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毎日新聞で性同一性障害について連載

2010年06月15日

 毎日新聞が全国の公立校を所管する都道府県と政令市の計66教委を対象に、性同一性障害(GID)の児童・生徒から学校へ相談があったかどうかを調査したところ、15都府県と3市の教育委員会が把握していることがわかりました。学校が教育委員会に報告していない例や、教諭に打ち明けられない子もいるため、今回わかったのはごく一部とみられていますが、本人の望む性別での登校を認めた埼玉県や鹿児島県の公立校のケースだけでなく、悩みを抱えているGIDの子どもが全国にいることが初めて明らかになったといいます。

 文部科学省は今年4月、学校現場に医療機関との連携などによる十分な配慮を、教育委員会には学校への情報提供や指導・助言を求める通知を出しました。それに対し、「どの診療科に相談すべきかさえわからない」「専門医のいない地方で独自の対応は難しい」など、46教委が専門的な情報の乏しさを指摘。また、国のガイドライン(33委)や他校での対応例(31教委)を求める声も目立ちました。

 今回の調査では、人権に配慮し積極的に対応する教委があった一方、「ごく一部の事例に過ぎない」「多くの教職員は多様な性のあり方を受け入れることに抵抗がある」など、未だに偏見が根強い現場の実情が浮き彫りになりました。  

 

 これにとどまらず、毎日新聞は、「GIDに対する社会の理解は徐々に広がってきたが、18歳未満へのケアは置き去りにされている」として、「境界を生きる:子どもの性同一性障害」という連載をスタートさせました。

 西日本の小さな海沿いの町に住む高1の男の子(15)は、今年初めから、親に隠れてインターネットで個人輸入した女性ホルモン剤を飲んでいます。日々男っぽくなっていく体がつらくてたまらなかったからです。苦痛を感じ始めたのは小学校高学年で、中学に進むと男子の制服を着ることに耐えられず、不登校になり、親に打ち明け、一緒に専門医を受診し「早く体を女性化したい」と訴えたが、医師は聞いてくれませんでした。

 しかたなく、インターネットでフィリピンの安いホルモン剤を見つけ(280錠で1万円)、お年玉を口座に振込みました。副作用の恐れがあることは知っていたので、1日1錠と決めています。微熱やだるさを感じ、不安になったこともあるが、やめられなかったそうです。

 こうしたケースは決して珍しくはないそうです。はりまメンタルクリニックを受診した18歳未満のGID男子21人中7人が服用しており、埼玉医科大でも3人に1人の割合です。

 背景には、日本精神神経学会の治療ガイドラインが、ホルモン療法を18歳以上と規定していることがあります。思春期に抱く性別への違和は一過性である場合があり、18歳未満の児童は医療行為への自己決定能力が不十分だから、という理由です。

 少年らが自己流で服用している薬は女性の更年期障害のホルモン補充にも使われますが、男性を女性化するにはその十数倍必要な時もあります。埼玉医科大の石原理教授は「人によって血栓症など致命的な副作用が出かねず、素人判断では危険。また、GIDと確定していない人が思い込みで飲み続けると、永久に精子を作れなくなる」と語っています。また、輸入薬に詳しい木村和子・金沢大教授は「個人輸入薬には本来の成分と全く違うものもある」と警鐘を鳴らします。

 それでも本人にとって第二次性徴時の精神的苦痛は大きく、不登校や自傷行為に及びかねません。

 GIDの当事者を対象にした自殺関連の調査によると、精神的な苦痛は思春期にピークを迎えます。

 はりまメンタルクリニックでは、自殺を考えたことがあるという人は62%、自殺未遂経験は10.8%、自傷行為経験は16.1%にも上りました。このうち自殺未遂を起こした年齢は、高校生、中学生、小学生の順で多く、首つりや過量服薬、リストカットだけでなく、胸や睾丸を自分で切ったり、はんだごてを押し当てたというケースもあるそうです。

 当事者の実情をリアルに伝えるこの連載、とても素晴らしいと思います。今後もぜひ見ていきたい記事です。

(後藤純一)

 

性同一性障害:学校への相談、15都府県が把握--毎日新聞調査
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20100614ddm002040081000c.html

境界を生きる:子どもの性同一性障害/1(その1) 高1男子「早く女性の体に」
http://mainichi.jp/select/science/news/20100613ddm001100169000c.html?link_id=RSH03

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