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英国の新50ポンド札の肖像にアラン・チューリングが選ばれました

2019年07月16日

 英国の中央銀行であるイングランド銀行は7月19日、「コンピューターの父」「人工知能の父」として知られる天才数学者、アラン・チューリングの肖像を新しい50ポンド札に採用することを発表しました。アラン・チューリングはナチス・ドイツの暗号「エニグマ」の解読に成功した第二次大戦の英雄でもありますが、戦後、同性と性的関係を結んだことを理由に逮捕・処罰され、1954年に非業の死を遂げました。
 
 アラン・チューリングは1912年6月23日、ロンドンに生まれた天才数学者。1936年にチューリングマシンを考案した人物として知られています。チューリングマシンとは、無限に長いテープに記録される「1」「0」などの情報をヘッドで読み書きすることで問題を解いていく仕組みで、「アルゴリズム」と「計算」の概念を定式化し、計算機科学の発展に大きな影響を与え、コンピュータの誕生に重要な役割を果たしました(そのため、「コンピュータの父」とも呼ばれています) 
 チューリングは第二次世界大戦中、ドイツが使用していたエニグマ暗号を解読するなどの功績を残しました(いわば、英雄です)。そして戦後は、有名なチューリングテスト(機械を「知的」と呼ぶ際の基準を問い、人工知能の問題を提起するもの)をはじめ、初期のコンピュータに関する仕事に携わりました。が、1952年、マンチェスター在住の19歳の男性と性的関係を結んだかどで逮捕されました。禁固刑の代わりに彼は、「化学的去勢」(性欲を抑えると信じられていた女性ホルモンを投与される)を伴う保護観察処分を選びました。いずれにせよ、屈辱的な思いをしたチューリングは、1954年、青酸カリを服用して亡くなりました。ベッドの傍らにはリンゴが置いてあったといいます。リンゴが置かれていたのは、その死が事故などではなく自殺だと明示するものであり、「白雪姫」や聖書の「エデンの園」になぞらえた演劇的なメッセージであったと見られています。
 アラン・チューリングの死の真相については、本国でも何十年もの間、秘密にされていました。1973年、ゲイ解放運動の担い手たちが、この沈黙を破り、ソドミー法の下で同性愛者がどんな仕打ちを受けてきたかということの象徴として、チューリングについての文書を出版。その翌年、ブレッチリー・パーク(第二次大戦中、暗号解読センターが設置された場所)が公式にその内容を認めました。
 2007年、アラン・チューリングの功績を讃え、ブレッチリー・パーク博物館の真ん中に彼の彫像が置かれるようになりました。
 2009年、ゴードン・ブラウン首相は、政府のチューリングに対する仕打ちについて公式に謝罪しました。
 2012年、アラン・チューリングの生誕100周年を記念し、追悼記念切手が発売されたり、チューリングの母校であるケンブリッジ大学キングス・カレッジで生誕100周年を記念した誕生パーティが開催されるなどしました。
 2013年には、エリザベス2世の名前で恩赦されるとともに、キャメロン首相が声明を発表し、彼の業績を讃えました。
 2014年、映画『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』が公開されました。
 2017年には「アラン・チューリング法」が施行され、英国で過去にソドミーの下で警告を受けたり有罪とされた5万人超のゲイたちが恩赦を受けました。
 
 そうして今、アラン・チューリングの肖像が、お札に採用されるまでになったのです。たいへん名誉なことです。そして、ゲイとして知られる人物がイギリスのお札の肖像になったということも、意義深いと言えるでしょう。

 間もなく退任予定のテリーザ・メイ首相は、「チューリングの遺産と、LGBTの人々が我が国へもたらした素晴らしい貢献を新50ポンド札として記憶にとどめておくことは、ふさわしいというほかない」と述べました。
 
 チューリングを描いた新50ポンド紙幣は、2021年末までに流通が始まる予定です。

 
 
  
新50ポンド札にアラン・チューリング コンピューターやAIの先駆者(BBC)
https://www.bbc.com/japanese/48991921

英新紙幣にアラン・チューリング 第2次大戦の暗号解読者(AFP)
https://www.afpbb.com/articles/-/3235259

イギリスの新50ポンド札になるアラン・チューリングってどんな人?(ハフィントンポスト)
https://www.huffingtonpost.jp/entry/alan-turing-bank-note_jp_5d2d290ce4b02fd71dd92c7f

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