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レポート:いわてレインボーマーチ2023

初めて2days開催された「いわてレインボーマーチ2023」をレポートします。パレードだけでなく、1日目に行なわれたプラカード作りや講演会、東北六県のプライド団体の代表が一堂に会したトークイベントなども素晴らしかったです。

レポート:いわてレインボーマーチ2023

 いわてレインボーマーチ(以下IRM)は2018年に初開催され、初回にして160人もの方が参加して盛り上がりを見せましたが(レポートはこちら)、翌2019年には過去最高クラスと見られる大型の台風19号の接近に伴い、やむなく中止となり(なんと不運な…)、2020年はコロナ禍の影響で延期となり、2021年はオンライン開催となりました。昨年ようやく、念願叶ってリアル開催され、しかも「アイーナ・いわて県民情報交流センター」がレインボーカラーにライトアップされ、とても素敵でした(レポートはこちら
 そして今年、IRM2023は初の2days開催となりました(東北地方でも初です)。東北六県のプライドの代表が一堂に会して東北版「Pride 7」のような趣のトークセッションを行ない、アイーナや開運橋がレインボーに輝き、過去最高の170名が市内をパレードし…本当に素晴らしい2日間となりました。その模様をレポートします。


0日目(5月12日金曜日)

 盛岡駅で新幹線を降りて、改札を出てすぐ、駅ビル「FES'AN(フェザン)」の中にある「LUSH」に、今年もレインボーフラッグが掲げられていました。それだけでなく、レインボーカラーのソープなどとともに、東北のパレードのスケジュールを記載したボードが設置されていて素晴らしかったです。



 それから、昨年に続き、「アイーナ・いわて県民情報交流センター」の中の男女共同参画センターでLGBTQの啓発パネルや関連図書が展示され、また、アイーナの建物の外観がレインボーカラーにライトアップされていました。展示はいわてレインボーマーチとのコラボということで、プライド度はどういうことか、なぜいわてレインボーマーチを開催するのか、といった説明もありました。ほかにも「性的マイノリティは周りにいないのではなく、あなたにそう言えないだけ」「理解増進より差別禁止を!」といった言葉が素敵なイラストといっしょに展示されていたりもしました。




 

1日目(5月13日土曜日)

 初の2days開催となったIRM2023の初日、5月13日(土)は、たいへん爽やかなよく晴れた日でした。
 会場の盛岡市観光文化交流センター「プラザおでって」は、パレード会場であるもりおか歴史文化館前広場から、橋を渡った向かい側にある建物です。1Fの道に面したスペースにいろんな団体のブースが出展されていました。




 5Fのもりおか女性センター交流コーナーでは、もりおか女性センターのこれまでの取組みなどが展示されていて、加藤まいさんが立ち上げたという岩手大のLGBTQサークル「Poi」の紹介などもありました。


 同じ5Fの奥のほうのスペースでは、パレードに向けたプラカード作りのワークショップが行なわれていました。ダンボールを使い、厚みを活かしてプレゼントのようなデザインにしたり、グルーガンでリボンを貼り付けて立体的なプラカードにしたり、なかなか本格的で、素敵でした。同じテーブルで作業をしながら参加者のみなさんがお話したり交流を深めている様も、とてもいいなと思いました。




 
 午後、3Fのおでってホールで講演会&トークイベントが開催されました。


 最初に、もりおか女性センターの植田眞弘理事長からご挨拶がありました。「中高年男性はLGBTQへの理解がないというステレオタイプな見方があると思いますが、決してオヤジ世代が全部保守ではないです」とおっしゃっていて、本当にそうだなぁと思いました。

 続いて、今回IRMを共催している盛岡市男女共同参画室の推進室長の方が、5月1日に始まった市の「パートナーシップ・ファミリーシップ制度」について説明をしました。宣誓受領書は、盛岡市の市の鳥であるセキレイが2羽、いっしょに星を見上げる姿をデザインしたそうで(森優さんという方が手がけたそうです)、IRMのフライヤーなどもそうですが、盛岡の方は素晴らしいデザインセンスの方が多いなと感じました。「利用する方の幸せはもちろん、多様な方々への気づきになれば」というお言葉もよかったです。
 
 その後、松岡宗嗣さんが「パートナーシップ・ファミリーシップ制度がある暮らしのこれから」と題した講演を行ないました。LGBTQの基礎知識から、当事者の困り事、「パートナーシップ・ファミリーシップ制度」の意義、法的な権利がないことの問題、婚姻平等を求める運動、現在のLGBT法をめぐる動き、トランスヘイトなどについてお話しされました。「自治体レベルで絆創膏を貼っている」という表現がなかなか秀逸だと感じました。

