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ワシントン大行進50周年を記念し、バイヤード・ラスティンが大統領自由勲章を授与されました

2013年09月07日

 ワシントン大行進から50周年を迎えた今年8月、バラク・オバマ大統領は、アメリカ合衆国における差別撤廃運動に多大な貢献をしたとして、人権活動家の故バイヤード・ラスティンに大統領自由勲章(文民に贈られる最高位の勲章)を授与しました。

 1963年8月28日、20万人以上が参加し、マーティン・ルーサー・キングJr.が「I Have a Dream」という伝説的な演説を行い、公民権運動の象徴となっているワシントン大行進。1人の逮捕者も出なかったこの平和的なデモを大成功に導いたのは、キング牧師の右腕であり、オープンリー・ゲイでもあった活動家、バイヤード・ラスティンでした。

 バイヤード・ラスティンは1912年、ペンシルバニア州に生まれました。オハイオ州の黒人大学を卒業後、ニューヨーク市立大学に進学。 
 ラスティンは公民権運動のパイオニアでした。1942年には、差別への抗議として長距離バスの白人席に座り続けたことで逮捕されました。また、インドやアフリカへ出向き、イギリスの植民地支配への抗議を行い、何度も逮捕されています。インドでは現地の活動家たちからガンジーの「非暴力・不服従」の思想を学びました。

 1956年、ラスティンはアラバマ州モンゴメリーへ向かい、武装しての抵抗運動も辞さない考えだったマーティン・ルーサー・キングJr.に、ガンジーの非暴力思想を伝えました。そしてモンゴメリー・バス・ボイコットは、非暴力の抵抗運動として、差別的制度の撤廃という成果を手にすることに成功したのです。
 そして1963年、ラスティンはワシントン大行進の総監督に抜擢されました。急進的な活動家の批判をかわし、「仕事と自由を!」を合い言葉として、発生が予測される問題を一つ一つ取り除いていきながら、20万人もの人々を集めました。この歴史的なデモ行進がたった一人の逮捕者も出さず、平和的に完遂されたのは、ラスティンの功績だと言われています。マハトマ・ガンジーとマーティン・ルーサー・キングJr.という、20世紀を代表する二つの偉大な魂をつないだ人物、それがバイヤード・ラスティンなのです。

 これほどまでに重要な業績を挙げながら、バイヤード・ラスティンが表に出なかった(それゆえ、日本でもほとんど知られていない)のはなぜでしょうか? それは、彼が、セクシャルマイノリティへの差別が激烈な時代だったにもかかわらず、ゲイであることを隠さず、オープンにしていたからです。ゲイが警察に逮捕されなくなったのは1969年のストーンウォール事件以降の話ですが(ソドミー法が撤廃されたのは、ニューヨーク州ですら1980年でした)、ラスティンは1953年には同性愛者への差別に対する抗議運動に参加し、「性的倒錯者」として逮捕されるという苦難を味わっています。
 1987年に虫垂炎で亡くなるまで、ラスティンは、ゲイの権利(を含む人権)擁護活動を続けます。
 1986年、ラスティンがニューヨーク州の同性愛者差別禁止法のために行った「新しいニガーとは、ゲイのことである」という演説が、よく知られています。
「今日、黒人はもはや、社会変革のリトマス試験紙やバロメーターとは言えない。黒人はあらゆる社会階層にいて、人種差別から保護される法律も整備されている。今や新しい『ニガー(くろんぼ)』とはゲイのことである…社会変革は最も傷つきやすいグループに焦点を合わせて行われるべきだという意味で、ゲイの問題こそが社会変革のバロメーターなのだ」
 
『失われた主唱者:バイアード・ラスティンの人生』の著者ジョン・デミリオは、「ラスティンは20世紀で最も重要な米国の社会正義活動家の一人です」と語ります。

 人権団体ヒューマン・ライツ・キャンペーンのチャド・グリフィン代表は、大統領自由勲章授与のニュースを受けて「バイヤード・ラスティンのアメリカの公民権運動における貢献は、今日までの成功へと続く、輝かしいものでありつづけている」との声明を発表しました。「彼の公民権運動における役割は本当に賞賛に値する、なぜなら、彼は黒人としてだけでなく、ゲイとしても差別を受けながら、オープンリーゲイとしてやり遂げたからだ」

 バイヤード・ラスティンは、アメリカで最も名誉ある大統領自由勲章を授与されたオープンリー・ゲイの人物として史上2人目の人となりました。(一人目は、2009年に受章したハーヴェイ・ミルクです)

 また、今回ホワイトハウスが発表した16人の受賞者の中には、レズビアン女性もいました。アメリカ初の女性宇宙飛行士で、昨年亡くなったサリー・ライドでした。


※現在日本語で読める最もきちんとしたバイヤード・ラスティンの人物伝を掲載し、日本の人たちにその再評価を促しているのが「People's Front of Anti Racism」というサイトです。レイシズム(特定の人種や民族への差別)に反対するこのグループは、9月22日に「差別撤廃 東京大行進 The March on Tokyo for Freedom」というデモを企画しています。ゲイパレードのようなサウンドカーも出る楽しいフロートもあるそうで、張由紀夫さんもそのお手伝いをしているそうです。



Bayard Rustin Awarded Presidential Medal of Freedom(Advocate.com)
http://www.advocate.com/society/people/2013/08/08/bayard-rustin-awarded-presidential-medal-freedom

キング師に非暴力の思想を手ほどきしワシントン大行進を組織した黒人・同性愛者・平和主義者のバヤード・ラスティン(Democracy Now!)
http://democracynow.jp/dailynews/20130812

バイヤード・ラスティン(People's Front of Anti Racism)
http://antiracism.jp/march_for_freedom/50years/persons/bayard_rustin-264.html

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