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アンチLGBTの動きが強まるポーランドで、ゲイカップルがレインボーカラーのマスクを配布し、話題になっています

2020年04月21日

 LGBTへの差別が激化しているポーランドで、ゲイカップルが街角でレインボーカラーのマスクを配り、人々に友好を呼びかけたことが、世界のLGBTメディアで話題になっています。
 
 ニューズウィーク日本版によると、保守化・右傾化が進むポーランドでは、LGBTを排除するような政策の導入が進められています。
 昨年2月、リベラル寄りのワルシャワ市長ラファウ・トゥジャスコフスキがLGBTの権利を保障する声明に署名し、WHO(世界保健機関)のガイドラインに沿って学校の性教育にLGBTを取り入れることを宣言すると、保守系の政治やメディアが一斉に反発、地元の保守活動家ヤセク・コトゥラは「LGBTは異常で、「雌鶏を襲うキツネ」であり、病んだ少数派が健全な社会の主流に自分たちを押しつける試みだ」「私は、孫の世代のために西洋の退廃と俗化と戦う」などと述べ、「LGBTフリーゾーン」運動を起こしました(注:フリーは「無料」とか「解放」ではなく、バリアフリー、スモークフリーなどのフリー、「〜が無い」「〜は禁止」という意味です)
 ポーランドでは現在、国土の約3分の2にあたる80以上の自治体が「LGBTフリーゾーン」を宣言しています。これらの地域では、多様性への寛容を説く行為や、平等を推進するNGOなどへの資金援助が禁じられています。
 また、与党「法と正義(PiS)」党首で前首相のヤロスワフ・カチンスキは、ワルシャワ市長の声明は「家族と子どもたちに対する攻撃」であり、LGBTはポーランドを脅かす「輸入された」イデオロギーであると述べています。
 7月には、ポーランド東部ビャウィストクでのプライド・パレードで、観衆が石や卵を投げ、汚く罵るなどして、警察と衝突しました。
 さらに同月、与党派の雑誌『ガゼタ・ポルスカ』が、レインボーカラーの上に大きな黒いバツ印を書いた「LGBTフリーゾーン」と書かれたステッカーを付録として発売し、非難を浴びました。
 2015年、大量の移民がヨーロッパで論争を巻き起こした際、PiSのカチンスキ党首は移民を「寄生虫や原生動物」と呼んで激しく非難されましたが、昨年10月の総選挙にあたり、保守層の支持を得るために、移民に代わってLGBTを新たな標的としたのではないかと見る向きもあります。PiSは、愛国心を鼓舞することで支持を集め、安定多数を獲得しています。
  そしてつい最近、国会は、性教育をした教師を有罪とし、同性愛を小児愛と比較するようなひどい法律を撤廃する提案を、否決しました。
 
 このような厳しい情勢の下、ポーランド(特に「LGBTフリーゾーン」に該当する地域)のLGBTは生きづらさに直面しています。
 しかし、ジェイコブ&デヴィッドというゲイカップルが、この状況をなんとか変えていきたいと考え、差別への憤りをぶつける代わりに、優しさと前向きさで臨むことを思い立ちました。
 ジェイコブは、おばあさんからミシンを借りて、300個のマスクをデヴィッドと一緒に作りました。そして、グダニスク、グディニャ、ソポトというバルト海に面する3つの街の街角で配りました。
「LGBTを保護する基本的な法律がない。そしてマスクは生産が追いついていない。だから人々にマスクを作って配ることにしたんだ。でも、僕らのマスクはレインボーカラーなんだ! いわゆる「LGBTの疫病」が本当の疫病から人々を守ってくれるというわけ」
 二人のYoutubeの動画を見るとわかりますが、閑散とした街中で、トレーにマスクを載せて、買い物などの用事で外出している人に「どうぞ」と持って行ってもらう形です(「密」を避けています)。何度か緊張が走る場面もありましたが、リアクションは概ね好意的でした。ある場所では、警備員が近寄って来て「君たちはブライベートエリアにいる」と忠告しましたが、説明すると「君たちがこんな素晴らしいことをしているのなら、構わないよ」と言ってくれたそうです。
 ジェイコブは「どんな反応があるか、正直、少し怖かった。けど、人々は僕らのアイデアに共感してくれた。健康への気遣いに感謝していた」と語りました。
「レインボーが人々を怖がらせないだけでなく、人々の安全に役立つ様を見ることができて、とてもよかった。多くのポーランド人は僕らを「疫病」扱いする。だから、本当の疫病に打ち勝つ手助けをしたら、彼らが考えを変えてくれるんじゃないかと思ったんだ。それはナイーブに過ぎるかもしれない…けど、それをやれるとしたら、やらない手はないだろ?」

 この話は、欧米の主なLGBTメディアで一斉に取り上げられ、賞賛されています。
 コロナ禍でどんよりしがちな街で、300人の人々がレインボーカラーのマスクをつけて歩いているなんて、想像しただけで笑がこぼれます。「それ、どうしたの?」「街角でゲイカップルにもらったんだ」という話が広まるのも、素敵なことです。ある意味、プライドパレードですよね。拍手!
 
 
 
参考記事:
右傾化するポーランド、LGBT差別政策導入で問題に(ニューズウィーク日本版)
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/02/lgbt-14.php
Gay Couple Hands Out Rainbow Masks on the Streets of Poland(Advocate)
https://www.advocate.com/news/2020/4/20/gay-couple-hand-out-rainbow-masks-streets-poland
Gay Couple Make the Gay Propaganda We Need With Rainbow Masks(Out)
https://www.out.com/health/2020/4/20/gay-couple-make-gay-propaganda-we-need-rainbow-masks
Gay couple in Poland take on LGBT+ Free Zones with rainbow face masks(GayStarNews)
https://www.gaystarnews.com/article/gay-couple-in-poland-take-on-lgbt-free-zones-with-rainbow-face-masks/
Polish gay couple hand out hundreds of rainbow masks to fight both coronavirus and their country’s ‘LGBT-free’ zones(PinkNews)
https://www.pinknews.co.uk/2020/04/20/rainbow-masks-poland-lgbt-free-zones-gay-couple-coronavirus-homophobia-law-justice-party/

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