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台湾での同性婚合法化初年の同性婚件数が2939組に上ることが明らかになりました

2020年02月28日

 台湾で同性婚が可能になった初年である昨年の同性婚の件数が2939組に上ったことが明らかになりました。内政部(内務省)が2月22日、最新の統計を発表したものです。性別の内訳は、男性カップルが928組で、女性カップルが2011組(約68.4%)となりました。
 県市別では、新北市(台北の衛星都市で、台湾最大の人口を有します)が614組と最も多く、台北市が484組、高雄市が396組と続きました。
 全体の婚姻件数は13万4524組で、同性婚が占める割合は約2.2%ですが、同性婚法が施行された5月24日以降(約7ヶ月間)で2939組ですから、決して少なくない数と言えるのではないでしょうか。(ちなみに日本でこれまで同性パートナーシップ証明制度を利用したカップルは759組です。※2020年1月20日現在。虹色ダイバーシティ調べ)
 
 
 台湾では昨年5月24日、アジアで初めて同性婚を認める特別法が施行されました。
 最近、「司法を通じた同性婚の実現」という講演会が明治大学で行われ、台湾の法律に詳しい明治大学法学部の鈴木賢教授(ゲイの方です)が、たいへん興味深いお話をされていたので、ご紹介します。
「もともと台湾は、ゲイフレンドリーでもLGBTフレンドリーでもありませんでした。日本よりも抑圧的でした。ソドミー法(同性愛を犯罪とする法律)はありませんでしたが、警察による取り締まりが横行していました」
 1986年、祁家威(き・かい)さんが初めて同性愛者であることを実名で公表して以来、たった1人で同性婚の合法化を訴える運動を続けてきました。司法院大法官(最高裁)から「違法」という判断を引き出したのも祁家威さんでした。
 2000年代に入り、「台湾の民主化が進む中、当事者団体は弱かったのですが、フェミニズム団体が早い段階から、性的指向の問題を運動に取り入れてきました。その結果、2004年に性別平等教育法、2008年に性別就業平等法という法律ができました。性的指向による差別を禁止するものです。また、レズビアンの弁護士さんが中心になり、『伴侶権益推動連盟』というNGOを発足し、2009年から本格的に同性婚運動が始まりました」
 こうした運動を背景に、2006年以降、同性婚を法制化するための法案が7回も国会に提出されましたが、採択には至りませんでした。
「そうした中、2015年に台湾大学のフランス人教授が自殺するという事件がありました。彼は35年間、台湾人男性とパートナー関係にありましたが、パートナーが先に亡くなりました。パートナーとの最期、治療方針に家族として関われず、共に暮らしていたマンションの相続もできず、うつ状態になってのことでした。これが、同性間の婚姻が認められないことによる悲劇として、大きな社会的反響を呼びました」
 2016年の総統選挙で蔡英文総統が同性婚支持を表明して当選しました。しかし、反対勢力も根強く、「反対派は街に出て、立法院を取り囲むデモをしてきました。同性婚が実現すれば、伝統的で幸せな家庭が壊れると彼らは主張しました。キリスト教の人たちは聖書に反するとしました。これに対して、2016年10月には、25万人の賛成派が参加する大きなデモが行われました。参加者は当事者団体だけでなく、支援者、若い世代も多かったです。若者たちが運動の主体でした」
 2017年5月、大法官会議は同性間の婚姻を規定しない民法は違法であるとして、立法を命じました。アジアで初の同性婚の法制化へ踏み切る大きな決断でした。鈴木教授によると、違憲だとした判断のポイントは2つ。日本の同性婚訴訟と同様の争点でもあります。
 1点目は、台湾の憲法22条で保障されている「婚姻の自由」との関係です。
「大法官は『婚姻適齢にある配偶者のいない者は、本来結婚の自由を有しており、それには「結婚するかどうか」と「誰と結婚するか」の自由が含まれる。この自己決定は人格の健全なる発展および人間の尊厳の護持にかかわり、重要な基本権であり、憲法22条の保障を受けるべきである。婚姻の自由とは憲法上の基本権であり、マイノリティの基本権に関わる問題である』として、立法不作為を指摘しました」
「この憲法22条は、日本国憲法24条と同じく、同性婚を想定していませんでした。日本の同性婚訴訟とほぼ同じ枠組みですが、結論は違憲。憲法を発展的に解釈したところ、民法が違憲になりました」
 もう1点は、法の下の平等を定めた台湾の中華民国憲法7条との関係です。「平等権には、性的指向による差別も含んでいること、異性間にだけ婚姻を成立させているのは、同性に性的指向が向く者に不利な差別的扱いである」などと指摘し、同性愛者はマイノリティであり、政治的弱者であることから、民主的手続きで法律上の劣勢を挽回することは難しいとされました。
 そして、「伝統的な家族を破壊する」という反対に対しては、「異性婚の当事者の権利、義務には変更はない」として、影響がないことを示しました。
「反対論の中には、結婚が出産育児を目的としたものであるという意見がありましたが、それについても、異性婚の不可欠要素ではないとしました。つまり、伝統家族崩壊論も、出産育児目的論もばっさり否定しています」
 鈴木教授は、台湾での同性婚実現から日本が学べるところは多いと語ります。
「憲法解釈は社会のコンセンサスと一致しているものであり、すでに変わってしまっている社会規範を追認するということだ、という指摘があります。そして私たちは、その社会規範を変えることができます。日本において、そのメルクマールになるのが、パートナーシップ制度だと思っています。同性婚訴訟で裁判官を説得するためには、先に私たちの社会を変えておかなければなりません。同性婚訴訟の判決が出る前に、日本の人口の半分をカバーする自治体でパートナーシップ制度ができれば、それを裁判所に追認してもらえればいいわけです。今年から大阪府がパートナーシップを始め、やっと人口の2割を超えました。来年の判決が楽しみです。できるだけ早い時期に、台湾のような憲法判断が出されることを切に願っています」

 


合法化初年の同性婚件数は2939組 女性同士が約7割/台湾(中央社フォーカス台湾)
http://japan.cna.com.tw/news/asoc/202002240006.aspx

「同性婚は伝統的家族を壊す」反対が強かった台湾 アジアで初めて実現した理由(弁護士ドットコム)
https://www.bengo4.com/c_23/n_10824/

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