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レポート:年忘れお楽しみイベント「gaku-GAY-kai 2023」

年末恒例のお楽しみイベント「gaku-GAY-kai 2023」。今年は会場を二丁目の「スターフィールド」に移して開催されました。笑いとゲイテイストがあふれる楽しい一夜をレポートします

レポート:年忘れお楽しみイベント「gaku-GAY-kai 2023」

年末恒例のお楽しみイベントで、1997年から毎年開催されてきたご長寿イベントでもある「gaku-GAY-kai」が、会場を二丁目の「スターフィールド」(旧タイニイアリス)に移して開催されました。第一部のお芝居は贋作シェイクスピアシリーズ第7弾で、女装男装のコメディを新宿を舞台に翻案した『贋作・お気に召すまま』。第二部ではここでしか見られないパフォーマンスの数々が繰り広げられ、笑いとゲイテイストがあふれる楽しい一夜となりました。レポートをお届けします。
(後藤純一)
 

 12月29日(金)18時過ぎ、二丁目仲通りに面した地下の劇場「スターフィールド」へ。以前ここは「タイニイアリス 」という劇場で、私は20年前に大塚隆史さん&青山吉良さんの『違う太鼓』を観たことがあって、訪れるのはたぶんそれ以来だと思います。リニューアルした「スターフィールド」は、小さいながら、照明設備も充実していて、いいハコだと思いました。トイレも2人入れるようになっていて、それほど待つこともなく。また、出てすぐ隣がシャインマートなので、飲み物やなんかを買ったりタバコを喫ったりもできて、便利です。
 お客さんが続々と詰めかけ、18時半には満席状態に。関根さんが開始のご挨拶をして、「gaku-GAY-kai 2023」がスタートしました。

 第一部の『贋作・お気に召すまま』は、シェイクスピアの原作を限りなく忠実に再現してるのですが、地名が歌舞伎町だったり御苑の森だったりに変えられているのと(いつも通りです)、再現が難しい(あるいは演じると長くなる)部分を紙芝居で見せたりという工夫がなされていたりして、随所に笑いも盛り込まれていて、飽きずに楽しめました。
 ざっとこんなストーリーです。
 歌舞伎町のフレデリックは兄である公爵を追放してその地位を奪いましたが、公爵の(生まれ性は男性ながら女性として暮らしている)娘・ロザリンドは手元に置き、自分の(生まれ性は男性ながら女性として暮らしている)娘・シーリアとともに育てていました。サー・ローランドの三男であるオーランドーは、父サー・ローランドのの遺産を相続した長兄・オリヴァーによって過酷な生活を強いられています。オーランドーは公爵主催の相撲大会で、フレデリックに使える力士・チャールズを破って優勝し、その場合でロザリンドと出会い、二人は互いに一目惚れします。しかし、公爵から突然の追放を言い渡されたロザリンドは、身分を隠すために「男装」し、シーリアと道化・タッチストーンを連れて、追放された父が暮らすという御苑の森へ向かいます。オーランドーもまた、自らの運命を切り開くために兄の元を離れ、行き着いた御苑の森で、公爵に助けられます。男装したロザリンドは森に暮らす羊飼いたちの恋愛騒動に巻き込まれます。また、オーランドーはギャニミードと名乗る男装したロザリンドの正体に気づかず、彼(彼女)に恋の告白の稽古相手になってもらいます。兄オリヴァーは森で危ない目にあったオーランドーと話し合って改心し、地元の娘・アリーナ(に身をやつしたシーリア)と恋に落ち、結婚して羊飼いとして暮らすことを決意します。兄を討つため森に入ったフレデリック公爵もまた改心し、奪った地位と領地をすべて返上します。ロザリンドは女性(女装)の姿に戻り、結婚の神ハイメンからの祝福を受け、ロザリンドとオーランドー、オリヴァーとシーリア、タッチストーンとオードリー、羊飼いシルヴィアスとフィービーという何組もの恋人たちの結婚式が執り行なわれ、大団円を迎えるのでした。
 いつものようにドラァグクイーンのエスムラルダさんをはじめ(今回はモイラさんは出ていなかったのですが)石関さん、オバマさん、坂本さんが女装していたほか、この劇で最も居丈高なフレデリックを演じていた中嶌聡さんが後半、女装してアメリカンな田舎娘のオードリーを演じていたのも素敵でした(ギャップがすごかったです)。原作では「娘」であるローランドとシーリアを女装で演じていたため、ゲイだけどトランス女性的な感じで女性を演じていて、でも女性だとバレないように「男装」して森に行くという、ジェンダーが幾重にも装われている複雑さも「gaku-GAY-kai」ならではだと思いましたし、逆にオリヴァーは和田好美さん、力士や田舎の男の子の役は木村佐都美さんという女性が男装して演じていたので、オリヴァーとシーリアのカップルは男装した女性と女装した男性という完全性別逆転カップルになっていて(しかもオリヴァーが『パタリロ!』のバンコランのような風貌で)とても面白かったです。そしてオバマさんの存在感やオーラが本当に「強め」で、一挙手一投足から目が離せませんでした(セリフがない、ただ佇んでいるような時でも目ヂカラで演技したり。いちいち笑わせてくれました)









