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「Best of IBM」に選ばれたビジネスマンがカミングアウト

2015年06月24日

 全世界で40万人いるIBM社員から業績を認められた500人のみに与えられる「Best of IBM」に今年日本から選ばれた川田篤さんのインタビューが、日本IBMの情報発信ブログ「IBMblr Japan」に掲載されていました。特筆すべきは、川田さんがIBM社内のLGBTコミュニティのリーダーとしてLGBTへの理解を求める活動を社内外で展開している方だということです(昨年と今年、東京レインボープライド会場のIBMのブースにもいらっしゃいました)
 
 川田さんが所属部門全体へカミングアウトしたのはつい最近のことだそうです。所属部門全体が集まるミーティングで「Best of IBM」受賞のスピーチをする機会があり、与えられた時間の中で受賞については5分で話しを終え、残りの10分でなぜ業績を上げることができたか、それは自らがLGBT当事者であり、IBMが多様性を尊重するカルチャーを持っていたために、自分自身成長することができたためだと語ったそうです。「このようなオープンの場でカミングアウトすることは、まだ非常に珍しいことだと思います。自分がLGBT当事者であり、これまでの経緯を知っている社員はその話に涙ぐむほど感動してくれましたが、知らない社員は正直びっくりしたと思います。LGBTとは何か、LGBTでどのような課題があるのか、そして会社としてLGBTにどのように取り組んでいるのか、これらを自分の業績とあわせて話すことができたので、皆さんに理解いただけたのではないかと思います」

 川田さんは2003年にニューヨーク郊外で行われたIBMの全世界のLGBTリーダーを集めたカンファレンスに自費で参加し(当時はまだカミングアウトもしておらず、出張扱いとすることはできなかったそうです)、それがきっかけでIBMのアジア・パシフィック地域のゼネラル・マネージャーが日本IBMの人事に繋いでくれて、社内LGBTコミュニティの活動を始めるようになったそうです。「その後は人事と一対一でどのような取り組みを行うのかを模索してきました。当時は日本にはLGBT推進を掲げるような企業もなく、全くのゼロからのスタートでした。数年経過してようやくLGBT当事者が現れたものの、プライバシーには細心の注意が求められ、言わば秘密結社のような状態でした」
「私たちLGBT当事者は、全ての社員の周りに普通にいる存在なのだという認識を日常から作りあげていくことが大切だと考えています。まずは、LGBT当事者があるがままで気兼ねなく過ごせる職場をつくるための啓蒙活動として、セミナーを開催したり社内にポスターを掲示したり、コミュニティのネットワーク作りなどの活動を継続的に行っています。また、社内への直接のアプローチと併せて、社外のセミナーやイベントに積極的に参加し、その結果を社内に逆展開する、といった方法もとっています」
「外からみるとIBMはLGBTへの取組みが進んでいるようにみえますが、まだまだやるべき課題は非常に多くあると感じています。日本IBMの中でも、LGBTへの取り組みを知らない人はまだ多くいることでしょう」
「究極的には、多様性を尊重する社会が日本で根付く一端を担っているという意識で、信念をもって活動していきます」

 2012年、日本IBMは国際NGOヒューマン・ライツ・ウォッチとの共催で、LGBTに関するダイバーシティ・マネジメントについて議論する画期的なセミナー・イベント「work with pride」を開催しました。その後、認定NPO法人グッド・エイジング・エールズやNPO法人虹色ダイバシティも参加し、「work with pride」は毎年出席者が倍増、昨年は約250名もの方が出席しました。参加した企業や団体からは「私たちも協力したい」という声が複数あがるようになり、今年11月にはリクルートを会場にセミナー開催することが決定しているそうです。
「これまでの3年間は、企業内でLGBTが自分らしく働ける職場づくりを進めるための情報提供、そして各企業が積極的に取り組むきっかけを提供することに焦点を当ててきましたが、今後は、より具体的な次のステップを提供するとともに、さらには2020年のオリンピック東京大会を見据えて世の中に提言を行うような活動ができないかを検討しています。本年11月のセミナーでもそのようなフェーズの変化を意識したアジェンダにしようと考えています」

 6月のプライド月間には、社員を対象にLGBTセミナーを開催したそうです。
「今回はエグゼクティブ・スポンサーである副社長の下野さんをはじめ、100人近くもの社員に参加いただくことができました。LGBT当事者やアライもこのセミナーの運営に参加しています。セミナーでは、IBMのダイバーシティーの取り組み、LGBTとは何か、そしてLGBTを取り巻く最新状況について共有することができました」
 その他、ポスターの掲示やイントラネットでの情報発信のほか、日本IBMの事業所内にあるカフェテリアでLGBTにちなんだオリジナルのメニューも提供されるそうです。
 
 日本IBMは、企業内のLGBTへの取組み(ダイバーシティ&インクルージョン政策)において、いわば日本で最も先端を走ってきた企業なわけですが(2012年のTSSAでは企業賞を受賞。川田さんも授賞式に登壇しています)、その取組みの中心に川田さんという方の存在があったということが、今回公にされました。あらためて拍手を贈りたいですね。
 

LGBTは周りに普通にいる存在  だからこそ同じようにビジネスの結果も求められる(IBMblr Japan)
http://ibmjapan.tumblr.com/post/122301317621/lgbt

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