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同性婚について史上初めて連邦最高裁で審理が行われ、過半数の判事が結婚防衛法は違憲ではないかとの見方を示しました

2013年03月28日
 3月26日と27日、同性婚をめぐるアメリカ連邦最高裁判所の審理が行われ、アメリカはもとより世界中の注目を集めました(日本でもTVのニュースなどで報道されました)。これは、同性婚をめぐる2つの提訴について連邦最高裁が史上初めて判断を示すものとなります。

 26日に行われたのは、カリフォルニア州で同性婚を禁じる「提案8号」の違憲性についての審理(2008年に住民投票で提案8号が通った後、州最高裁で違憲性が争われましたが、合憲だとの判決が下され、連邦裁に持ちこまれることになりました)、27日に行われたのは、連邦法で同性婚を禁止する結婚防衛法(DOMA=Defense of Marriage Act)の違憲性についての審理(イーディ・ウインザーさんというレズビアンの方が、永年のパートナーとカナダで結婚したものの、結婚防衛法のせいで死別した時に配偶者としての扱いを受けられず、これは差別だと訴えを起こしたもの)です。

 26日に行われた審理では、まず冒頭で、最高裁のジョージ・ロバーツ長官が、提案8号の支持者(同性婚禁止派)に対し、そもそも上訴のための法的な立場を有するかどうかに疑義を呈しました。上告資格のあるカリフォルニア州は、同性婚を禁止する提案8号の弁護を辞退し、上告しなかったからです(高裁の判事は、事実上、カリフォルニア州が同性婚を認めたとの考えを示しています)。これに対し、提案8号の支持者(同性婚禁止派)の依頼を受けているチャールズ・クーパー弁護士は、カリフォルニア州の市民は提案8号の弁護に死活的な利害を持っていると述べ、依頼人には訴える権利があるという判断をカリフォルニア州最高裁が下した点を紹介しました。
 最初の弁論で、いわゆる「スウィングボート」として今後の判決を左右する可能性がある(同性婚支持を明確にする判事が4人、反対する判事が4人となっており、残る1人である)アンソニー・ケネディ判事は、原告が同性婚を認めるべきと訴える理由に挙げている事柄を取り上げ、カリフォルニア州では約4万人の子どもが結婚を禁じられた同性の親たちと暮らしている、と述べました。ケネディ判事はまた、クーパー弁護士に対し、「子どもたちは親たちが完全に認められ、完全な立場を得ることを望んでいる。本件ではこういった子どもたちの声が重要だ。そう思わないか?」と尋ねました。しかしこの後、同判事はこのカリフォルニア州に関する件で、各州に幅広く適用されるような判決を出すことには慎重な姿勢を示しました。
 同判事は、同性婚推進派の弁護人セオドア・オルソン氏に対し、「本件で問題なのは、皆さんがわれわれ(最高裁)に未知の領域に踏み込むよう求めている点だ」と述べました。同判事は連邦最高裁が本件を取り扱うことに合意すべきでなかったかもしれないとの考えすら示唆し、オルソン弁護士を驚かせました。「私は本件の取り扱いが適切に認められたのか疑問に思っている」
 ソニア・ソトマイヤー判事は、クーパー弁護士に、結婚以外で同性愛者たちに対する差別で受け入れられるものが何か挙げられるか?と尋ね、同弁護士は「何も挙げられません」と答えました。その上でソトマイヤー判事は、なぜ結婚はこれと異なるのか?と尋ねました。するとクーパー弁護士は「伝統的な結婚は生殖・出産に付随して構築されたもので、同性のカップルの結婚を認めることは、結婚の制度に害を及ぼす」と主張しました。
 一方、異人種間結婚を禁止した州法は違憲だとする判決を連邦最高裁が下した1967年の「ラビング対バージニア」訴訟が、この日の審理に影を落としていました。アントニン・スカリア判事は審理の過程で、同性婚推進派のセオドア・オルソン弁護士に対し、同性婚の禁止が違憲になったのは厳密にはいつか?と尋ねました。オルソン弁護士はこの質問を切り返して「異人種間の結婚の禁止が違憲になったのはいつでしょうか?」と尋ねました。 

 27日の審理では、判決を左右する可能性のあるアンソニー・ケネディ判事が、もし結婚防衛法が残るなら「(州の権限)のエッセンスと考えられてきたものと矛盾を生じる危険性に直面している」と述べました。州には結婚や離婚、子どもの養育について定める権限が認められてきたからです。そして、「連邦政府に婚姻法制化の権限があるのか否かが問題だ」と結婚防衛法の合憲性に疑問を示しました。
 ルース・ギンズバーグ判事は、結婚防衛法は「2つの結婚を作ることになる。1つは完全な結婚、もう1つはスキムミルクのような結婚だ」と述べました。

 2日間の審理を終えて、過半数の判事が結婚防衛法の合憲性を疑問視する見方を示したことから、同性婚が認められる可能性が高いとの観測が、アメリカのメディアの間でささやかれはじめました。ただ、最高裁が訴訟手続きに関する不備などを理由に、同性婚の是非に踏み込まない可能性も指摘されています。6月にも言い渡される判決の内容は、予断を許さない状況となっています。

 この歴史的な裁判の傍聴には、雪がちらつくなか多くの人が列をなし、また、最高裁の建物の外では、数百人の支持者が「結婚の平等を」などと書かれたプラカードやレインボーフラッグを掲げ、歩道を埋め尽くしました。

 CNNが25日に発表した世論調査によると、同性愛の家族や親しい友人がいるという回答者は57%を占め、同性婚を支持すると回答した人も53%でした(2007年の調査では40%でした)。また、ABCが26日に発表した世論調査では、同性婚合法化に賛成と答えたのは58%にのぼりました(反対は36%。10年前の調査結果と賛否が逆転しています)。今や国民の過半数が同性婚を支持していると言えそうです。

 


“同性婚訴訟”に長蛇の列 米連邦最高裁判所(テレビ朝日)
http://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000002620.html

米最高裁、明確な結論出さぬ構え―加州の同性婚禁止法を審理(ウォール・ストリート・ジャーナル)
http://jp.wsj.com/article/SB10001424127887324559504578385433795912830.html

同性婚認めない米連邦法、最高裁判事の過半数が疑問呈する(ブルームバーグ)
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MKCK096KLVSJ01.html

米世論を二分「同性婚」審理 メディアは「容認の可能性」(MSN産経ニュース)
http://sankei.jp.msn.com/world/news/130328/amr13032822090003-n2.htm

米国:連邦レベルの司法判断に慎重…同性婚訴訟で最高裁(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/news/20130329k0000m030047000c.html

米連邦最高裁、過半数の判事が結婚防衛法は違憲との判断か(AFP)
http://www.afpbb.com/article/disaster-accidents-crime/crime/2936070/10509390?utm_source=yahoo&utm_medium=news&utm_campaign=txt_link_Thu_p1

Justices Cast Doubt on Benefits Ban in U.S. Marriage Law(The NewYork Times)
http://www.nytimes.com/2013/03/28/us/supreme-court-defense-of-marriage-act.html?smid=tw-nytimes&_r=0

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