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ブルネイが同性間性交渉に死刑を課す新刑法の執行を猶予すると発表

2019年05月07日

 ブルネイのボルキア国王は5月5日、同性愛行為や不倫への投石による死刑執行を猶予する方針を表明しました。ブルネイはこの4月、同性愛行為などに投石による死刑を科す新たな刑法を施行したことで国際社会から強い非難を浴びており、事実上の方針転換を余儀なくされたものと見られています。
 
 ボルキア国王は5日に発表した声明で、「ブルネイは過去20年以上、死刑の執行を事実上停止している」と述べました。そのうえで、死刑の執行猶予は「(同性愛行為などへの死刑執行を盛り込んだ)厳格なイスラム法に基づく新刑法にも適用される」と明言しました。国連の拷問等禁止条約を批准する考えも示しました。
 また、ボルキア国王は、「新刑法導入に対する多くの疑問や誤解があることは認識している」と述べ、国際的な批判が死刑の猶予を表明した理由だと認めました。一方、「誤解が解ければ、新刑法の利点は明白になるだろう」とも述べています。

 新刑法の施行をめぐり、ミチェル・バチェレ国連人権高等弁務官、欧州議会、フランス外務省、アムネスティ・インターナショナルなどが「残虐な刑罰を直ちに停止すべきだ」と非難し、ジョージ・クルーニーがブルネイ系ホテルのボイコットを呼びかけ、エルトン・ジョン、エレン・デジェネレス、JPモルガンやドイツ銀行なども賛同、そして、世界中のLGBTコミュニティが抗議運動を展開していました。
 こうした抗議運動が実を結び、国王も死刑を中止せざるをえなくなったのです。

 猶予の発表を受け、LGBTや人権活動家の間で安堵の声が広がりました。
 ただし、新刑法自体が撤回されたわけではなく、依然として残っているため、この刑法を廃止することが必要だと訴える団体もあります。今後も、欧米を中心にブルネイへの批判や、監視が続くだろうと見込まれます(実は2014年にも同様の法律を発表し、批判されて、撤回したのですが、今年また出してきたという経緯があり、ほとぼりが冷めた頃にまた同じことをする可能性が高いと見られています)
 
 ブルネイのゲイたちは、投石による死刑という、まるで中世のような非人道的な刑に恐怖を覚えていました。とあるゲイの方はBBCに対し、「朝になって目覚めたら突然、隣人や家族、道端で食べ物を売っている優しいお婆さんたちがみんな、自分を人間ではない、石を投げてもいい存在だと思っていることに気づいた」と語っています。
 ブルネイ人のゲイで、カナダに逃れ、亡命を希望しているシャヒラン・B・シャフラニ・ムハンマドさんは、「ゲイたちは怯え、精神を病み、地下に潜っている」と証言しています。「ゲイアプリがリリースされて、みんなが密かに会えるようになった。しかし今では、誰もこのアプリを使わなくなってしまった。同性愛者を装った警察官に話しかけてしまうかもしれないからだ」
 彼の友人は、つきあって10年のパートナーがいるそうですが、ゲイだとバレることを恐れ、あまり会わないようにすることを決めたそうです。「これが、刑法の何たるかを物語っている。ブルネイのゲイたちは、ナーバスで、誇大妄想的で、猜疑心に苛まれるようになっている」

 



ブルネイ、同性愛・不倫に死刑執行せず 批判受け(日経新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44450940W9A500C1FF8000/

「同性愛死刑」執行せず=国際的反発で国王発表-ブルネイ(時事通信)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2019050600553

不倫で投石死刑、適用猶予 ブルネイ国王「誤解で懸念」(朝日新聞)
https://www.asahi.com/articles/ASM56441KM56UHBI00J.html

ブルネイ、同性愛行為への死刑適用に猶予期間 国際社会の非難に配慮か(CNN)
https://www.cnn.co.jp/world/35136534.html

同性間性交渉や不倫は死刑、ブルネイのシャリア刑法 国王が適用猶予表明(AFP)
https://www.afpbb.com/articles/-/3223755

This Is What It’s Like to Be Gay in Brunei, Where LGBT People Can Now Get Stoned to Death(DAILY BEAST)
https://www.thedailybeast.com/this-is-what-its-like-to-be-gay-in-brunei-where-lgbt-people-can-now-get-stoned-to-death

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