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「ヒース・レジャーは『ブロークバック・マウンテン』をネタに笑うことを許さなかった」と、共演者のジェイク・ジレンホールが明かしました

2020年04月09日

 名作中の名作として名高いゲイ映画『ブロークバック・マウンテン』に出演したジェイク・ジレンホールが、雑誌のインタビューで共演した故ヒース・レジャーについて語り、実はアカデミー賞授賞式のオープニングで『ブロークバック・マウンテン』についてのジョークを言ってほしいというオファーを受けたものの、ヒースが「冗談のネタにはしたくない」と言って断ったというエピソードを明かしました。
 

 1963年夏、ワイオミング州のブロークバック・マウンテンの山中で羊の放牧を行う季節労働者としてイニスとジャックが雇われ、二人は山中で友情を深めていきましたが、いつしか愛し合うようになります。山を降りた二人は、それぞれ女性と結婚し、家庭を持ちますが、あのブローバック・マウンテンで過ごした幸せな日々を忘れることができず、秘密の関係を続け…。
 「男らしさ」の象徴である精悍なカウボーイたちの「ひと夏の恋」が、「男らしさ」に取り憑かれたホモフォビアな社会のせいで、無残にも打ち砕かれていく…その様を、これ以上ないくらい、美しくも悲しい物語として見事に描いたピュリッツァー賞受賞作家E・アニー・プルーの小説を、『ウェディング・バンケット』のアン・リー監督が映画化。全米どころか全世界が泣いた名作中の名作です。音楽も素晴らしいです(当時、ゲイナイトでもよくかかってました)
 ヴェネツィア国際映画祭金獅子賞(グランプリ)、英国アカデミー賞作品賞、ゴールデングローブ賞作品賞など、多くの映画賞を受賞し、2007年のアカデミー賞でも作品賞受賞が本命視されていたにも関わらず、ふたをあけてみれば監督賞と脚色賞しか獲れず、映画アカデミーが作品賞を与えなかったのはゲイ差別だとブーイングが起きたという話は有名です。それだけ映画界に影響を与え、熱い支持を得た作品でした。今でも『ブロークバック・マウンテン』を心の名作映画として胸の中で大事に思っている方が世界中にたくさんいると思います。
 
 当初『ブロークバック・マウンテン』の企画に参加していたガス・ヴァン・サントが、レオナルド・ディカプリオ、ブラッド・ピット、マット・デイモン、ライアン・フィリップらにオファーしたものの全員から断られたと明らかにしていますが(詳しくはこちら)、2005年当時は、『ブロークバック・マウンテン』のような男どうしのセックスを正面から描く作品に出演するスター俳優はいなかったそうです。その後、プロジェクトがアン・リー監督の手に移り、無名のヒース・レジャーとジェイク・ジレンホールがキャスティングされることになりました。
 ヒース・レジャーは『ブロークバック・マウンテン』への出演をきっかけに一躍有名になり、『ダークナイト』(2008)のジョーカー役で世界に衝撃を与える演技を見せましたが(『ジョーカー』のホアキン・フェニックスが受賞スピーチでヒースへの敬意を表しています)、映画の公開を待たずに睡眠薬の過剰摂取で亡くなりました。
 ジェイク・ジレンホールも同様に映画界で名を上げ、『ナイトクローラー』『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』などたくさんの作品に様々な役で出演し、「カメレオン俳優」との異名をとるようになりました。
 
 そんなジェイク・ジレンホールが最近、メンズファッション誌『Another Man』のインタビューで当時を振り返り、故ヒース・レジャーとの思い出についても語りました。
「2007年のアカデミー賞授賞式で僕たちにオープニングをやってほしいとアカデミーは言ってきたんだ。なにかあの作品のジョークを言ってほしいって。でもヒースは断った。僕は『なら、やるよ』って感じだったんだけど。僕はいつも『楽しんでもらえるならそれでいい』って考えだからね」
「でもヒースは『僕にとってはジョークじゃない。このことを冗談のネタにはしたくないんだ』と話していた」
 当時のアメリカ社会はまだまだホモフォビックで、『ブロークバック・マウンテン』をネタにして笑ったりする人もいたとジェイクは語っています。
「僕がヒースのことをとても好きだったのは、彼がそういう人だったからだ。彼は絶対にあの作品をネタにはしなかった。誰かがあの映画のストーリーについて冗談を言うと『違う、この作品は愛を描いたものだ。やめてくれ』と答えていたよ」

 もし、ストレートであるヒースとジェイクが、アカデミー賞のオープニングで『ブロークバック・マウンテン』をネタにして笑いをとるようなことをしていたら、ゲイのファンはもちろん、『ブロークバック・マウンテン』を観て心からの涙を流した方たちも、それこそブーイングだったことでしょう。作品の崇高なテーマを(ゲイコミュニティを)傷つけたくないという自身の信念を貫いたヒース・レジャー(これがアライというものです)。その心意気にあらためて拍手を贈るとともに、28歳という若さで亡くなってしまったことにあらためて弔意を表するものです。


 これを機に、不朽の名作『ブロークバック・マウンテン』をぜひご覧いただけたら、と思いますが、アマゾンプライムでは現在は観ることができなくなっていて、U-NEXTなどで視聴できるようです。以下、配信サービス一覧です(いずれも初月無料でお試しいただけるそうです)

『ブロークバック・マウンテン』配信サービス一覧
https://doga.hikakujoho.com/library/00010744.html

 
 

参考記事:
ジェイク・ジレンホール、ヒース・レジャーは「『ブロークバック・マウンテン』を絶対ジョークにしなかった」(ELLE girl)
https://ellegirl.jp/article/c_heath_ledger_refused_present_oscars_20_0408/
ジェイク・ジレンホール、ヒース・レジャーがアカデミー賞出演を断った理由を明かす。(VOGUE)
https://www.vogue.co.jp/celebrity/article/jake-gyllenhaal-heath-ledger-refused-oscars-brokeback-mountain-gay-jokes
ヒース・レジャー、アカデミー賞のオファーを辞退していた!その「理由」は見習いたい(フロントロウ編集部)
https://front-row.jp/_ct/17355190
薬物死の個性派俳優、男同士の愛を笑いものにすることを拒否 アカデミー賞式典欠席(デイリースポーツ)
https://www.daily.co.jp/gossip/foreign_topics/2020/04/09/0013258405.shtml

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