館のパトリック・ムーア館長は「同性愛者でありカトリックの敬虔な信者であったウォーホルのパーソナルな部分が示されたものだ。人間の生きる世界が儚く移り変わるものであることが表現されている」と評しています。その巨大さゆえ、外部での展示がなかなかできない作品だそう。ぜひこの機会にご覧ください。

アンディ・ウォーホル・キョウト / ANDY WARHOL KYOTO
会期:~2023年2月12日(日)
会場:京都市京セラ美術館 新館「東山キューブ」(京都市左京区岡崎円勝寺町124)
開館時間:10:00-18:00 ※入場は閉館の30分前まで
休館:月曜(ただし祝日の場合は開館) 
料金(当日券):土日祝一般2200円、平日一般2000円、大学・高校生1400円ほか
※障がい者手帳等をお持ちの方(要証明)と同伴される介護者1名は無料
※会場内混雑の際は、日時予約をお願いする場合や入場までお待ちいただく場合がございます




2月2日〜27日 東京
カナイフユキ『ゼペット』原画展

『体の贈り物』『若かった日々』『家庭の医学』などで知られるレズビアンの作家、レベッカ・ブラウンの小品「ゼペット」が、柴田元幸さんの翻訳、カナイフユキさんの絵によって絵本になりました。人間になんかなりたくない、命なんかほしくないと言い続けるピノキオを抱えた老人のお話。その悲しみと優しさに、カナイフユキさんの色彩が寄り添います。不器用で、弱く、失敗して負けていく人、周縁化されていく人のために、そういう人たちが孤独ではないんだと思えるように描いているカナイフユキさんと、レベッカ・ブラウンによる「祈り」にも似た絵本。その『ゼペット』の原画展が三軒茶屋の本屋カフェ「twililight」で開催されます。

カナイフユキ『ゼペット』原画展
会期:2月2日〜27日
会場:twililight





2月18日〜28日 オンライン
木村べん 没後20年記念原画展

 『薔薇族』『さぶ』の表紙絵を手がけたことで知られる木村べんの没後20年を記念する原画展がオンラインで開催。公開の機会が少ない『さぶ』の小説挿絵や、耽美系雑誌『JUNE』『ALLAN』に掲載された作品なども展示されるそうです。

木村べん 没後20年記念原画展
会期:2月18日(土)〜28日(火) 
オンライン
無料
観覧方法:スマホまたはタブレット端末で下記リンクからお入りください。PCからもご覧いただけます。
https://sv72.3d-gallery.net/?uid=NLHiI1GLFQnbqc




2月11日〜4月9日 京都
甲斐荘楠音の全貌―絵画、演劇、映画を越境する個性

 様々な領域を越境した表現者、甲斐荘楠音(かいのしょう・ただおと)の創作の全貌を回顧する展覧会。甲斐荘は大正期から昭和初期に日本画家として活躍、通念としての理想美を描き出すのではなく美醜相半ばする人間の生々しさを巧みに描写し、戦前の日本画壇で高く評価されましたが、1940年代初頭に画業を中断して映画業界に転身するとともに画家としての成果を顧みられる機会は減り、再び評価されるのは亡くなる直前の1970年代半ばまで待つことに。今日では「京都画壇の異才」として知られますが、その活動の重要性はジャンルを超えた越境性にあり、映画監督・溝口健二らを支えた風俗考証家としての活動や、歌舞伎など演劇を愛好し、自らも素人芝居に興じた趣味人としての一面、女形としての演技や、異性装による「女性」としての振る舞い、そういったこれまでほとんど注目されてこなかった甲斐荘の側面にも光を当てるのが今回の展覧会の主旨です。異色の日本画家から「複雑かつ多面的な個性をもつ表現者」へと甲斐荘楠音を再定義する展覧会になる模様。なお、甲斐荘は生涯独身で、ゲイであったと見られています。

甲斐荘楠音の全貌―絵画、演劇、映画を越境する個性
会期:2023年2月11日(土・祝)〜4月9日(日)
会場:京都国立近代美術館(京都市左京区岡崎円勝寺町)
開館時間:10:00-18:00(金曜日は20:00まで開館) ※入館はいずれも閉館30分前まで
休館日:月曜日
料金:一般 1,800円(1,600円)、大学生 1,100円(900円)、高校生 600円(400円) ※()内は前売りおよび20名以上の団体 ※中学生以下は無料 ※心身に障がいのある方と付添者1名は無料 ※母子家庭・父子家庭の世帯員の方は無料