 休憩後、第二部がスタート。今年も岸本さんがゴージャスないでたちで司会を務めてくれました。
 トップバッターはアイハラミホ。さんの「驚愕!ダイナマイトパワフル歌謡パフォーマンスしょー」。あの『Wの悲劇』をモチーフにしたり、ますますドラァグテイストというか二丁目ノリが際立ち、楽しく魅せてくれました。

 関根信一さんの「ドラァグクィーン ストーリータイム」は、2021年に「座・高円寺」で上演した短編劇「PINK ピンク」を朗読するものでした。情景がありありと目に浮かぶようなリーディングで、内容も素晴らしく、お客さんも熱心に聞き入っていました。

 水月モニカさんの「クイアリーディング」は、オスカー・ワイルドの名作『幸福な王子』。この殺伐とした御時世にあらためてこのお話を聞くと、幸せとは何かと考えさせられますし、沁みますね。

 佐藤達さんの「かみしばい 僕の話をきいてください」は、秋田での子ども時代のちょっとした冒険を描いたほっこりするお話でした。佐藤さん、豚汁のことを「ぶたじる」と言っていて、うちの田舎(津軽)と同じだなぁと懐かしく感じました。

 昨年はお休みだったのですが、今年はジオラママンボガールズが帰ってきました。「諸行無常」というタイトルで、恋に破れた女性のやるせない心情を歌った昭和歌謡(どこから見つけてくるのでしょう。レコードのザラザラ音も入った音源でした)を使い、ジオマンらしさ全開で楽しませてくれました。

 中森夏奈子さんの「スパンコール・チャイナイト vol.15」。今年を代表する名曲「アイドル」と「地球儀」を明菜として熱唱・熱演してくれました。今年は本家の中森明菜さんが「北ウイング -CLASSIC-」を発表したりYouTubeチャンネルを開設したりという進展が見られたので、夏奈子さんもとても機嫌よくおしゃべりしてました。明菜ファンとしては最高にうれしいステージでした(特にファンじゃない方も絶対に楽しめます)

 エスムラルダさんの「今年もアタシ、第二部で何かやろうかねえ」は、魔法使いサリー(魔法の筒から愛と希望を取り出し、お客様にプレゼント)と、ドレミの歌(お客様をステージに上げて、ド、レ、ミ…と書いた札を上げ下げしてもらう)という鉄板のショーでした。今回のお客様はみなさんとても素直で、エスムラルダさんもやりやすそうでした。最後に恒例の「エスムラルダdeマンボ」を歌い、出演者がみなさんステージに上がり、フィナーレとなりました。


★「gaku-GAY-kai 2023」のフォトアルバムはこちら

 というわけで、(たぶんほとんど、もしかしたら一度も欠かさずに参加している)「gaku-GAY-kai」を今年も堪能できて、よかったです。たくさん笑って、よい年忘れとなりました。お客さんがノリよく拍手したりコールしたり、積極的に楽しもうとする姿勢も伝わってきて、温かな、幸せな気持ちになれました。これで気持ちよく新年を迎えることができそうです。
 
 なお、「gaku-GAY-kai 2023」は30日も開催され、おそらく昼の部、夜の部ともに当日券で入れます。もし興味のある方は、お気軽にお出かけください(詳細はこちら
 
 
【追記】2024.1.5  
早くも第一部『贋作・お気に召すまま』の記録映像がYouTubeに上がっていました。どうぞご覧ください。

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