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フランク・オーシャンがNYで「PrEP+」というクラブパーティを立ち上げました

 ビヨンセなどにも楽曲を提供してきたR&Bシンガー・ソングライター(グラミーも受賞)であり、2012年に初恋の人が同性であることをカムアウトしたフランク・オーシャンが、10月17日に「PrEP+」というタイトルの新しいクラブパーティをNYで立ち上げ、話題を呼びました。
 「PrEP+」は、1980年代のNYのクラブシーンへのオマージュであり、「もし80年代にPrEPが開発されていたら」という仮定のもと「人々が集い踊るための現在進行形のセーフ・スペース」を創造する試みで、「レイシズム、ホモフォビア、トランスフォビア、セクシズム、障害者差別などあらゆる差別を許さない。
ダンスフロアはダンスするためにある」と宣言し、素晴らしいと絶賛する声が聞かれました。

 一方で、このイベントに対する批判の声も上がりました。
 イベント自体が招待客しか参加できないエクスクルーシブなものだったこと、ゲストDJのほとんどがストレートの白人だったこと、そして、より大きなものとして、クィアの歴史をなかったことにしているという批判がありました。
 80年代、ラリー・レヴァンがレジデントDJを務めていた「パラダイス・ガラージ」をはじめ、NYのクラブシーンはHOUSEの隆盛とともに輝かしい時代を迎えましたが、その影でHIV/エイズの問題が深刻さを増しており、クラブでハッピーに踊っていたゲイたちが次々と病に冒され、帰らぬ人となり…という死と隣り合わせの状態にありました。そのようなNYでACT UPという本気で政府の無策と闘う運動が立ち上がったり、また、ゲイたちが見殺しにされることへの抵抗運動としてクィア・ムーブメント(「私たちはここにいる、私たちはクィアである。それに慣れることね」)が生まれ、クィア理論へとつながっていきました。
 そのような歴史や文化の素晴らしさをお前は無視するのか?という趣旨の批判だったと思います。

 こうした批判に対してフランク・オーシャンは「PrEP+」の翌日、自身のTumblrにこのようなコメントを載せました。
「NYCにおける70年代後半のクラブ文化と80年代のナイトライフは特別なもので、これまで幾度となく語られ、書かれてきました。刺された著名人から、Studio 54やDanceteriaといったミッドタウンのクラブ、MuddやParadise Garageといったダウンタウンのクラブまで。その存在、その音楽、そのルックス、その規制のなさ(笑)。当時のNYがレーザーとディスコの照明だけではなかったことは理解しています。そこに犯罪と貧困が蔓延っていたこと、クラブ文化つまりそこにあったゲイコミュニティの大半がHIVとAIDSによって失われてしまったことも知っています。2019年には、毎日飲めば90%以上の確率でHIV感染を防ぐことができる錠剤があります。2012年、FDA〔米食品医薬品局〕によって承認された薬です。けれどもPrEPをめぐる価格戦略は悪質としか思えないほどで、実際この薬の認知度は低いままです。ある人たちの命を救えるかもしれない薬への大きな障害となっているのが、この〔高額な〕価格です。そして、もうひとつの大きな障害が認知です。その名前でなかったら、単に僕の好きなクラブの時代に着想を得た音楽と照明を使っただけのパーティになっていたであろう今回のイベントにPrEP+という名前をつけようと思い立ったのは、クイーンズ地区の古い眼鏡工場の地下にあるこのクラブをデザインしていたときのことです(金曜日僕たちの後にすばらしいテクノナイトを開催してくれたThe Basementに感謝)。僕は、多くの人の死と共に多くの約束が永遠に失われた時代に、もし何かが、何万人もの命を救うことができた何かが存在していたらどんな様子だっただろうかと想像をめぐらせました。僕はアーティストです。なくても困らない現実を想像することがその役目の核心です。パーティ開催の数日前、チームの仲間とこのテーマについて話し合っていたときのことです。一緒に働いている建築家が、PrEPの薬は認知度だけなら「100%浸透」していると言いました。それは絶対に間違いだと思い、僕はある友達(誰かは言わないけど(笑))にPrEPが何か知っているかと訊いてみると、彼はこう答えました。「バイアグラとかそういう類のやつでしょ?」。数年つきあった元彼はLAのゲイクラブで初めて会ったとき、この薬のことを知りませんでした。認知度はいつでも私たちがそうあってほしいと望むほど高くはありません。ともかく、僕は今わめいています。みんながPrEPについて話しはじめたことが嬉しいです。昨日のパーティに来て僕たちと一緒に踊ってくれたすべての人に感謝します。あなたたちは全員美しく、そのエネルギーは正しかった! Bouffant Bouffant、Sango、Justice、Sherelleにも感謝、昨日のセットはマジで良かった。あ、それからもうひとつ、このパーティがPR行為だとかなんとかっていう投稿を見かけたけど、勘ぐり野郎はとにかく次のPrEP+に来て、酒でも飲んでてよ。そしたらあんたが踊るのに必要なだけバーカウンターの椅子をどけてあげるから。すべての人に愛を込めて。ステイ・セーフ。」
 そして、1回目の「PrEP+」開催からわずか7日後、10月24日の昼前には、2回目の「PrEP+」がその日の夜開催されると発表されました。今度は招待状なしで、21歳以上なら誰でも参加できるパーティで、出演者も鬼才プロデューサーArca、有色人種のクィアDJコレクティブ Papi Juice、Discwomanに所属するジャマイカ出身のShyboi、コロンビア出身のテクノDJのLeeonと全員クィアで構成されていました。

 こちらの記事によると、米ギリアド・サイエンシズが提供する抗HIV薬・ツルバダの価格は年間2万1000ドル(約230万円)で、PrEPを享受できている人はごく一部の人に限られている、とのことです(ジェネリック薬を購入する方法もあると思いますが、正規品となると、そのような価格になるようです)
 それから、FacebookがPrEPの広告を掲載拒否というニュースもありました。理由は「文言が政治的すぎる」からだそうです。フェイクニュースは消さないのに…
 
 アクティビストのピーター・スタレーは次のように述べています。「彼の活動は、白人のゲイPrEPアクティビスト100人の活動よりずっと多くの、若いゲイの黒人に届くだろう」
 
 
 

フランク・オーシャン主催のナイトパーティ「prep+」をめぐる批判とその反論(i-D)
https://i-d.vice.com/amp/jp/article/8xwbp3/frank-ocean-prep

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