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取材するメディアと、取材を受けるLGBTに向けた、報道のガイドラインが作成されました

2019年03月18日

 LGBT(性的マイノリティ)をめぐる報道は、以前ほどあからさまに差別的なものは少なくなっていますが、まだまだ用語や表現が適切でなかったり、当事者が意図しないような報道(プライバシーが守られなかったり)も少なくありません。そこで、LGBTに関する取材や報道でのトラブルをなくそうと、LGBT法連合会が、報道機関の記者有志とともに「LGBT報道ガイドライン」を作成しました。取材する側と受ける側の双方に向けたもので、注意点をまとめたチェックリストなども盛り込まれました。
 
 ガイドラインは「取材・報道とは」「LGBTとは」「カミングアウトとは」などといった基礎知識の解説、「レズ」「ホモ」など注意が必要な言葉、記者と当事者がそれぞれの経験談を語ったコラムから成る計12ページの本編と、取材する側・される側向けのチェックリストを掲載した簡易版とがあります。
 内容は、LGBT法連合会や弁護士、新聞、テレビ、ウェブメディアで働く記者の有志が中心となり、約半年間話し合いを重ねて、制作されたそうです。
 
「性の多様性に関する報道が増えてきた一方で、社会にはまだ偏見や差別が残っています。その結果、報道によって、当事者がかえって苦しめられてしまうケースも度々目にしてきました」と、LGBT法連合会の神谷悠一事務局長は語ります。
 たとえば、昨年7月に行われた杉田議員の寄稿記事に対する抗議活動において、地方で暮らし、セクシュアリティをオープンにしていない方や、これまで取材された経験がなかった方などとメディアとの間で行き違いが重なった結果、地元での居場所を失ってしまった方がいらっしゃいました。
「運動が様々な立場、環境に置かれている人に広がり、社会的な注目もますます高まってきたからこそ、一度報道の際の注意点を整理する必要があると感じました」
 ガイドラインに何を盛り込むべきか記者と議論する中で、神谷さんは、取材する側の記者にも、取材を受ける側の当事者にも、それぞれのコミュニティ内の「暗黙の了解」があり、それが互いに共有できていないことに気づいたと語ります。
「例えば新聞社の場合、取材して記事を書く人と、紙面の見出しや構成を考える人、それぞれ別の担当者がいることは、外からはあまり見えていません。でも記者さんからしたら、それは当たり前のことで、説明するまでもないと思うかもしれません」
「一方で当事者の側も、様々な性に関する知識や、『クローゼット』で生活している人が置かれている状況などは、知っていて当たり前と思う部分があるかもしれません。でも記者にとっては、そうではない可能性もあります」
 また記者の側も、当事者に配慮するために何を聞いてもよくて、何は聞かないほうがよいのか、どのような言葉を選ぶべきなのか、悩むケースが多々あることもわかったといいます。
「取材を受ける側も、ここはしっかり聞いてほしい、ちゃんと書いてほしいと思っていることがあります。だからこそ、『言わなくてもわかるでしょ』とはならずに、お互いにきちんと伝えていく必要があると感じています」
「『アウティングをしてはいけない』『そのために注意しよう』と伝えるだけでは難しくて、実際にどのようなポイントを抑えればトラブルを回避できるのか、具体的に示していかないと次のステップには進めないと考えています」
「そうしないと今現場で起きていることは解決できないし、今回のガイドラインは、そのポイントを言語化する最初の一歩にもなると思っています」
「LGBTに関する報道が増えてきたことは、本当に喜ばしいことです。だからこそ、そこでトラブルが起きることはお互いにとって不幸だなと。より良い形で『取材』に関わり、現場の深刻な実態が伝えられるよう、このガイドラインが貢献できると嬉しいです」

 取材をする側と取材を受ける側のチェックリストには、例えばこのような項目が並べられています。

《取材をする側》
・LGBT や性の多様性に関する基礎知識を身につけておきましょう
・自分の性のあり方を基準にしないようにしましょう
・「アウティング」はその人の居場所を奪ってしまいプライバシーを侵害してしまう恐れがあります。アウティングを
防ぐために、取材対象者がどの範囲にまでカミングアウトをしているか確認しましょう
・本人の性のあり方は本人しか決められません。相手の性のあり方を決めつけず、本人の表現を尊重しましょう。過去
の記事に頼らず、書き方を変える場合は本人に確認をとりましょう

《取材を受ける側》
・顔を公開してよいか、名前まで公開してもよいのか、自身の情報について改めてどこまで公開できるのかを確認
・整理しておきましょう
・あなたが話したことが、あなたの身の回りの人のアウティングにならないように留意しましょう
・あなたの性のあり方をどういう言葉で表現するか、今一度確認してみましょう
・公開してもよい情報の範囲、報道にあたって配慮してほしい表現・事柄等についてもしっかりと記者に伝えましょう

  
 ガイドラインとその簡易版は、LGBT法連合会のWebサイトから無料でダウンロードできます。冊子をご所望の方は、1冊500円で郵送していただけるそうです。
 


LGBT 報道で指針策定(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20190318/ddm/004/040/028000c

メディアが誰かを「不幸」にしないために。記者とLGBT当事者がガイドラインを作った(Buzzfeed)
https://www.buzzfeed.com/jp/saoriibuki/lgbt-media-guideline

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