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改正刑法が施行され、男性へのレイプも厳罰化されることになりました

2017年07月14日

 7月13日、性犯罪の厳罰化や、被害者の告訴がなくても起訴できるようにすることなどを盛り込んだ改正刑法(刑法典第22章わいせつ、姦淫及び重婚の罪の一部改正)が施行されました。性犯罪に関する刑法の大幅な改正は、1907年(明治40年)の制定以降初めてで、110年ぶりです。この中で、これまで被害者は女性のみとされていた従来の強姦罪が改められ、男性も被害対象に含まれるようになり、また、強制的に肛門や口中へ陰茎を挿入する行為なども取り締まられることとなりました。
 
 今回の法改正の主な変更点をお伝えします(詳細はこちら

(1)「強姦罪」→「強制性交等罪」に名称変更、男性も対象に 
 暴力や脅迫によって無理やり性行為をする「強姦罪」の名称が「強制性交等罪」に変更されました。名称の変更に伴い、これまで被害者は女性のみとされていたのを、男性も対象とするように改められました。
・被害者は女性のみ→男性も

 また、行為の内容についても対象が拡大され、陰茎を膣に挿入する行為だけでなく、犯人が、被害者の肛門や口の中に自己または他人の陰茎を入れること、自己または他人の肛門、口の中に被害者の陰茎を入れる行為も含まれるようになりました。
・肛門や口への強制挿入も処罰の対象に

 また、罰則が厳しくなり、最も短い刑の期間が3年から5年に引き上げられます。
・懲役3年以上→5年以上

(2)「監護者わいせつ罪」と「監護者性交等罪」を新設
 親など監護・保護する立場の人が、その影響力を利用し、18歳未満の子どもと性行為やわいせつな行為をした場合に、暴力や脅迫がなくても処罰できるようになります。
 わいせつ行為は6カ月以上10年以下の懲役、性行為は5年以上の有期懲役に処されます。
 家庭内での性的虐待などを念頭にしており、教員やスポーツ教室の指導者は原則対象には含まれないそうです(※監護者に当たらないというだけで、強制わいせつ罪には問われます)
 これにより、親から性的虐待を受けていた男の子なども、被害を訴え出ることができるようになります。
 
(3)「親告罪」の廃止
 従来の強姦罪や強制わいせつ罪などの性犯罪は、被害者本人が加害者への処罰を求める告訴という手続きをとらなければ、起訴できませんでした。この「親告罪」と呼ばれる規定が削除され、全ての性犯罪で告訴がなくても起訴できるようになりました。この変更は、改正刑法が施行される前に起きた事件にも、原則適用されるということです。
 罪に問うかどうかを被害者が決める親告罪の仕組みは、精神的負担が大きく、性犯罪が潜在化する一因とも指摘されていました。廃止により、告訴せずに埋もれていた被害が、刑事裁判で裁かれるようになることが期待されます。
 その一方で、事件を公にしたくないとう被害者の感情やプライバシーの保護、裁判をする負担などの課題も挙げられます。

(4)強盗強姦罪、刑罰の統一
 改正前は、強盗と強姦の両方をした場合、犯行の順番によって刑罰に差が出ていました。時事ドットコムによると、強盗が先だと「強盗強姦罪」として「無期か7年以上の懲役」となる一方、強姦が先なら5年以上30年以下の懲役」の刑が科されていました。
 この違いを是正するため、「強盗・強制性交罪」を新設し、犯行の順番に関わらず「無期または7年以上の懲役」に統一しました。

(5)集団強姦罪の廃止
 2人以上で強姦した場合に懲役4年以上とする刑罰規定が削除されました。


 性犯罪の問題に詳しい守屋典子弁護士は「改正によって男性が被害を受けたケースも罪に問えるようになったが、まだ声を上げにくい社会だと思う。被害者が安心して相談できる場所をつくる必要がある」として、社会の理解も必要不可欠だと語っています。
 
 今回の刑法改正に際し、「いのち リスペクト。ホワイトリボン・キャンペーン」代表の明智カイトさんは、自身の経験も交えながら、男性だって痴漢やDV、レイプなどの被害に遭っているし、存在や苦しみを見えなくされたたくさんの男性サバイバーが孤立のなかで苦しんできた、と訴えています。「いのち リスペクト。ホワイトリボン・キャンペーン」の調査では、セクシュアルマイノリティの児童が性的暴力の被害に遭っている実態が明らかになっています。特に、性別違和のある男子が服を脱がされたり、恥ずかしいことを強要されたりする被害が多いそうです。
 
 また、NHKの記事では、レイプ被害に遭ったレズビアンの方のお話を通じて、今回の刑法改正が不十分であると指摘されています。彼女は、相手に指を使って襲われたのですが、男性器を挿入する行為でなければ「強制性交等罪」の対象にならないのです(「強制わいせつ罪」として懲役6ヶ月以上10年未満の刑に該当し、強制性交等罪よりも軽くなります)。「被害者の立場で考えたら、木の棒を入れられた時に、『男性器でなく、木の棒でよかったね』とはならない。このままでは、被害を訴えないままの人たちが出てくる」と彼女は語ります。
 支援団体「レイプクライシス・ネットワーク」代表の岡田実穂さんによると、ほかにもレズビアンやバイセクシュアルの女性が「男の良さを知らないからそうなんだ。自分が直してやる」などと言われ、「矯正レイプ」と呼ばれる性暴力を受ける実態があるそうです。こうしたセクシュアルマイノリティの被害者は、一般的な性暴力の相談機関に相談しても対応してもらえないことも多いそうです。
 
 6月16日に刑法の改正案が参議院法務委員会で可決された際、併せて付帯決議が可決されています。
「『強制性交等罪』が被害者の性別を問わないものとなったことを踏まえ、被害の相談、捜査、公判のあらゆる過程で、被害者となりうる男性や性的マイノリティーに対して偏見に基づく不当な取り扱いをしないことを研修などを通じて徹底させるよう」にと政府に注文を付けるものです。
 岡田さんは「付帯決議に盛り込まれた内容のとおり、警察や相談機関などがきちんと研修を行って知識をもってもらわなければ、二次被害が起きる現状は変わらない」と語っています。
 
 

性犯罪厳罰化の改正刑法が施行(NHK)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170713/k10011056341000.html

強制性交等罪とは? 性犯罪の厳罰化で変わった5つのこと「男性も被害者」「告訴いらず」【わかりやすい解説】(ハフィントンポスト)
http://www.huffingtonpost.jp/2017/07/13/sexual-offence_n_17471320.html

男性の自分が痴漢や、DV被害を受けた理由。(Yahoo!ニュース)
https://news.yahoo.co.jp/byline/akechikaito/20170713-00073155/

“被害者の性別問わず” 性犯罪 残る課題も…(NHK)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170713/k10011056991000.html


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