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レポート:広島初のレインボーパレード

6月10日(土)、広島市の祭り「フラワーフェスティバル」のメインイベント「花の総合パレード」に参加するかたちで、広島県初のLGBTQ+のパレードが開催されました

レポート:広島初のレインボーパレード

主催団体のご紹介
 
 2017年、人権週間に合わせ、広島城がレインボーカラーにライトアップという記事をお届けしたのを憶えている方もいらっしゃることと思います。今回のパレードを主催した広島県セクシュアルマイノリティ協会も、この歴史的な広島城ライトアップの実現に貢献していました。
 広島県セクシュアルマイノリティ協会は、2014年8月広島県福山市にて「かも?」Cafeびんごとして発足しました。「かも?」というのは、「自分は人とは違うかも」とか、「自分は◯◯かも?」と悩んでいる当事者やクエスチョニングの方などがアクセスしやすいように「かも?」というネーミングにしたんだそう。2015年からは福山市議会のLGBTQ関連の質問の傍聴に出かけたり、LGBTQやそうかもしれない人たちの居場所づくり、パネル展示、教育委員会への要望提出、市議選での候補者アンケートなどの活動をはじめ、そうしたなかで、アライを増やそう!ということで、レインボーのちょうちょをシンボルにした「レインボーバタフライプロジェクト」が生まれました(バタフライ効果という言葉があるように、小さな動きでも遠くまで大きく伝わっていくようにという願いが込められているそうです)。「レインボーバタフライプロジェクト」には、県知事や市長さん、東ちづるさんなど、たくさんの、様々な方からメッセージが寄せられ、市がレインボーバタフライのバッヂなど啓発グッズ作りを支援してくれるようになり、2016年、GAPがサポーターとなったTRP「東京レインボーコンペティション」にも採用され、TRPのブースでアピールしたり、2017年には「フラワーフェスティバル」にブース出展し、120を超えるちょうちょの形の紙にメッセージが書かれ、中国新聞に掲載されるなど、広がりを見せていきました。県庁舎で啓発パネルをしたり、「ヒューマンフェスタひろしま」に参加したり(2020年12月には清貴さんのライブや松中権さんらのトークショー、OUT IN JAPAN写真展なども開催されました)、県の「LGBTハンドブック」の制作に協力したり、県との連携も深めていきました。(これまでの取組みの詳細はこちらをご覧ください)
 そして今回、4年ぶりに開催される「フラワーフェスティバル」のメインイベント「花の総合パレード」に参加するかたちで、念願の広島県初のLGBTQ+のパレードを実現したのでした。


レポート:広島初のレインボーパレード

 6月10日(日)、快晴。青空が広がり、絶好のお祭り日和となりましたが、正直、前日のLGBT法案のことで気分は暗く沈んでいました。平和大通りの鶴見橋近くのパレード出発地点の辺りには、マーチングバンドだったり、ダンススクールだったり、いろんなコスチュームの方たちが集まり、ダンスの練習をしたり、パレードに向けて楽しそうにしていましたが、一向に気が晴れず…こんなに暗い気持ちでパレードを迎えたのは初めてでした。
 11時頃、お揃いの紫のTシャツを着た方たちがパレード出発地点に集まりました。Tシャツの胸のところにレインボーカラーのちょうちょが描かれています。腕にはレインボーカラーのシュシュのようなお花を着けています。今回は広島市を中心に活動するミュージシャン、ヤルキストさんの「好きなことで生きていこう」という曲に合わせ、簡単な振付をみんなで踊るというコンセプトでしたので、先生の指導でみんなで振付の練習をしていました。若い方たちが多かったのですが、松中権さんや、九州レインボープライドのあなたののぶゑさんの姿もありました。広島出身の当事者の方が帰省してパレードに参加していたりもしたそうです。
  
