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全国121自治体への調査で、災害時対応指針にLGBTへの配慮を盛り込んでいる自治体が28あることが明らかになりました

2020年01月19日

 阪神淡路大震災から25年が経ちましたが、毎日新聞はこのたび、全国の121自治体に対し、災害時の対応を定めた地域防災計画や避難所運営マニュアルなどにLGBT(性的マイノリティ)への配慮があるかどうかを調査した結果、全体の23%にあたる28自治体で何らかの施策が盛り込まれていることが明らかになりました。同居の親族と同様に同性パートナーの安否情報を得られる自治体は16(全体の13%)でした。専門家は改善が必要だと指摘しています。
 
 
 毎日新聞は2019年11月、全国の都道府県、道府県庁所在地、政令市、東京23区にアンケートを送付し、12月までに岐阜県と京都府を除く119自治体から回答を得ました。性的マイノリティの被災生活をめぐっては、周囲に不審がられるため避難所の男女別のトイレを使えないなど、さまざまな困難に直面すると指摘されていることもあって、自治体の対応状況を尋ねたものです。
 その結果、地域防災計画などにLGBTへの配慮の必要性を盛り込んでいたのは、東京、大阪、熊本など9都府県、札幌、福岡など13道府県庁所在地・政令市、そして東京23区のうち世田谷など6区の計28自治体で、全体の23%でした。「誰でも使える(男女共用)トイレ、更衣室の設置」(徳島市)、「下着などの物資の配布についての配慮」(名古屋市)など、具体策を挙げて促進を図る自治体もありました。
 そのほか、横浜、北九州、那覇の3市は配慮を盛り込むため改定中と回答しました。全体の37%にあたる45自治体は改定を「検討中」としましたが、ほとんどは時期未定でした。「検討していない」と答えた自治体は43に上り、36%を占めました。例えば滋賀県は、「盛り込む必要性は理解しているが、内閣府の各種ガイドライン等についても明確な記載がないので、検討ができていない」と回答しています。
 
 たとえば熊本市では、2016年の熊本地震の際、被災したLGBTから共同生活の困難を指摘する声が上がったことを受けて、災害時の避難所運営マニュアルに①相談窓口の設置②性別に関係なく使えるスペースの設置③男女共用のユニバーサルトイレの設置④風呂・シャワーの個別利用ができる時間帯の設定⑤男女別の救援物資を人目に触れず届けるといった事柄を盛り込んでいます(詳しくはこちら

 災害時の安否照会については、災害対策基本法の施行規則によって、照会者に①同居の親族(事実婚などを含む)②同居以外の親族か職場の関係者③知人その他、という区分を設けて自治体が情報提供するよう定められています。
 調査では、同性カップル間の照会に対し、「同居の親族」として被災者の居所や負傷状況を伝えられるとしたのは、熊本市、世田谷区など16自治体のみで、「検討していない」や「議論できない」といった回答が目立ちました。当事者は、たとえパートナーが亡くなった場合でも情報を得られない恐れがあります。

 弘前大男女共同参画推進室の山下梓助教(国際人権法)は、「性的マイノリティは地域、年代を問わず、見えるか見えないかにかかわらず、必ずいます。自治体は避難所などにおいて配慮してほしいと望む当事者のニーズを積極的にとらえ、取り組むべきです。パートナーは本来、家族として扱われるべき関係で、災害時の安否照会の制度設計に組み込まれていないのは問題です」と述べています。

 また、LGBT法連合会の神谷悠一事務局長は、自治体によって同性カップルの扱いや「同居の親族」に該当するかどうかの解釈が異なる現状を指摘し、「当事者の立場に立って見直しを進めてほしい」と訴えています。
 内閣府は、同性カップルが災害対策基本法施行規則の「同居の親族」に含まれるかについて「事実婚にはいろいろな形がある。LGBTについても当てはまる」との見解を示しているそうですが、毎日新聞の調査では、現場を預かる自治体の判断は異なることが浮き彫りになっています。同性カップルを「同居の親族」とみなす16自治体のうち13自治体は同性パートナーシップ証明制度を根拠にしており、証明を受けていないカップルは対象外となる可能性があります。大分県と静岡市、浜松市はパートナーシップ制度がありませんが、事実婚の状態と認められるかどうかや当事者の申告によって「同居の親族」とすると回答していました。半数弱を占める58自治体は「事実婚と同様の状態か証明できない」などとして「知人その他」扱いとすると回答しています。
「何かあった時に私たちはどうなってしまうのだろうか。不安はみんな持っている」と神谷さんは語ります。
 

 

災害時、性的少数者に「配慮」23% 避難所マニュアル記載 全国121自治体調査(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20200118/k00/00m/040/138000c

災害時、“多様な性”尻込み 自治体「配慮」4分の1 避難所利用、ためらう当事者(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20200118/k00/00m/040/140000c

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