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レポート:20周年だよ特別上映 クィア・オムニバス映画「Queer Boys and Girls on the SHINKANSEN【完全版】」
4月27日に開催された「20周年だよ特別上映 クィア・オムニバス映画『Queer Boys and Girls on the SHINKANSEN【完全版】』」のレポートをお送りします
(『Queer Boys and Girls on the SHINKANSEN』より 写真:田口弘樹)
2024年4月27日、神保町の「ネオ書房@ワンダー店」でノーマルスクリーン主催の映画上映&トークイベント、「20周年だよ特別上映 クィア・オムニバス映画『Queer Boys and Girls on the SHINKANSEN【完全版】』」が開催されました。20年前の映画祭でこの11組の方たちが参加した短編オムニバス映画作品が上映されたときの空気感がよみがえり、なんともいえない感慨がありました。レポートをお届けします。
(取材・文:後藤純一)
『Queer Boys and Girls on the SHINKANSEN』は2004年、現在も精力的に映画制作や映画出演をする今泉浩一さんと岩佐浩樹さん(habakari-cinema+records)の呼びかけによって11組の自主映画作家/写真家/漫画家/ドラァグ・クイーン/ダンサー/詩人/アートディレクターなど活動領域も様々な個性が集い、1組5分という条件のもとでクィアをテーマに製作された短編のオムニバス作品です。2004年の東京国際レズビアン&ゲイ映画祭で上映されました。
GWの初日、会場にはたくさんの人たちが詰めかけ、用意された椅子席はほぼほぼ埋まっていました。BGMが昭和歌謡で(山本リンダの「こまっちゃうナ」とか)素敵でした。16時に今泉さんがご挨拶し、上映が始まりました。
オープニングはおもちゃの新幹線がおうちを飛び出して街中を走るかわいい映像やナレーション。
山手線と京浜東北線というしばらく同じ方向で走る電車の同じ位置でホームをはさんで目と目が合った2人のゲイリーマンの間に、イケてる彼と知り合いたいという思いが生まれ…という『パラレル・コンタクト』、わざとレズビアン映画やゲイ映画を目立つように並べたりしているレンタルビデオ屋さんでバイトしている女の子が、『GO fish』をレンタルした女の子に話しかけ…という『鼻歌をうたう私と颯爽とあるく彼女』など、日常生活の中でのゲイやレズビアンの出会い、甘酸っぱい恋の始まりを描いた短編が初めに来ていました。そして、発表当時1回のみの上映でお蔵入りになっていた畑智章さんの『The Untitled Slide Show』(クラブの楽屋のドラァグクイーンの姿を写し出した素敵な写真たち)や、ジャンジさんの『JUICY!』(みんなの知ってるドラァグクイーンやDJがたくさん登場)のようなクラブシーンの作品、当時ゲイ雑誌などで活躍していた人気モデルさん2人を起用した田口弘樹さんの『かがよひ』、いろんなエフェクトを駆使した凝った映像でゲイの男の子たちのセックスを描いた康延年さんの『KEY』、今も現役で活躍するセックスワーカーの野原周作さんの魅力が炸裂する今泉浩一さんの『キスしてほしい』などは目の保養になりましたし、セリフなしでクィアな女の子や男の子たちの何気ない日常を描いた『町27』は印象的で、レズビアンのセーファーセックスをラップに乗せてダンスとともに表現した『wrap! rap!-10cs3-』などはユニークで面白かったです。実写だけでなく、漫画家のタカサキケイイチさんによる、柔道部や野球部の男子高校生をモチーフにした青春恋愛アニメ作品『199X年の必殺技』もありました。最後を飾っていたのはアキラ・ザ・ハスラーさんがレインボーマーチin札幌の公式パンフレットに寄稿した文章を映像化した『バイバイ・オーバー・ザ・レインボウ』でした。
そしてオープニングから続くおもちゃの新幹線の映像が、このバラエティ豊かな作品たちのオムニバスをかわいらしく締めくくっていました。
20年ぶりにこの『Queer Boys and Girls on the SHINKANSEN』を観て、本当にたくさんの友人や知人が登場していて懐かしさがこみ上げるとともに、あの頃のパレードやクラブパーティやゲイインディーズミュージックシーンがそうであったように、「青春」というか「熱さ」というか、コミュニティの若いみんなが知恵や感性や心意気を持ち寄って何か素敵なことをやろう!という意欲に燃えていた時代の空気感が思い出されました。映画祭もそういうイベントの一つで、今よりもっとたくさんコミュニティの方たちが集まって熱気を帯びていたように記憶しています。世間は全然LGBTQフレンドリーじゃなくて、パレードをやるだけでも本当に大変だったし(2004年は東京では開催されませんでした)、HIVのことなども深刻で、課題は山積みだったけど、未来はもっとよくなるし、もっとよくしていこうという「希望」が感じられた時代でした。リブ的なことにしても、HIVのことにしても、一つひとつのイベントに意味が感じられたし、僕なんかは『バディ』でそういうイベントを取材したり、aktaのデリバリーボーイをフィーチャーしたり(『かがよひ』に主演しているRYOYAくんもデリバリーボーイで、『バディ』の表紙も飾りました)、コミュニティのいろんな人たちとつながって、いろんな「素敵」を紹介して、っていう生活が(忙しかったけど)本当に充実してたなぁと思い出したりもしました。
