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インディアナ州の同性愛者差別法に対しティム・クックらが激しく抗議、州法は修正を余儀なくされました

2015年04月10日

 カリフォルニア大学ロサンゼルス校法学部のウィリアム研究所とドレクセル大学によって実施されれた世論調査によると、アメリカ合衆国の50州全てで同性婚を支持する人の率が上昇していることがわかりました。2004年と2014年を比較すると、平均で年間2.6%、2012年からは平均で年間6.2%上昇しているそうです。支持率が最も高いのはバーモント州の75%、ワシントンD.C.の86%で、支持が最も低いアラバマ州でさえ、2016年には2004年の2倍の支持率に達すると見られています。(4月末からは最高裁で同性婚に関する審理が始まります。6月末までにアメリカ全土で同性婚が認められると見られています)

 

 そんななか、いくつかの州で「信仰の自由の保障」を掲げる州法が成立し、波紋を呼んでいます。
 最初に問題となったのは中西部インディアナ州の州法です。「不可欠な理由がない限り、政府や自治体が個人の信仰の自由に負担をかけることはできない」という内容で、州議会で可決され、3月26日に州知事の署名で成立しました(施行は7月です)。この州法が成立すると、たとえばケーキ屋が「信仰の自由」を盾に同性カップルからのウエディングケーキの注文を断るなどといったことが起こりえます。訴訟になっても、この法があれば差別者の「自由」が優先されることになりかねません。法の条文に「同性愛」の文言はありませんが、事実上、同性愛者差別を合法化する「反同性愛法」なのです。
 インディアナ州では、2014年6月、連邦高裁が同性婚を禁じる州法が違憲であるとの判決を下し、州が上告。同年10月に最高裁がこれを棄却し、同性婚が合法化されました。結婚はあくまで男女のものだとするキリスト教保守派や共和党右派のいやがらせであると見られています。

 インディアナ州の反同性愛法が可決されるや、人権団体が非難し、同性愛者らが大規模なデモを展開しました。
 アップルのティム・クックCEOは、『ワシントン・ポスト』紙に「各州で、非常に危険なことが起きている。企業活動に悪影響を及ぼす」と寄稿。同性婚が合法化されたテキサス州で、同性カップルに結婚許可証を発行した事務員の年金をはく奪する法案が提出されていることなども例に挙げ、差別が拡大する危険性を訴えました。「これらの法案は、我々の多くが大切にしていることを守ることを装うことで、不正義に大義名分を与える」「差別に異を唱えるには勇気が必要だ。しかし、生活や尊厳を脅かされている多くの人々のために、私たち全員で勇敢に立ち向かわなければならない」
 アーカンソー州に本拠を置く米最大の小売りチェーン、ウォルマートは同州の法律について「包容力の精神を損なう危険があり、我々が大切にする価値観を反映していない」と表明。アメリカン航空やマイクロソフトといった企業も、法律に反対する人権団体に賛同を表明しました。
 また、富士重工業(スバル)の子会社で、北米の生産拠点になっているインディアナ州ラファイエットのスバル・オブ・インディアナ・オートモーティブが、新法を批判。同社の広報責任者マイケル・マクヘイル氏は「各州に州法を定める権利があることは理解するが、スバルでは差別を容認するいかなる法律にも同意せず、振る舞い、行動など、いかなる形であっても差別を促す行為には賛成はしない。さらにスバル社内での差別は、インディアナ州内の施設であっても認めない」という声明を発表しました。
 クラウドベースの CRM/顧客管理やSFA/営業支援を世界10万社以上に提供するセールスフォースののマーク・ベニオフCEOは、インディアナ州での一切のイベントをボイコットすることを表明しました(5月にインディアナ州で行われるインデイズ・ビッグデータ会議も含む)。その動きにEMCやClouderaなども同調しています。
 また、4月1日には、Twitter、eBay、Yelpをはじめとするハイテク企業各社の幹部40名近くが、反同性愛法が「マイノリティの権利を危険にさらす」ものだとする共同声明を発表しました。「(性的指向や性同一性を保護する)取り決めがなければ、人々の間に壁を築き、創造性や社会の一体性にとっての障害を作り出し、将来の雇用創出に必須の、透明性のある開かれた社会を窒息させることにしかつながらない。差別はビジネスにとって害なのだ」
 ほかにも、サンフランシスコのエド・リー市長やワシントン州のジェイ・インスリー知事、シアトルのエド・マレー市長らは、職員がインディアナ州に公費で出張することを禁じると発表。大学生のバスケットボール試合を開催する全米大学体育協会(NCAA)も「選手たちへの影響」に懸念を表明。ロックバンド「ウィルコ」も、インディアナポリスで5月7日に開催するコンサートを中止すると発表しました。
 また、元カリフォルニア州知事のアーノルド・シュワルツェネッガーも、『ワシントンポスト』紙の論説でこの州法に「憤慨している」と批判し、話題になっています。「アメリカ人として、今週インディアナ州で起きた事、そして今後他の州でも同じような法律が可決される恐れがある事に、大きな懸念を抱いている」「(こうした州法は)国にとって悪いだけでなく、我々の党にとっても不利益なもの」「共和党は小さな政府の党であって、愛を規制する党であってはならない」と力説しました。
 ビジネス紙の『インターナショナル・ビジネス・タイムズ(IBT)』は、LGBTを擁護する「良い行動」を示す企業を人々は支持し、差別をしない企業にお金を使いたいと多くの人が考えているとの調査結果を発表。法案が公になって以来、これまでに、インディアナ州は、4000万ドル(47億8000万円)を失った、と推測しています。