 11時半頃、パレードがスタート!
 ものすごい広さの平和大通りの両脇に何万人もの観衆がいて、テレビカメラもあったりする、圧倒的な注目度のなか、約60人のパレードの一行が、音楽に合わせて踊ったり、手を叩いたり、沿道に手を振ったりしながら行進しました(神戸のパレードのときと同様です)。フェスティバルの公式のアナウンスで、セクシュアルマイノリティ協会のみなさん、と紹介され、レインボーカラーの意味や、バタフライに込めた意味なども説明されていて、沿道で観ている方々に、趣旨が伝わるようになっていました。
 そういう、大きな通りで、たくさんの方が注目するなかでのパレードという感慨だけでなく、もう一つ、広島だからこその、特別な瞬間がありました。パレード終点近く、平和記念公園の前にさしかかった時です。被爆という痛ましい経験をした街の、人々の平和への祈りを捧げるモニュメントの前を、多かれ少なかれ差別やいじめを経験してきたLGBTQの、差別のない社会への祈りを捧げる人々のパレードが通りかかり、重なったとき、何とも言えない感動がありました。折しも先月、この広島で「全ての人々が性自認や性表現、性的指向に関係なく暴力や差別のない生活を享受できる社会を実現する」という首脳声明が発せられたばかりです。平和への祈りと多様性への想いが響き合ったと感じました。
 先頭を行く一人の男の子が、もう一人の男の子を肩車し、上に乗っていた男の子がレインボーフラッグを大きく振っていたのも素敵でした。
 沿道で、パレードには参加しなかったものの「gay」と書いたレインボー柄のTシャツを着て応援してくれていた方も見ました。
 そうしてパレードは、平和記念公園を過ぎた辺りで終了となり、みんなで集合写真を撮って、解散となりました。みなさんの額に汗がキラキラ光り、笑顔がはじけていたのが印象的でした。
 出発前はとても暗い気持ちだったのですが、すっかり晴れやかな気持ちに変わっていました。パレードはその地域に住む当事者の方たちへのエンパワーメントになるようなお祭りだと思うのですが、自分がいちばん励まされてるかもしれないな…と思いました。









 
 解散地点から少し戻って、パレードコース中ほどの企業ブースにお伺いしました。
 今回のメインスポンサーである良和ハウスさんのブースでは、朝、みんなが着るTシャツを配布していたのと、LGBTQの方でも安心して利用できる無料住宅相談会を実施していました。参加した方にはオリジナルのレインボーカラーをアレンジしたエールくんの絵がプリントしたラムネのつかみ取りという特典もプレゼント(絵柄が何種類もあって、手間をかけて作ってくださってると思いました)
 それからお隣りでは、資生堂さんもブース出展し、ジェンダーニュートラルな誰でも利用できるメイクレッスンを提供、ブース内にレインボーフラッグなども掲げてくれていました。
 お伺いできなかったのですが、翌日にはMeijiアライプロジェクト「Marble」もブース出展していたそうです。


 
 気温の暑さだけでなく、LGBTQを支援しようとするアライの熱い思いも伝わってくる、アツい広島でした。
 パレードの模様は中国新聞などでも報じられました。
 広島県セクシュアルマイノリティ協会のみなさん、パレードに参加されたみなさん、本当におつかれさまでした。

★パレードのフォトアルバムはこちら

 
【追記】
 今回、広島へはANAで行ったのですが、機内誌『翼の王国』(現在は電子版になっています)の井上慎一社長の言葉が、プライド月間に言及するもので、素晴らしかったです。
「容貌や所作が実に美しく細やかな性的マイノリティの知人に、ある時、何気なく「女性より女性らしい」と褒めたところ「井上さん、女性らしさって何?」と真顔で返されました。その時初めて、自分の中に「性に対するバイアス」があったことに気づき、衝撃を受けたのを覚えています。「女性らしい」「男性らしい」ということ自体がナンセンス、大事なのは「自分らしさ」だというのです。
 それ以来、「らしさ」とは、型にはめるものではなく、自分らしく自由であることだと考えるようになりました。「多様性」は「自分らしさ」の集合体、違いから新しい発見をして、互いに尊重し合うことの素晴らしさ。実際、違いを楽しむという経験は、私自身を一回り大きく成長させてくれました。
 6月はプライド月間です。LGBTQ+の権利を啓発する活動やイベントが開催されます。世界が多様性について考え、つながり合える貴重な機会になればと思います。
 多様性はみんなが輝ける「ワンダーランド」、ANAグループはこれからもより多くの多様なつながりを創り出し、紫陽花の様に色とりどりに咲き誇れる世界をつくっていきたいと考えています」

 このプライド月間、かつてないほどLGBTQコミュニティへの攻撃やあからさまな悪意が横行していて、傷ついたり落ち込んだりしている方たちも多いと思いますが、こうして、ANAのトップの方が、機内誌でこのようなメッセージを発しているということは、一つの希望です。国会の中の一部の政治家や、一部のアンチの人たちはバックラッシュに走っているかもしれませんが、日本社会はここまで支援的に変わったのだし、大きな流れで見れば、必ずLGBTQの権利の平等や公正ということが実現していくはずです。

(取材・文:後藤純一)

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