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英国のテレグラフ紙が論じる「Grindr」

2010年08月26日

 イギリスで最大の発行部数を誇る老舗の一般紙『テレグラフ』(どちらかというと保守寄り)が、iPhoneアプリ「Grindr」について論じるまじめな長文を掲載していました。
 内容は「やりすぎに注意」というような論調で、いかにも保守派・良識派なものですが、「Grindr」がゲイの出会い(カジュアルなセックス)のツールとなっていることを嫌悪するのではなく、それを認めた上で真剣にゲイの健康を心配しているところに感動しました。(日本でマスコミが取り上げるかというと黙殺するか、嘲笑のネタにするか、ですよね)
 以下にダイジェストでご紹介したいと思います。(後藤純一)

 

 

 以前から、ゲイの出会いには広くインターネットが用いられてきた。英国では「Gaydar」と呼ばれるサイトが長い間、抜群の人気を誇ってきた。後続のサイトとして「ManHunt」なども登場したが、コミュニケーション全般というよりはセックス目的の出会いに特化したものがほとんどだった。「Gaydar」は90年代後半から約10年にわたって、おそらく単純に「新しいものに移るのが面倒」という理由によって、トップの座をキープしてきた。 

 しかし、iPhoneを手に入れたら、すべてが一変する。GPS機能が提供するアプリは、近くにいる人をすぐさま見つけ出す。最も人気のあるiPhoneアプリ「Grindr」は、ユーザーが今いる位置から近い順に、プロフィールの一覧を表示してくれる。混雑した街中で「Grindr」を立ち上げれば、ユーザーは何百ものハッテン(カジュアルなセックス)相手を見つけることができる。出かける手間をかけずとも、候補となる相手のプロフィールをチェックしたり、チャットして「予約」を入れたりできるのだ。しかし、この出会いの便利さは、ともすると自分を傷つけてしまうような、トラブル含みの行為へとゲイたちを駆り立てるものではないだろうか?

 今や、ゲイのソーシャル・ネットワークは、蒸発せんとする勢いだ。これまでゲイたちにぎこちなく、時には面倒な出会いのメソッド(コミュニケーション)を提供してきたウェブサイトは、より単純でイメージ中心の魅力的なiPhoneアプリ、お手軽な「即ヤリ」を提供するアプリに取って代わられているのだ。

 こうした新しい探索のメカニズムは、ハッテンのプロセスを加速化させるだけでなく、様々なリスクを伴う。これらは不健康でリスキーな行動を促進するように見える。ユーザーのデータを集めて行動パターンを一般化するようなアプリを作成している開発者によると、ユーザーの中には、本来の目的とは無関係にアプリをチェックせずにはいられない依存症的な様相を呈する人たちが少なからず現れている、と指摘している。彼らは決して実際には誰とも出会わない。その代わり、画像を交換したり、バーチャルなキャラクター(なりたい架空の自分)として会話を続けたりするサイクル自体にハマる。このアプリは「リアル(実際に会ってセックスすること)」を「相手探し中毒」に置き換えてきたのだ。

 Grindr」を作ったJoel Simkhaiは、予想通り、このアプリをそのようには見ていない。
「確かに、出会い目的というよりアプリを見ること自体を楽しんでいる人たちはいます。彼らはいつもチャットでやりとりしていて。でも、私たちは、彼らが誰かとつながったり、コミュニティや周囲の人々に関わったりできると感じられるようお手伝いしているのです。もしあなたが孤独を感じているなら、Grindrにアクセスすればいい。きっとさびしくなくなるはず。私たちが提供しているのはそういうものです」
25万人のユーザーのうちの1/4は、少なくとも1日に1回、Grindrにアクセスしています。平均は1日に57回。理由はとてもわかりやすい:あなたが移動するたびに、新しいグループの人たちをチェックできるのだから。それが健康という観点から見たとき、依存症一歩手前と言えるのかどうか、私にはわかりません。もちろん私たちは、ユーザーにほどほどに使うことをおすすめします。Grindrはただのツールなのであって、決してリアルな人生に取って代わるべきものではないのです」

 こうしたアプリが若いゲイたちやシングルの中年ゲイたちの孤独を助長しているなどと責められる筋合いはもちろんないが、感情的に傷を負ってきた世代のゲイがリアルライフに背を向けてiPhoneアプリで相手探しする姿は、想像しがたいものがある(ちょっと空しい)

 あるiPhoneユーザーは、匿名でこう語った。「Grindrやその手のアプリは、相手探しを容易にし、それをお尻のポケットに入れて持ち運ぶことを可能にしたんです。しかも、日常生活のなにげないところでね。ちょっとiPhoneを取り出してアプリを立ち上げれば、いつだってできるんです。そりゃあハマりますよ」

 Grindrのようなアプリの場合、警告文が出るはずだが、それは驚くに値しない。いったいどれくらいの魅力的なゲイの若者たちが、iPhoneを持ったばかりに、この薄気味悪くて危険な世界に吸い込まれていったのだろうと考えてしまう。


Grindr: combatting loneliness or a cruising ground for gays?(Telegraph)
http://www.telegraph.co.uk/technology/social-media/7964000/Grindr-combatting-loneliness-or-a-cruising-ground-for-gays.html

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