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『フィリップ、きみを愛してる』の全米公開が遅れに遅れ、12月と決定

2010年08月30日

 日本では今年3月に公開され、世間でもなかなかの評判を呼んだ映画『フィリップ、きみを愛してる』。あのリュック・ベッソンが総指揮監督を務めたフランスとアメリカの合作映画ですが、本国でもあるアメリカでは、公開が遅れに遅れ、やっと123日に全米公開されることが決定しました(今まで公開されていなかったことが驚きです) 

 I love you Phillip Morris(原題)』は20091月にサンダンス映画祭プレミア部門で絶賛され、カンヌ国際映画祭の監督週間にも正式出品され、話題になっていました。
 しかし、当初、212日公開予定だったのが延期され、326日になり、430日になり(アメリカのゲイ雑誌『Out』では、4月の公開をにらんでユアン・マクレガーへのロングインタビューも掲載されていました)、730日になり、またそれが延期され。米国の映画関係者の中には「最終的には非公開でDVD発売のみになるのでは」と予想する人々もいたそうです。

 これほどまでに公開が遅れた理由は何なのか? 英国『タイムズ』紙はこのように書いていたそうです。
「ゲイをテーマにした映画は、これまでにも『ブロークバック・マウンテン』や『ミルク』などがあったが、いずれも社会派の真面目な作品。それに比べると『フィリップ、きみを愛してる!』はあっけらかんとしたロマコメで、ゲイセックスの描写もあからさまだ。同性愛に関して保守的な考えを持つ人の多い米国では、劇場公開はリスキーだと考える業界関係者も多いという」

 しかし、827日の『タイムズ』紙は、いささか異なる事情を伝えていました。
「昨年、この作品の上映権を持つEuropaCorp(フランスのプロダクション)は、北米配給権をConsolidated Pictures Groupに売ることに合意したが、CPGから最低限の保証金すら支払われないので、契約破棄を通告。そこで公開をめぐる法的なトラブルに発展した。しかし、最終的に、Roadside AttractionsLiddell entertainmentが配給権を獲得し、ようやくこの作品が日の目を見ることとなった」
 映画自体、たしかに物議を醸すような部分もありますが、公開が遅れた直接の原因は、アメリカ社会の保守性うんぬんよりも、契約をめぐるトラブル(もっと言うとアメリカの厳しい経済状況)にあったのです。
(たしかに、これまでにも『バードケージ』や『GO!GO!チアーズ』など、社会派ではないゲイ映画は山ほど公開されてきました。あからさまな性描写も『クルージング』の時代からあったと思います。『Queer as Folk』や『L word』といったドラマがテレビ放映されている国で「ゲイ過ぎる」という理由で上映を見合わせるはずがないでしょう)

 『タイムズ』はこうも書いています。
「公開が遅れたことはずいぶんしんどかっただろう。しかし、ユアンとジムにとってはそんなに悪いことではないはずだ。なぜなら、12月公開というのは、アカデミー賞のオスカーをねらうのにベストなタイミングだから。この10年の間にゲイを演じた多くのストレート俳優が主演男優賞にノミネートされてきた。『シングルマン』のコリン・ファース、『ミルク』のショーン・ペン、そして『ブロークバック・マウンテン』のジェイク・ギレンホールとヒース・レジャーも」

 公開が遅れてやきもきしていた方も多かったと思いますが、アカデミー賞をねらえるかも?と言われると、ちょっとうれしくなりますよね。アメリカでの評判を楽しみに待ちたいと思います。(後藤純一) 

 

『フィリップ、きみを愛してる!』米公開3度延期の理由はゲイ過ぎ?(Movie Walker
http://news.walkerplus.com/2010/0413/7/

ゲイ過ぎる『フィリップ、きみを愛してる!』が4度目の正直で123日全米公開決定(Movie Walker
http://news.walkerplus.com/2010/0828/8/

Carrey and McGregor To Come Out...In TheatersTIME
http://newsfeed.time.com/2010/08/27/carrey-and-mcgregor-to-come-out-in-theaters/

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