 それから、東北のPRIDE団体が一堂に会してのトークセッションが行なわれました。IRMのりつさんがファシリテーターをつとめ、秋田プライドマーチ、みやぎにじいろパレード、やまがたカラフルパレード、ふくしまレインボーマーチ、そしてろうLGBT東北の代表の方が登壇、青森レインボーパレードはメッセージを代読というかたちでした。
 最初に、東北で初めてのパレードを開催した青森レインボーパレードのメッセージをお伝えします。「同じ東北のパレード、心からお祝い申し上げます。2014年4月、風でプラカードが飛ばないようにしながら3人でパレードを歩きました。からかう言葉、変態という言葉や、親御さんがお子さんに「見ちゃだめ」と言う言葉聞こえました。青森には差別などない、あんたがた目立ちないなら東京に行け、故郷を荒らすな、とも言われました。でも 私たちには黙っているという選択がなかった。少しずつ参加者も増え、なんとか毎年続けてきて、そのたびに物語が生まれ。撮影禁止だけど歩くことにしたとか、カミングアウトして親を連れてきた人もいました。毎日しんどくても、たった1日だけでも晴れやかな日があってほしいとの願いでパレードを続けます。これがLGBTQの未来へとつながる、勇気を与えるものとなるように」
 ふくしまレインボーマーチの方は、「true colors」(シンディ・ローパーのPRIDEアンセムのタイトル)をテーマとしていると語りました。「活動の多くは居場所づくりです。中学のとき、福島に仲間がいないと、孤立感を覚えていました。でも、各地で活動が生まれ、少しずつ変化してきました。まだ差別や偏見はあるし、居場所の安定を図ろうとしているけど、クローズドなミーティングなので、なかなか地域が変わることにつながっていかないということで、違う手法としてプライドマーチを開催しはじめました。昨年、初めて福島駅前を行進し、車の中から手を振ってくれたり、商店街にレインボーフラッグが掲げられているのを見て、地域にも支援的な姿が見えたのは、とても嬉しかったです。今はトランスヘイトが過激化していることもあり、大丈夫だよとメッセージを発していくことは大事だと思っています。ひとりじゃないよ、という呼びかけがすごく必要です。福島だけじゃなく、県外移住者にも発信しながら、県全体での支援のメッセージを目指します」
 秋田プライドマーチの方は、「ここにいるよ」というテーマを掲げていると教えてくれました。「昨年初めて歩きました。2回目も変わらないです。秋田に6年住んでいますが、ここにいていいよと言ってくれた人たちもいて。一方で、秋田を離れざるをえない人たちもいて。秋田県と秋田市でパートナーシップ制度ができて、昨年の最初のプライドのときから動きがありました。都市のようにならなきゃという焦りもありますが、土地柄を見つめて、地域の人と話しながら、秋田らしいプライドをつくっていきたいと思っています」
 みやぎにじいろパレードは、実行委員会形式で運営されていて、にじいろCANVASだけでなく、東北大学の団体や県北の団体なども参加しています。今年のテーマは「make our future」だそうです。「ロゴは七夕飾りをモチーフにデザインしました。宮城県はまだ制度づくりに動いていません。希望のある宮城になるために、パレードで訴えていきたいし、継続していきたいです。そして、先日の荒井秘書官の発言に対して「隣に生きてますが何か?」を宮城弁にしたのをキャッチフレーズにしていこうと思っています」
 やまがたカラフルパレードの池田さんは、「昨年、とにかく一生懸命、東北五県の姿を見て、パレードを開催しました。応援もいただき、ありがとうございます。なんでパレードやるのかとも言われて…。でも当日来てくれたり。地道にやっていこうと思っています」と語りました。同じく松井さんは、「アライの議員とともに昨年、初めてこの盛岡のパレードに参加して、パレード開催への思いを強くしました。直前にレズビアンの方が自死して…彼女が山形でパレードをやりたいと言っていて、その願いを叶えたいと。青森のようにたとえ3人でも、行動することで変えていけると信じています」と嗚咽を漏らしながら語りました(思わずもらい泣きしそうに…)
 ろうLGBT東北の代表の方は、「私はろうのゲイです。アライと一緒に手話の勉強会などをしています。LGBTQのろう者は数が少ないダブルマイノリティです。団体を立ち上げて9年になりました。各地のパレードに参加しています。地元の岩手でパレードが開催されたのはうれしかった。加藤さんのおかげ。職場でパレードの映像とともにカミングアウトしましたが、ふつうに対応してくれてうれしかった。ろう社会も変わってきています。手話も当たり前になるといいですね」と語りました。
 最後にIRMのりつさんが、「パレードでもほかの活動でもそうですが、性的少数者だけじゃなく他の様々なマイノリティのことにも取り組んでいけたらいいと思います。参加したい方が参加できる仕組みづくりを考えていきたいと思います。様々な障壁があるわけですが、それを取り除いていく作業が必要かと。個人の問題ではなく社会が障壁を取り除くべきだと思っています」と語りました。
 みなさんのお話を聞いていた松岡宗嗣さんは、「現場がどれだけ大事か。そこの人たちが変わらなければ社会は変わっていかない」「集まることって社会に対しての意味だけじゃなく、お互いにエンパワーしあうことでもある」といったコメントをしていました。
 同じ東北でも、それぞれの地域でカラーが異なるし、それぞれの事情があるし、考え方・やり方なども様々ありうるんだなぁと、あらためて思いました。何より、昨年、東北六県すべてでパレードが開催されて(それだけでも素晴らしいこと)、市の施設である結構ちゃんとしたホールで東北の7つのPRIDE団体が一堂に会してこのような形のトークセッションが開催されたのは素晴らしいことだと感じました。


