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ラグビーW杯開幕戦で笛を吹いたのはオープンリー・ゲイの名レフェリー、ナイジェル・オーウェンスでした

2019年09月21日

 昨日、ラグビーのワールドカップ(W杯)2019日本大会が、ついに幕を開けました。日本対ロシアの開幕戦をご覧になった方も多かったことでしょう。あの開幕戦で笛を吹いたのは、名レフェリーとして世界的に有名なナイジェル・オーウェンス、ゲイであることをカミングアウトしている方でした。

 英国・ウェールズ出身のナイジェル・オーウェンスは現在48歳。ラグビーの名レフェリーとして人気で(「世界で最も著名なウェールズ人」と言われているそうです)、テストマッチ(国代表同士の試合)の数の世界記録保持者であり、レフェリーとしての高い技術や輝かしい実績を誇るだけでなく、選手とのコミュニケーション能力の高さ、そこここでみせるユーモアも人気の秘密です。
 例えば、W杯2015年大会では、セントジェームズパーク(サッカーのプレミアリーグ、ニューカッスルの本拠地)で行われた南アフリカ対スコットランド戦で、相手の反則に見せかけようと大げさに転んだスコットランドのFBに対し、「そういうダイブをするなら(サッカーが行われる)2週間後に来てやるように」と諭して話題になったり、アイルランド、スコットランド、イタリア、南アフリカのクラブチームが戦うPR14の試合では、ボールボーイ(サイドにいてボールを拾ったり選手に手渡したりする人)がフィールド内に投げ込んだボールが彼の背中に当たり、すかさず(冗談で)彼にイエローカードを出して、場内から喝采を浴びたりしています。
 
 そんなユーモアあふれるレフェリーとして人気だったナイジェル・オーウェンスも、自身のセクシュアリティについてはひどく苦悩したそうです。
 10代後半から20代前半にかけて、自分がゲイであるということを自覚し、主治医に「ゲイになりたくない。化学的去勢は受けられますか?」と尋ねたり、自殺を図ったこともありました。鎮痛剤を溶かしたウイスキーを飲んで意識をなくしたものの、警察のヘリコプターで病院に運ばれて一命を取り留め、「その日、一晩泣き明かした末、成長しなければならないと気づいた」といいます。その日から5日間の入院生活を強いられた彼が、母親にカムアウトする勇気を振り絞れるようになるまでにさらに数年を要しました。カムアウトを受けた父親も「はじめは複雑そうだった」そうですが、「私の父への愛、そして父の私への愛はまったく変わらなかった」とのことです。
 BBCのラジオ番組でナイジェルは、「W杯決勝では8万5000人の観客が見ている前で、さらに数百万人がテレビで観戦しているなかで試合を裁いた。判定の一つ一つに厳しい目が注がれる中でのレフェリングは、とてつもない重圧だった。だけど、自分が何者なのかを受け入れることの難しさに比べれば、その重圧は何でもない」と語りました。 

 2007年、「これ以上嘘はつきたくない」という思いから、司会を務めるテレビ番組の中でカムアウト。ウェールズラグビー協会や選手、ファンの人たちから温かい応援を受け、「セカンドチャンス」をもらったと感じたナイジェルは、その後、新聞のコラムや自身のTwitterアカウントで、レフェリングやLGBTの問題などについて積極的に意見を表明するようになりました。
 今年4月、オーストラリア代表ワラビーズのスター選手だったイズラエル・フォラウがTwitter「同性愛者には地獄が待っている」と投稿した際には、ウェールズの地元紙に連載しているコラムでフォラウの考え方を冷静な筆致で批判しました(フォラウはオーストラリアのラグビー協会が契約を解除し、ワラビーズから除外されました)
 W杯開幕5日前の9月15日にギャレス・トーマスがHIV感染をカムアウトするとすぐに、彼の勇気を讚え、友人として支えていくとツイートしました。
 
 自身がレフェリーを務めた最初のテストマッチが2005年に大阪で開かれた日本対アイルランド戦だったというナイジェル・オーウェンス。今回の開幕戦の主審を務めたことも含め、日本に縁がある方ですが、このW杯が終わった頃に、プライドハウス東京でのトークイベントに参加する方向で調整中だそうです。楽しみですね。

 
 
開幕戦の主審は「ボールボーイにイエローカード」の名物レフェリー(BBC)
https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-49750100

ラグビーW杯決勝のレフェリー「化学的去勢を求めたことも」、過去の葛藤語る(AFP)
https://www.afpbb.com/articles/-/3116817

LGBT理解促進施設「プライドハウス東京」 ラグビーW杯に合わせ初開設(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20190918/k00/00m/040/154000c

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