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アジア初の同性愛者の大統領が誕生するかもしれません

2020年03月30日

 東ティモールの元大統領補佐官であり、2022年の大統領戦への出馬を予定しているベラ・ガルヨスは、国内で唯一、同性愛者であることをカミングアウトしている女性で、LGBT支援活動もしている方です。彼女はアジア初の同性愛者の大統領になるかもしれないと言われています。

 
 1972年に東ティモールに生まれたベラ・ガルヨスは、信じられないくらいタフな幼少期を過ごしています。インドネシア軍の侵略下で、兄弟を飢餓で亡くし、父親にわずか5ドルでインドネシア軍に売り飛ばされ(ベラの母親が命をかけて彼女を救い出しましたが、母親もまた身の危険を感じるような家庭内暴力を受け続けていたそうです)、軍による薬品投与で子どもが産めない身体になり、その後、少女兵として独立運動に身を投じた後に、カナダに亡命しました。
 海外での独立運動、国連開発機関への勤務を経て、2002年に東ティモールがインドネシアから独立した後、大統領補佐官に就任しました。2015年には、友人である日本人夫婦の起業家が立ち上げた一般社団法人Earth Companyの支援で、東ティモール初の環境学校を設立。農園や宿泊施設やレストランも併設するルブロラ・グリーンヴィレッジへと発展させました。彼女は、アジアで最も貧しい国と言われている東ティモールを、持続可能な開発へと導くためにソーシャル・イノベーションを起こしている人であり、同性愛者であることをカミングアウトしている国内唯一の女性として、自らの経験と同じ境遇に苦しむLGBTの子どもたちを支援するプロジェクトも始めました。

 東ティモールには、親から虐待を受けたり、捨てられたり、教師や友達からも追いやられ、学校にも行けず、就職もできないLGBTの子どもや若者がたくさんいます。そんな若者たちを支援するため、オーストラリアからの助成でシェルターを建設し、雇われずとも生計を立てられるように職業訓練を提供しているほか、課題の根源的な対策として、LGBTの子どもを虐待をする親と直接話し合い、理解を促しています。元大統領補佐官でもある有名人のベラの話を聞いて、初めてLGBTに理解を示してくれる親も多いそうです。
 レズビアンであるベラは、自身も、男の子のように振る舞う彼女を毛嫌いした父親にインドネシア軍に売られるという経験をしています(ちょっと言葉が出ないですね…残酷にもほどがあります)。当事者だからこそ、被害者の気持ちを誰より理解することができ、その課題の真の弊害、深刻さ、根深さを知っています。そして、LGBT差別に苦しむ人たちの信頼を得て、彼らの「希望」となっています。
 LGBTへの差別や暴力が絶えない東ティモールという国でカミングアウトすること、また世間のバッシングも予想されるなかでLGBTのためのシェルターを設立することには、大きな勇気が必要だったはずです。しかし彼女には、「止まる」という選択肢がありません。それは、彼女が多くの人たちの思いを背負い、LGBTの未来を託されているからなのです。
 ベラは「自分が生きた苦悩を、次世代に絶対に継がない」というゆるぎない信念と覚悟で、「社会的弱者を作らない社会」を創るために働き続けています。
 
 ベラ・ガルヨスは2022年、東ティモール大統領選挙に出馬します。元大統領でノーベル平和賞受賞者であるジョゼ・ラモス=ホルタ氏をはじめ、若者、女性、LGBT、その他、変革を求めるたくさんの人々が支持を表明しています。当選すれば東ティモール初の女性の大統領、そしてアジア初の同性愛者の大統領が誕生します。

 

参考記事:
人身売買された過去も 東ティモール大統領候補の波乱の人生(Forbes JAPAN)
https://forbesjapan.com/articles/detail/32924
難民から大統領補佐官になった彼女が東ティモールで起こすイノベーション(朝日新聞)
https://globe.asahi.com/article/12755093

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