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おかえりなさい! 佐良直美さん

2010年09月28日

 歌手の佐良直美さん(65)が、1983年の『YASUKOの場合』以来、実に27年ぶりとなる新曲『いのちの木陰』(11月24日発売)を発表し、芸能界に復帰することがわかりました。

 佐良直美さんは1969年に『いいじゃないの幸せならば』で第11回日本レコード大賞を受賞し、NHK紅白歌合戦の紅組司会を5回も務めるなど、国民的歌手・女優として一世を風靡しました。しかし、1980年、同性愛スキャンダルでマスコミに叩かれ、芸能界から姿を消しました…

 1980年(昭和55年)5月19日、テレビ朝日『アフタヌーンショー』にキャッシーが出演し、佐良直美の実家(名家だそうです)に同棲し、2人が「夫と妻の関係」にあったこと、そして外国人を嫌う両親にいじめられた結果、破局を迎えたことを、涙ながらに語りました。そしてマスコミは連日、怒濤のように2人の関係を「レズ」と呼び、佐良を悪者扱いしたのです。そうして一人の国民的人気歌手は、まるで犯罪者のように叩かれ、社会から抹殺されてしまったのです…
 当時の「レズ」報道はすさまじく、レズビアンの方にとってはトラウマになるような出来事だったそうです。(レズビアンのための「パフスペース」で行われたトークイベントでも、そうした証言がありました→こちらの動画をご覧ください)(blog「ビアン通信」では、「レズって蔑称なんですか?」と言う人にぜひこの事件のことを知ってほしい、と語られています)
 
 最もトラウマに苦しんだのはもちろん、佐良さん本人でしょう。そのショックを、絶望的な状況を想像すると、胸が張り裂けそうになります…
 佐良さんはその後、実業家に転身しました。以前から罪もない動物たちが捨てられ、命を奪われることに心を痛めていたそうですが、18年前、飼い猫がお腹に飛び乗った際に違和感を感じ、検査を受けて卵巣がんが発見されたことで「私は彼らに生かされている」と強く感じ、残りの人生を動物に捧げることを決意し、捨て犬や捨て猫を減らすためのインストラクターの資格を取り、現在、栃木県那須塩原市で家庭犬のしつけ教室「アニマル・ファンスィアーズ・クラブ」を主宰しているそうです。
 復帰を促したのは『聖母たちのララバイ』などで知られ、かつて佐良さんと同じ事務所だった作詞家・山川啓介さん。3年前に佐良さんの住む那須塩原市を訪ねた際、そのおおらかな愛情に感銘を受け、『いのちの木陰』を作詞したことがきっかけだそうです。佐良さんは「私の祈りが込められた歌。この作品にめぐり会い、私を育ててくださった歌の世界にまたタイムトラベルしてみようという気持ちになりました」と語っています。

 同性愛嫌悪がむきだしだった時代の犠牲者とも言える佐良さんがこうして芸能界に復帰することは、多くのゲイ&レズビアンが待ち望んだことであり、心からの祝福で彼女を歓迎したい気持ちにさせられます。
 その復帰は、ある意味、1つの時代(同性愛嫌悪の時代)の終焉を意味するような、日本のゲイ史の節目のような、象徴的なものだとは言えないでしょうか。
 これからの時代、きっと、芸能界でも(芸人さんだけでなく、ミュージシャンや俳優の方の中からも)カミングアウトする人が現れてくる…そんな気がします。
(後藤純一)
 

佐良直美27年ぶり歌手復帰「恩返し」(朝日新聞)
http://www.asahi.com/showbiz/nikkan/NIK201009240026.html

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