* * * * * *
上映後、休憩時間をはさんでトークセッションが行なわれました。
聞き手として、日本のクィア演劇に関するイベントも行なう飛田ニケさんが登場。今回の映画が上映された時にはまだ8歳とかだった方です。
語り手として監督のiriさん、ジャンジさん、アキラさん、田口さん、そして、企画者でもある今泉浩一さん&岩佐浩樹さんも登場しました。
飛田さんは、当時、撮影に使っていたデジタルハンディカムの話から始め、今泉さんたちが、このようなデジタルビデオが登場してようやく気軽に映画を撮ることができるようになったと語りました。
iriさんは、当時はレズビアンの日本作品が少なく、飢えていたこともあり、自分で撮り始めた、この作品が4本目くらいだった、今観ると恥ずかしい、と語っていました。「当時、今泉くんと、ヘテロ男性に好まれるキャラや悲劇的なお話ばかりだったけど、コミュニティの中で日常を観てみたいよね」と話していたそうです。
それから、この『Queer Boys and Girls on the SHINKANSEN』が完成したのが映画祭の当日だったという衝撃的なお話や、様々な苦労を経て上映にこぎつけた今泉さんと岩佐さんが上映後にロビーの真ん中で号泣していて、今泉さんにサインをもらいたい人とかも含めて誰も近づけなかったというエピソードも明かされました(青春ですね)
映画祭では以前から作品の公募・コンペが行なわれていましたが、当時は(映画を撮るということの機材面でのハードルが高かったということもあるのでしょうが)応募する人が少なく、今泉さんとiriさんは「これを観て、自分も作れると思う人が出てくるといいな」という気持ちで作っていたそうです。お二人は海外のクィア映画祭にも行っていて、海外ではこんなにあるのに、と感じ、そのことも動機の一つとなったようです(なお、iriさんは2007年にアジアンクィア映画祭を立ち上げています)
ここでジャンジさんとアキラ・ザ・ハスラーさんが登場。
ジャンジさんは「表現したいものが感じられましたね。音もよかったです」と感想を語り、アキラさんは、2004年のLGBTQの状況を回顧しながら「クィアカルチャーって自分たちの傷にフォーアカスしてる作品が多いと思うけど、今日のはそうじゃなかった。面白かったです」と語りました。
今泉さんが、アキラさんの『バイバイ・オーバー・ザ・レインボウ』のテーマである戦争のことに触れて、ジャンジさんが湾岸戦争に反対するピースフルなデモに行ったことを話しました。
飛田さんは、「2004年はそういう社会状況であったわけですが、この作品には明るさが感じられます」と語りました。「構成がよかった」「ゲイのクラブカルチャーやHIVのことにつながりがあることや、傷つき、差別の中でいかにして集まるのかということを映し出している」とも。
アキラさんは(90年代からHIVのことに取り組み、aktaでも中心的に活躍していた方ですが)「クラブに踊りに来る人たちがHIVのことで傷つき、だからこそ矢面に立ってコミュ二ティでも動いていたし、HIV以外のことでもクラブの人は早かったしアクティブだったと思う。捉え方が「中にいる者」のそれ」と語りました。
飛田さんは、今泉さんが以前「ポルノと政治は密接だ」とおっしゃっていたことに触れながら、周作さんという実際のセックスワーカー(ウリ専)をやってる方が出演していたことの背景について、今泉さんにお聞きし、今泉さんは「周作に会えて本当にラッキーだった。あの作品は二人で作ったようなもの」とベタ褒めし、当時、ウリ専をやってて顔出ししてる人がほとんどいなくて、出演してくれる人がなかなか見つからず、大阪まで行って実際にお客として周作さんに会って、お願いしたところ、快諾してもらえたと明かしました(さすがは周作さん。人としての器の大きさを感じさせます)
その後、監督の田口さんが登場。自身の作品について「ゲイ雑誌で伝えきれてないものを表現したかった」と語りました(田口さんは『G-men』誌で活躍していたフォトグラファーです)
今泉さんは、田口さんの写真が好きで、お声がけし、『SHINKANSEN』のあと、『初戀 Hatsu-Koi』のスチール写真の撮影もお願いし、その時は自分で映像を撮っていたものの、田口さんのほうが映像に詳しいことがわかり、『家族コンプリート』以降は映像の撮影をお願いするようになった…と話していたところで時間がきて、トークセッションが終了しました。
懐かしい方がたくさん出ている映画を観て、懐かしい方にたくさんお会いできて、よかったです。素敵なGWのスタートになりました。企画してくださったノーマルスクリーンさんに感謝!です。
(なお、ノーマルスクリーンはクィア映画をいろいろ紹介したり、上映会を開催したりしています。ぜひ公式Xアカウントをフォローしてみてください)
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