 この日の夜、18時から、盛岡市のシンボルである「開運橋」がレインボーカラーにライトアップされました。18時時点ではまだ日が沈んでおらず、夕闇のなかにうっすらとライトが…という感じでした。夜の時間帯のキレイな写真はIRMの公式Twitterに載っていましたので、そちらをご紹介します。



2日目(5月14日日曜日)

 午前中は雨がパラついていて、ちょっと天気が心配だったのですが、集合時間の13時にはすっきりと晴れ上がり、見事なパレード日和となりました(こういうことってよくありますよね。パレードの「レインボーパワー」的なジンクスです)
 もりおか歴史文化館前広場には、カラフルなフラッグやのぼりがたくさん。外国人の方も見受けられましたし、実にいろんな方が来られていました。
 13時半のオープニングイベントでは、IRMの方や東北六県のプライドの代表の方、そして三沢基地の「Rainbow weasels」というGay Straight Allianceのグループがスピーチしました(6/25、NYなどでパレードが開催されるプライドデーに三沢基地内でパレードを行なうそうです)。Transgender Japanさんや、ダイバーシティラウンジ富山さんもスピーチしました。誰かがスピーチするたびに「Rainbow weasels」のみなさんがイエーイ!と拍手したりして盛り上げてくれていたのがいいなぁと思いました。それから、石川大我さんと立憲民主党の4名の議員さんが初めて党公認の横断幕を持って参加したほか、社民党の村田さんもスピーチしました。なお、すべてのスピーチに手話通訳と英語通訳がついていました(英語通訳の方、とてもいい仕事をしていました。拍手)







 さっと整列し、14時半、青空の下、パレードがスタートしました。
 パレードは、初回の時のようなフロート(トラック)がなく、先頭を行く実行委員の方々がメッセージを読み上げるというスタイルでしたが、2箇所くらい、スピーカーを持って歩く方がいて、音楽(リナ・サワヤマの
「This Hell」だったり)が聞こえてくる感じでした。それでも、スタッフさんの若々しさ、Tシャツのデザインのおしゃれ感などもあって、意気揚々とした感じや美しさ、明るさや晴れやかさを感じさせました。
 すでに盛岡でのパレードも3回目ということで、沿道の方などもフレンドリーで、親御さんがまだよちよち歩きのお子さんの手を持って振ってくれたり、おばあちゃんが笑顔で手を振ってくれたり、まあまあご高齢のお父さんが奥さんやお子さんに「LGBTQの人たちだね」と話していたりして、感慨深かったです。撮影禁止ブロックをゲイカップルと思しきお二人が歩いていたりもしました。今の政治状況に思うところがあって、という今年初参加の方もいらっしゃいました。いつものアライのお坊さん(2019年のNYのワールドプライドにも来られていた方です)も参加していました。












