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タンザニアに残る「女性同士の結婚」という風習

2010年09月25日

 AFPBB Newsに、興味深い記事がありました。
 タンザニア北部で暮らすクーリャ(Kurya)という部族には、年配の女性が若い女性を妻として迎え入れることができるという、珍しい結婚風習があるのだそうです。

 「ムクングス」と呼ばれるこの結婚風習には経済的な目的があり、未亡人女性、子どもが授からなかった女性、娘がすべて嫁いでしまった独居女性に限り、新たに結婚し、妻として迎えた若い女性に、自分の男性親族とのあいだに子どもをもうけてもらうことによって、家名を残し、財産を守ることができるという利点があるとのことです。

 ただし、「ムクングス」をするためには、通常の結婚と同様に持参金が必要で、この習慣を悪用し、お金を目当てに、若い女性を持つ両親のほうから年配女性に結婚話を持ちかけるケースもあるのだとか。
 年配女性と「ムクングス」をした若い女性の中には、その後、都会からやって来た若い男と駆け落ちしてしまう人もいるのだそうで、国の近代化が、伝統的に培われてきた「弱い立場の女性の生活を守るための知恵」を、残念にも破壊している現実があるようです。

 いっぽう、若い女性の一部には、親から「ムクングス」を強要され、心に傷を負ってしまう実態もあるらしく、「ムクングス」に甘んじるなど、恥ずべきことだと考える人たちもいるようです。かつて、アフリカの数十の部族が営んでいた「女性同士の結婚」という風習は、必然的に、今後すたれてゆかざるをえない方向にあるのかもしれません。

 タンザニアをふくめ、アフリカ諸国の大半では、同性愛は不当に忌み嫌われており、僕たちが考えるような同性婚など、けっしてありえない状況となっていますが、クーリャ族の「ムクングス」は、あくまで経済的見地から、年配女性の生活を救う目的があってのこと。タンザニア政府は、違法とされる同性婚と「ムクングス」とを切り分け、「ムクングス」はお構いなしとして容認しているのだそうです。

 話は少し脇道へ逸れますが、イスラム圏を旅しておりますと、ふだんの生活の中で、イスラムの男性同士が非常に親しげであることに気づきます。男同士の友情・連帯が極めて強固で、どんな年齢層でも、つねに男同士の輪が見られ、挨拶のとき、ほほにキスをしあったり、いつでもどこでも、やたらに手をつないだり肩を組んだり抱き合ったりと、スキンシップがとっても濃厚なのです。日本ではまずありえない男同士の親しさ、距離感の近さです。
 混み合ったバスや電車に乗っていると、若い男の友達同士で身体を密着させ、一つの座席を共有している光景に出くわしたりもします。僕たちの感覚では、あたかも交際しているゲイ同士の姿のようにも見えてしまいます。
 しかし、もちろん彼らはゲイではありません。
 イスラムの価値観では、同性愛など、あってはならないことになっているからです。

 イスラム圏では、かつて日本で言われた「男女七歳にして席をおなじゅうせず」の教えのように、結婚あるいは婚約をした男女を除いて、男性と女性が街中で連れ立って歩くような行動は、慎むべきとされています。
 その反動で、男性は男同士、女性は女同士で連むことが、当たり前とされてきたのです。そうしたしきたりから、ときに男同士の友情・連帯が極めて強固になり、ドキッとしてしまうほど、スキンシップが濃厚だったりもするのです。それは、まさしくイスラムの風習です。

 タンザニア・クーリャ族の風習やイスラムの風習には、それぞれ同性婚や同性愛を連想させるものがありますが、実態は、どちらもやむにやまれぬ必要に迫られてのこと。ともに、同性愛を厳しく禁忌している文化圏だけに、「なんだか皮肉だなあ……」と、複雑な気持ちになってしまいます。

 ひるがえって、古来、日本の風習として、「男女七歳にして……」の価値観を背景に、男同士で愛を育むことが、男色あるいは衆道という形で容認されていたことを思うと、どうしてその気風がいまに伝え残されることがなかったのかと、悔しくてなりません。(円山てのる)

 

 

年配女性が若い女性を「妻としてめとる」、タンザニアの珍しい風習(AFPBB News
http://www.afpbb.com/article/life-culture/life/2758787/6213036?utm_source=afpbb&utm_medium=topics&utm_campaign=txt_topics

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