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性分化疾患患者を取り巻く実情や課題が次第に明らかに—毎日新聞がレポート

2010年11月02日

 先日、性同一性障害や性分化疾患(インターセックス)の当事者へ取材した長期ルポ連載「境界を生きる」でファイザー医学記事賞優秀賞を受賞した毎日新聞の丹野恒一記者が、再び性分化疾患について記事を書いていました。性分化疾患者への取材を通じて、社会の実情や課題が少しずつ明らかになるような、とても意義のある記事でした。

 染色体やホルモンの異常で男性か女性かが明確に区別しにくい「性分化疾患」について、小児医療の分野で初の実態調査や診療の底上げが本格化してきました。日本小児内分泌学会は10月、過去5年間の受診者は未成年だけで少なくとも3000人に上ると発表しました。長年タブー視されてきた疾患にようやく光が当たりはじめましたが、成長後の患者への支援はなお乏しく、人知れず苦しむ人は後を絶たない、と伝えられています。

 奈良県桜井市で内科クリニックを開業する岡本新悟医師は、性分化疾患の一種「クラインフェルター症候群」の患者から10年間で約800件のメール相談を受けたといいます。思春期以降に気づくことの多い染色体異常の疾患で、約1000人に1人の割合で生じます。性器などは基本的に男性ですが、人によっては乳房が膨らんだり、ホルモンが不足し、骨粗しょう症や内臓疾患になることもあるそうです。
 性腺の疾患の治療に長く携わってきた岡本医師をインターネットなどで知り、九州から通院する人もいるそうです。「治療を受けたいのに、どこを受診すればいいのかわからないという人が少なくない」と岡本医師は語ります。

 性分化疾患は出生後の性別判定を担う小児科でも専門医が少なく、成長後も診察できる医師はさらに限られます。患者を30年以上診てきた菅沼信彦・京都大教授は「時間をかけて患者の心と向き合わなければならない疾患のため、医師が敬遠しがちなのではないか」と指摘します。

 「男でも女でもない。自分は何者なのか」。東京都内のグラフィックデザイナー(35)は男性的な発達が不十分で、小学生のころからいじめられたそうです。20代になると内臓疾患を次々と発症。そのたびに医師らは「治りが悪い」と首をかしげましたが、「原因不明」「まあ大丈夫」で済まされました。自分の体で何が起きているのか…ネットで調べるうちにクラインフェルター症候群のことを知り、2年前、大病院で染色体検査を受け、予想が的中しました。

 病名はわかったものの、専門医が見つからず、人づてに聞いた薬を個人輸入して飲みましたが、心も体も男性と女性の間を揺れ動き、頭痛や倦怠感が増すばかり。ネットで出会った患者仲間の情報で専門の小児科医を訪ねると「ここでは18歳以上は診られない」と経験豊富な泌尿器科を紹介されました。今年5月に男性ホルモンの補充を始め、今はやっと自分を男性と感じられるそうです。
 治療を始めて約半年が過ぎ、階段を上るだけで息が切れた体は、富士山に登頂できるほど元気になりました。それでも「おかしいと気づきながら、なぜどの医師も原因を探ろうとしてくれなかったのか」との思いは消えません。

 日本小児内分泌学会は今後も実態調査を続け、患者が直面している課題を探り、支援に反映させる考えです。しかし、調査対象を小児科医に絞っているため、クラインフェルター症候群など成長後の患者は受診者の概数さえ把握できないのが実情です。

 専門医の一人である大阪府立母子保健総合医療センターの島田憲次医師(泌尿器科)は「性分化疾患は男女どちらに決められて育っても不全感を抱いて生きていく。医療者が連携し、患者の人生を見守っていかなければならない」と語りました。

 

 

<性分化疾患>乏しい支援 「男か女か、自分は何者?」 成人患者が苦悩(毎日jp)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20101101-00000009-maiall-soci

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