 批判の拡大を受け、インディアナ州のペンス知事も立場の修正を余儀なくされています。
 ボスマ州下院議長ら共和党州幹部は3月30日の記者会見で「州法には(同性愛者を)差別する意図はない」などした上で、条項を修正する考えを示しました。「法律には差別の意図はない」と繰り返してきたペンス知事も議会に対し、法律の内容を再検討するよう要求しました。
 同様の法案が州議会で可決されていたアーカンソー州でもインディアナ州と同様の批判が寄せられたため、法案に賛成だったハッチンソン知事が態度を変え、可決した内容の法案では署名できないと発表しました。
 両州の州議会は「法律を理由とした差別は認められない」などとする修正案を可決し、批判を何とか収めようとしています。
 
 今回のインディアナ州のことをまとめると、同性婚が全米に広まりつつあり(すでに36州で合法化されています)、同性婚支持の世論が高まるなか、一部の(とは言ってもまだまだ根強い)アンチ派が姑息ないやがらせを試みたものの、国中の批判を受け、あえなくついえた、ということになるでしょう。政治家にしろ、企業のトップにしろ、マイノリティへの差別に対して毅然とNOを言う人たちの何と多いことか(ちょっと感動的なほどです)。日本もそういうふうになるといいですね。





同性婚の支持率、アメリカの全50州で上昇(最新の世論調査)(The Huffington Post)
http://www.huffingtonpost.jp/2015/04/15/same-sex-marriage-support_n_7075394.html

米・インディアナ州の新しい法律「宗教の自由法」が全米で物議(FNN)
http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00289365.html


米国:インディアナ州「宗教の自由回復法」に広がる波紋(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/news/20150402k0000m030065000c.html

「信仰の自由」盾に同性愛お断り? 米州法に批判続々(朝日新聞)
http://www.asahi.com/articles/ASH44363BH44UHBI005.html

A・シュワルツェネッガー、米法律に抗議「同性愛者への差別を容認することになる」(クランクイン!)
http://www.crank-in.net/celeb_gossip/news/36224

スバル、性的マイノリティへの差別につながる米インディアナ州の新州法に反対を表明(autoblog)
http://jp.autoblog.com/2015/04/04/subaru-comes-out-on-the-right-side-of-history-stands-up-against/

インディアナ州の宗教自由差別法案がビッグデータ会議のボイコット騒動誘発(オルタナティブ・ブログ)
http://blogs.itmedia.co.jp/borg7of9/2015/03/post_38.html

ハイテク企業幹部、反同性愛関連法案を批判する共同声明を発表(cnet news)
http://japan.cnet.com/news/society/35062615/

「同性愛差別」批判の宗教保護法、米2州が修正(ウォール・ストリート・ジャーナル)
http://jp.wsj.com/articles/SB12451244521881693796604580557742351596072


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