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不朽の名作ゲイ映画『モーリス』が、30年の時を経て4K無修正版で公開されます

2018年03月04日



 同性愛が犯罪とされていた20世紀初頭のイギリスを舞台に美しい青年たちの真っ直ぐな愛を描いた不朽の名作であり、耽美的なゲイ映画としてセンセーションを巻き起こした『モーリス』(1987年)が、30年の時を経て4Kデジタル修復され、『モーリス 4K』というタイトルでGWにリバイバル上映されることが決まりました。1988年の公開当時はかなわなかった無修正版での上映となります。

 『モーリス』の原作は、ゲイの作家E・M・フォースターが1913年に書いた小説ですが、イギリスでは1967年までソドミー法(同性間の性行為等を違法とする法律)があり、フォースターはずっとこれを発表せずにいました。彼の死後、1971年になってようやく『モーリス』は日の目を見ることになりました。
 ケンブリッジ大学で出会った上流階級の青年、モーリス(ジェームズ・ウィルビー)とクライヴ(ヒュー・グラント)。凡庸な青年モーリスは知的なクライヴと親密になり、ほどなく互いに恋愛感情を抱くようになりますが、高潔なクライヴは肉体関係を拒みます。社会に出てからも二人の友情は続くものの、かつての同級生がソドミーの罪で有罪判決を受けるという事件が起こり、二人は遠ざかります。やがて、政治家を目指すクライヴは上流の女性と結婚し、ひさしぶりにモーリスを屋敷に招待します。が、そこでモーリスは若い猟番のアレック(ルパート・グレイヴス)と目が合い…というストーリーです。
 監督はジェームズ・アイヴォリー(ゲイの方です)。E・M・フォースター原作の『眺めのいい部屋』でアカデミー賞3部門を受賞、『モーリス』でベネチア国際映画祭で銀獅子賞、男優賞(ジェームズ&ヒュー)、音楽賞を受賞、やはりフォースター原作の『ハワーズ・エンド』でカンヌ国際映画祭35周年特別賞を受賞しています。『君の名前で僕を呼んで』の脚本で、本年度アカデミー賞脚色賞にもノミネートされています(受賞すれば89歳で最高齢のオスカー受賞となります)
 
 記事の冒頭で不朽の名作と述べました。それは、『モーリス』がイギリスの上流階級の美青年どうしの「禁断の」恋を描いた「BL映画」の草分け的な作品だからではありません。(結末に触れてしまい、申し訳ありませんが)初めてハッピーエンドで終わるゲイ映画が誕生したからです。同性愛が犯罪とされていた時代であるにもかかわらず、困難を乗り越え、愛する二人が結ばれ、幸せになることを示唆する終わり方というのは、それまでのゲイ映画にはなかったのです(互いのホモフォビアをぶつけあい、観る者を重苦しくさせる『真夜中のパーティ』にせよ、ゲイがモロに変態扱いされていた『クルージング』にせよ、悲劇的な『蜘蛛女のキス』にせよ、決して幸せな最後ではありませんでした)
 小説『モーリス』のあとがきには、「もしエンディングがハッピーエンドでなければ、もっと早く出版できただろう」と書かれています。「幸せな終わり方が、とりもなおさず犯罪である」と。当時、ホモセクシュアルの人物は決して幸せになってはいけない、異常者や犯罪者として不幸な死に方をしなければいけなかったのです。『モーリス』のハッピーエンドには、お気楽さではなく、E・M・フォースターのゲイとしての魂が込められているのです(『ブロークバック・マウンテン』の二人が叶えられなかった夢を、1913年に小説に託していた人がいたなんて…)。しかもそれは、階級社会であるイギリスではありえない、身分違いの恋でした。そのような視点でこの映画を観るとき、(たとえ美青年に興味がない方でも)きっと感動を覚えるのではないかと、名作と感じていただけるのではないかと思います。
 

『モーリス 4K』
4月28日より YEBISU GARDEN CINEMA ほか全国順次公開






 

男同士のラブロマンス『モーリス』4K無修正版で4月日本公開!ヒュー・グラントが一層美しく!(シネマトゥデイ)
https://www.cinematoday.jp/news/N0098814

青年2人の愛を描く英映画『モーリス』 4K無修正版でリバイバル上映(cinra.net)
https://www.cinra.net/news/20180303-maurice

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