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2025年夏の舞台作品

2025年6月〜8月に上演される舞台作品をご紹介。ドラァグクイーンに憧れる男子高校生を描いたミュージカル『ジェイミー』、『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』のジョン・キャメロン・ミッチェルの来日公演、伝説の漫画『日出処の天子』を能 狂言にした舞台など、多彩な作品が上演されます

2025年夏の舞台作品

(ミュージカル『ジェイミー』2021年公演より)


 YouTubeやNetflixを観たりTVアニメや映画やドラマを観たりするのも楽しいですが、舞台上の俳優の肉体美や息遣い、臨場感を生で感じ取れる演劇(やミュージカル、バレエ、ダンスパフォーマンスなど)の魅力も格別なものがあります。この特集では、2025年6月〜8月に上演されるLGBTQ(クィア)を描いた舞台作品をまとめてご紹介いたします。ドラァグクイーンに憧れる男子高校生を描いたミュージカル『ジェイミー』、『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』のジョン・キャメロン・ミッチェルの来日公演、伝説の漫画『日出処の天子』を能 狂言にした舞台など、実に多彩な作品が控えています。この夏、生の舞台の熱さをぜひ、お楽しみください。
(最終更新日:2025年5月7日)
 


6月9日〜6月30日 東京
ミュージカル『梨泰院クラス』

 2000年にNetflixで配信されて大ヒットを記録した『梨泰院クラス』。日本では原作Web漫画『六本木クラス〜信念を貫いた一発逆転物語〜』が作られ、それをもとに『六本木クラス』としてテレ朝でドラマ化もされました。
 父親を殺された復讐を誓い、梨泰院の街で成功を目指して駆け上がっていくセロイが主人公ですが、セロイによって人生を救われたトランス女性のヒョニというサブキャラクターが登場するところがクィアです(日本版ドラマでも綾瀬りくというトランス女性が登場していました)
 そんな『梨泰院クラス』をミュージカル化しようということになり、日本・韓国・アメリカのクリエイターが集結し、実現しました。トランス女性のヒョニの役は土井ケイトさんが演じます。

ミュージカル『梨泰院クラス』
2025年6月9日(月)〜6月30日(月)
東京建物ブリリアホール
原作:チョ・グァンジン『梨泰院クラス』
脚本:坂口理子
歌詞・構成:イ・ヒジュン
音楽:ヘレン・パーク
演出:小山ゆうな
振付:カイル・ハナガミ
出演:小瀧望、和希そら、梅澤美波、新原泰佑、土井ケイト、吉田広大、秋沢健太朗、浅野雅博、佐戸井けん太ほか
 


 
6月18日〜6月22日 東京
ろくでなしコーラス2025

 場末のミックスバーを舞台に、ゲイや“ニューハーフ”など多様なセクシュアリティの登場人物たちがママさんコーラスへの参加を目指して奮闘する様子を描いた歌ありダンスあり、爆笑あり涙ありのエンターテイメント・コメディ作品だそうです。観てみないと何とも言えないのですが、これまでにありがちだったゲイをバカにしたりオネエと同一視したり、ステレオタイプな見方で描いた残念な作品なのではないかという一抹の不安が拭えません…(意外と不快な思いをすることもなく安心して楽しめる作品かもしれませんし、わかりません)。とりあえずこういう舞台がありますよ、というお知らせに留めておきます。
 
ろくでなしコーラス2025 
2025年6月18日(水)~22日(日)
浅草花劇場
脚本:田中大祐
演出:安藤亮司
音楽:柏原収史
出演:古谷大和、瀬下尚人、グァンス(超新星)、栗原大河、チャン・ユジュン(TRITOPS*)、田淵累生、花井貴佑介、テジュ、長田健一、矢口秀、甫滄一郎




7月9日~7月27日 東京
8月1日~3日 大阪
8月9日~11日 愛知
ミュージカル『ジェイミー』

 ドラァグクイーンとしてプロムに出場したいという夢を抱くゲイの高校生ジェイミーが、教師の反対や無理解な父親との確執など多くの困難を乗り越えながら、夢に向かってあきらめずに奮闘する姿に勇気と感動をもらえる、最高にハッピーなポップ・ミュージカル『ジェイミー!』。BBCのドキュメンタリー『Jamie:Drag Queen at 16』に基づく作品で、2017年に英国で舞台『Everybody's Talking About Jamie』が初演され、2021年には映画化もされました。その舞台の日本版は2021年に初演されましたが、今回2度目の上演となります。三浦宏規さんと高橋颯さん※(WATWING)がWキャストで主演を務め、7月から8月にかけて東京、大阪、愛知で上演。本当にいい作品ですので、ぜひ。

※高橋颯の「高」ははしご高が正式表記

<ストーリー>
 英国・シェフィールドに暮らす16歳の高校生ジェイミー・ニューは、将来ドラァグクイーンになることを夢見ているゲイの男の子。母親やその親友・レイ、親友のプリティ、ドラァグ用品店の店主などが応援してくれて、真っ赤なヒールやドレスもプレゼントしてもらい、プロムにドラァグクイーンとして出席しようとしますが、理解のない父親や教師、クラスの男子などから投げつけられた心ない言葉に傷つき、何度となく挫折しそうになります。果たしてジェイミーはドラァグクイーンになれるのか……