 盛岡城跡公園にゴール。しばらくしてクロージングイベントが行なわれました。
 実行委員会のりつさんは「岩手で過ごしていても、社会が変わってきていると感じます。まだ偏見や差別があり、辛い思いをしたり、孤立感に苛まれる方もいますが、「仲間たちもいるよ」と希望を持ってもらえたらうれしいです。これからも継続と連帯を。よろしくお願いします。ありがとうございました」と語りました。
 同じく紗彩さんは「私は2年前、16の時に運営に参加しました。そのときから変わらず言い続けているのは、「誰もが好きなものを好きと言える社会を」ということです。いま私の声を聞いてくれているあなたや、メディアを通じてパレードを見聞きしているあなたは「大切な存在」です。自分自身を愛すること。言葉の力を信じること」といったメッセージを読み上げました。
 最後に、みんなで集合写真を撮って、解散となりました。



★いわてレインボーマーチ2023のフォトアルバムはこちら


 
IRM2023を振り返って
 
 驚きました。5年前にIRMが始まったときは、今のような姿になるとは思ってもみませんでした。「続けることで変わっていく」と、どなたかもおっしゃっていましたが、本当にそうだと思えました。
 
 1日目のイベントは、とてもよかったと思います。
 地方で開催されるパレードの多くは、当日パーっと集まって、パレードをして、ゴールしてクロージングイベントの後、解散、という流れになることが多く、意外と参加者どうしが知り合ったり交流したりということがなかったりするのですが(IRMもこれまではそうでした)、「プラザおでって」で行なわれたプラカード作りのワークショップでは、同じテーブルの方どうしでお話ししたり、交流が生まれていて、アットホームで和気藹々とした雰囲気でした。展示スペースでも各地の団体の方たちが名刺交換したり、つながったりする場面も見受けられました。もっと直接的に、友達づくりや交流を目的としたイベントがあってもよいのではないかとも思いました(そういうお膳立てがあってはじめて他の参加者と話せるという方も結構いらっしゃると思います)
 
 東北のプライド団体が一堂に会したトークセッションは、大げさかもしれませんが、歴史的な出来事だったと思いました。そもそも昨年、東北六県のすべての県でパレードが開催されたということも感動だったのですが(ほかにそのような地方はないです)、さまざま苦労がありながらもパレード開催を実現した各県のプライドの代表の方たちが(東北ってめっちゃ広いので、集まるのもひと苦労だったりするのですが)今回、一堂に会し、このようにトークセッションを行なったということ、本当に感慨深かったです。東北版「Pride 7」のような趣のイベントだったと思います。拍手!です。
 
 アイーナのライトアップや展示などは盛岡市の男女共同参画センターが、1日目の「おでって」でのイベントはもりおか女性センターが共に開催していると思うのですが、このように、当事者だけだとできないようなことを市がコラボしてやってくださっている、運営の側に回ってくださっているというのも素晴らしいことだと感じます(ピンクドット沖縄は当初から那覇市と共催でしたが、まさか東北で、市がプライドイベントを共催するところが現れるなんて…)
 
 それから、これはぜひみなさんにお知らせしたいと思うのですが、盛岡市のゲイバー「幸六堂」のマスターさんがお店のTwitterアカウントでパレードを応援したり、1日目の会場のIRMのブースに立ち寄ってTシャツを買ってくださっていました。本当に素晴らしいです。
 ゲイバーに飲みに行ってるゲイリーマンの方たちのほとんどは、地元でパレードに参加するのは本当に勇気が要るし、難しいと感じていると思うのですが、こうしてお店でパレードを応援してくださることで、お客さんも「歩くのは難しいけど、ちょっと見に行ってみようかな」と思えたりすると思うんです。
 東北は保守的でLGBTQが生きづらく、当事者の方たちもカミングアウトできず、パレードにも参加しないというイメージがあるかもしれませんが、以前とはずいぶん変わってきていると思います(少なくとも変化の兆しを感じます)。同性パートナーシップ証明制度ができたり、市が公にLGBTQを承認し、支援するようになったことも大きいと思います。いつか東北で、2000年代のレインボーマーチ札幌のような、ドラァグクイーンやGOGOが乗ったDJフロートやゲイバーフロートで盛り上がり、市長さんが挨拶し、全国から大勢のゲイの方たちが旅行を兼ねて訪れるようなパレードが実現するかもしれません。決して夢ではないと思います。
 
 ともあれ、こうして、東北のプライドイベントが今年も幕を開けました。次は5月20日の秋田プライドマーチです。青森レインボーパレードが6月25日。それから、みやぎにじいろパレードが11月19日(日)に開催、とブースでアナウンスされていました。福島と山形は、おそらく昨年と同様、10月頃の開催になると思います。今年も東北六県のプライドパレードが晴れやかに開催され、各地のLGBTQの希望となることを願っています。

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