開催中 大阪
森村泰昌 「顔」-KAO

 大阪市住之江区の北加賀屋にあるモリムラ@ミュージアム(M@M)は、美術家・森村泰昌さん(時代や人種、性別を超えた様々な「他者」に扮するセルフポートレートで有名な方。マリリン・モンローなど女性に扮した作品も多く、そういう意味ではクィアです)の作品がいつでも見られるミュージアムです。その第8回企画展は、「顔」がおおきく扱われたモリムラ作品の数々が一堂に介した「『顔』KAO」です。
「「顔」をめぐる壮絶な修羅場を描いた悲喜劇、「ヘルタースケルター」が描かれたのは1996年。あれから26年ばかり経った2022年の今なら、りりこはあれほどの苦渋を味わわなくてもよかったのかもしれません。というのも、「私」がレプリカント、すなわち人工的に製造された「顔」になることに、私たちはすでに抵抗感がなくなってきつつあるからです。Photoshopで「私」の「顔」を加工する、あるいはネット上で自在にアバターを楽しむ。そういう「顔」を変えることにたいする軽快なゲーム感覚には、もはやりりこが苦闘したあの「私」と「顔」の乖離は希薄です。「顔」は、衣服を着替えるのにも似た、着脱可能なキャラクター装置となりつつある。 いまや、「私」は「顔」に悩むのではありません。「私」は「顔」と戯れるためのテクノロジーを楽しもうと欲している。そのことを伝えたら、りりこは救われるだろうか、それともやっぱり聴く耳持たず、ののしるだろうか」
「今回の展覧会名は、「『顔』KAO」です。漢字表記のほうは、「私」から引きはがしたくても、一生まとわりついてくる厄介至極な、しかし愛すべき「顔」を意味しています。「私」と「顔」がイコールでつながっていたころの時代感覚をあらわしています。 そしてアルファベット表記が意味するのは、私たちの未来形としてすでに視野にはいりつつある、着脱可能な装置としての「KAO」です。「顔」の時代の終焉は近い。あるいは「私」が「私」であることの意味を探しつづけてきた「人間」の歴史にも黄昏がやってきた」
「本展で私は「顔」と「KAO」の稜線を綱渡りしてみたいと思います。きわどい境界線上に歩を進めながら、眼下にはどんな風景が眺められるのでしょう。この「顔/KAO」をめぐる想念の散策におつきあいくださいますよう、どうぞよろしくお願いいたします」
(公式サイトより)

森村泰昌 「顔」-KAO
会期:~2023年5月7日(日)
会場:モリムラ@ミュージアム(大阪府大阪市住之江区北加賀屋5-5-36 2F)
開館時間:金土日祝 12:00-18:00  ※展覧会開催中のみ開館
入館料:一般・大学生 600円





開催中 小淵沢
中村キース・ヘリング美術館開館15周年記念展:混沌と希望

 中村キース・ヘリング美術館が開館15周年を迎えます。2007年4月、キース・ヘリングを紹介する世界で唯一の美術館として八ヶ岳の麓に位置する小淵沢に開館しました。コレクターであり館長を務める中村和男さんは、1987年にニューヨークでキースの作品に出会ったことをきっかけに、その作品の蒐集を始めました。現在およそ300点の作品のほか、記録写真や映像、生前に制作されたグッズなど500点以上の資料を収蔵しています。今回の「中村キース・ヘリング美術館開館15周年記念展:混沌と希望」では、新たに収蔵する作品を中心に、コレクションの核となる作品約150点を一挙に展示する15周年にふさわしい見応えのある展示となっています。

中村キース・ヘリング美術館開館15周年記念展:混沌と希望
会期:2022年5月14日(土)〜2023年5月7日(日)
会場:中村キース・ヘリング美術館(山梨県北杜市小淵沢町10249-7)
開館時間:9:00-17:00(最終入館16:30)
料金やアクセス等についての詳細はこちら




2月2日〜6月11日
ヴォルフガング・ティルマンス「Moments of Life」展

 2000年にターナー賞も受賞しているドイツを代表する写真家でオープンリー・ゲイのヴォルフガング・ティルマンスの写真展が、表参道の「エスパス ルイ・ヴィトン東京」で開催されます。
『GQ』誌の紹介記事によると「1980年代のポストパンク世代の若者や音楽におけるカウンターカルチャー、そしてゲイコミュニティを撮り続けた現代アートの雄」であり、「レイヴやパーティシーンなどにおける、人間のヴァルネラビリティ(脆弱性・脆さ)をテーマに、親しい友人から見知らぬ他人、著名人までを長年撮影してきた」方です。実は2000年代、ゲイ雑誌『バディ』などにもその写真集がたびたび取り上げられていました。極めて抽象的な作品や花や風景の写真なども多いのですが、今回は『GQ』誌で詳しく紹介されているように、ゲイピープルや男性の裸体にフォーカスした作品も複数、展示されるようです。

ヴォルフガング・ティルマンス「Moments of Life」展
会期:2023年2月2日(木)〜6月11日(日)
会場:エスパス ルイ・ヴィトン東京(東京都渋谷区神宮前5-7-5 ルイ・ヴィトン表参道ビル7階)
開館時間:11:00-19:00
休館日:ルイ・ヴィトン 表参道店に準ずる
入場無料

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