ミュージカル『ジェイミー』
音楽:ダン・ギレスピー・セルズ
作:トム・マックレー
日本版演出・振付:ジェフリー・ペイジ
翻訳・訳詞:福田響志
出演:
ジェイミー・ニュー:三浦宏規 / 髙橋颯(WATWING)
マーガレット・ニュー:安蘭けい
プリティ:唯月ふうか / 遥海
ディーン・パクストン:神里優希 / 吉高志音
ほか
【東京公演】
期間:2025年7月9日(水)~7月27日(日)
会場:東京建物 Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)
チケットはこちら
【大阪公演】
期間:2025年8月1日(金)~3日(日)
会場:新歌舞伎座
【愛知公演】
期間:2025年8月9日(土)~11日(月祝)
会場:愛知県芸術劇場 大ホール



7月19日〜21日 東京
7月23日 大阪
ジョン・キャメロン・ミッチェル ミッドナイト・レディオ ‐ザ・ヒストリー・オブ・ヘドウィグ‐

 東ドイツに生まれ、アメリカとロックスターに憧れ、米兵と結婚するため性別適合手術を受けるも、「アングリーインチ(怒りの1インチ=3cm弱)」が残ってしまったヘドウィグが、プラトンの『愛の起源』に描かれたような「魂のカタワレ」を探して全米各地を巡るというロック・ミュージカルとして97年からオフブロードウェイでロングランヒットを記録した『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』。2001年に映画化され、サンダンス映画祭最優秀監督賞&最優秀観客賞やベルリン国際映画祭テディ賞などを受賞しました。舞台の日本版は2004年から三上博史さんや山本耕史さん、森山未來さんらによって何度となく上演され、熱い支持を得てきました。そんな『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』を作曲家のスティーヴン・トラスクとともに作り、主演したのが、ゲイのジョン・キャメロン・ミッチェルです(彼は2006年に『ショートバス』というとんでもない名作映画も撮っています。掛け値なしに素晴らしいアーティストです)
 このたび、ジョン・キャメロン・ミッチェルが『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』の誕生秘話やビハインドストーリーを語り、自身で楽曲を歌いつつ、その軌跡を振り返る「JOHN CAMERON MITCHELL Midnight Radio -The History of Hedwig-」という公演の初来日が実現することになりました。来日に向けてミッチェルは「日本の皆さん! 私ですよ! ジョン・キャメロン・ミッチェルです! 長い間お会いしてないですね。7月に日本へ行って、ヘドウィグが誕生するまでのストーリーについてのショー『ミッドナイト・レイディオ -ザ・ヒストリー・オブ・ヘドウィグ-』を開催します! 作曲家のスティーブン・トラスクと飛行機で出会った話や、スクイーズボックスというドラァグ・パンクロック・クラブでヘドウィグを制作した話などもします。素敵な衣裳も着ますよ! なんと6つの衣裳が1つの衣裳になっているんです! 素晴らしいプロジェクションもあります。哲学的な背景やどう制作に至ったかなど、とうとうヘドウィグがどうやって世界に産み落とされたかをお話しする時がきました。私もとても楽しみです。東京と大阪で6公演開催しますので是非お越しください。もうすぐお会いしましょう!」とコメントしています。
 ヘドウィグのファンの方はもちろん、そうでない方も、ぜひジョン・キャメロン・ミッチェルに会いに行きましょう! 中村 中さん、浦井健治さん、山本耕史さんのゲスト出演も決まったそうです。

ジョン・キャメロン・ミッチェル ミッドナイト・レディオ ‐ザ・ヒストリー・オブ・ヘドウィグ‐ 
出演:ジョン・キャメロン・ミッチェル
【東京公演】
2025年7月19日(土)~21日(月祝)
東急シアターオーブ
【大阪公演】
2025年7月23日(水)
NHK大阪ホール




8月7日~10日 東京
-能 狂言-『日出処の天子』

 山岸凉子さんの『日出処の天子』は雑誌『LaLa』で1980年4月号から1984年6月号まで連載された漫画で、厩戸王子(聖徳太子)の同性愛を描いた先進的にして伝説的な作品です(こちらの記事で山岸さんは「ジェンダーや性同一性障害といった言葉も知られていない時代に、同性愛の要素がある物語を連載することで、編集部とは揉めた。でも私は『相手が誰だろうと愛することの尊さを、誰にはばかることなく描くべき』と思っていた」と述懐しています)。その『日出処の天子』が野村萬斎さんの演出・出演で能 狂言として上演されることになりました。10代の頃に原作を読んだという萬斎さんは「当時の私にとってはショッキングな内容に驚きつつ、とても惹き込まれた」「原作を読んで『ぶっ飛んでいる』と感じた。飛躍を描くことは能 狂言の真骨頂だと思います」「飛鳥の都に生きた人々にとっては鎮魂になり、我々にはカタルシスを与える作品になれば。山岸先生のファンも、今回初めてこの作品に触れる方もうならせたい」と語っています。能や狂言をご覧になった方がない方、この機会にいかがでしょうか。
 
-能 狂言-『日出処の天子』
2025年8月7日(木)~10日(日)
二十五世観世左近記念観世能楽堂
原作:山岸凉子「日出処の天子」
監修:大槻文藏
演出:野村萬斎
出演:野村萬斎、福王和幸、大槻裕一、鵜澤光、谷本健吾、石田幸雄、茂山逸平、深田博治(9日のみ)、高野和憲、観世淳夫、大槻文藏

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