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長年日本で暮らし、20年前に女性と結婚し、母国で性別変更したトランス女性が、日本で性別変更か婚姻解消かを迫られ、葛藤の末、裁判を起こすことを決意しました

 アメリカで性別変更をしたトランスジェンダー女性のエリン・マクレディさんは、日本で性別変更を申請したところ、20年前から婚姻関係にある妻との関係を結婚ではなく「縁故者」に変えるように言われ(同性婚が認められないため)、葛藤の末、国を相手取って裁判を起こすことになりました。

 
 アメリカ人のエリン・マクレディさんは言語学者で、青山学院大学で英米文学科の教授を務めています。2000年に日本人女性の緑さんと結婚し、今年、結婚20周年を迎えます。3人の息子たちとともに東京都内で暮らしています。日本でもキャリアを形成してきており、息子たちも日本で学校に通っているため、日本で家族として暮らしていくことを望んでいます。
 しかし、2018年10月、幼少期から抱いていた自身の性別違和を解消するため、出身地のテキサス州で性別を男性から女性に変え、パスポートなどのID上の表記も女性に変更し、日本の地元の区役所でも性別変更をしようとしたところ、受け入れられず、「性別を変更するのであれば、続柄を『縁故者』に」という提案のみが返ってきました。日本では同性婚が認められていないため、婚姻関係を書類上「解消」せざるをえないのです。
 お二人は「家族であり続けたい」との思いから、婚姻関係を維持しています。10代の息子たち3人は、エリンさんの性別変更をすんなりと受け入れており、書類上の話であっても家族がバラバラになることも「絶対に避けたい」といいます。

 エリンさんは、アメリカのパスポートでは女性、日本在住の外国人が持つ在留カードもパスポート上の情報が記載されるため女性となっているのに、日本で発行される健康保険証や運転免許証などは日本の住民票の情報に基づいてすべて男性の表記になっているという、いわば性別の「ねじれ状態」にあります。
 2つの異なる性別が記載されたそれぞれの国の身分証を持ち歩くことへの困惑もあります。
「私は女性であり、女としての私の人生を歩み続けます。そのことに変わりはありません。しかし書類上2つの性別を持つことで、日常生活で法的な問題に直面する可能性もあるのではないかと思います」
「例えば、法的にはどちらの性別のトイレを使うことが許されているのでしょうか? 日本政府にとって私の正式な性別とはどちらなのでしょうか? 本当に変な状況に置かれていて、どうすればよいのかわからないというのが正直なところです」

 苦悩や葛藤の末、エリンさんと緑さんは、日本で性別変更をしても婚姻関係が認められるよう、近く国を相手取って裁判を起こすことを決意しました。
「同性婚が認められない現実に対し、一人でも多く声を上げていくことで変わっていくと思います。本当にこれでいいんですか?と問いかけたい。大きい意味で、日本や社会が変わってほしいからこの裁判をやろうと決めました」
 緑さんは「ある国では二人の結婚が認められているのに、日本では認められないという現状があります。行動を起こせる人が起こさなければと思いました」と語ります。

 すでに先行している「Marriage for all Japan(結婚の自由をすべての人に)」一斉提訴と「思いは一緒」とお二人は語ります。
 お二人は自身のケースを「特例」として国に認めてほしいわけではなく、最終的には「日本で同性婚が認められること」を目標としています。

 日本に住むエリンさんの外国籍の友人でも、既婚者のトランスジェンダーの人たちがいて、エリンさんと同様に日本での性別変更を希望しているものの、実際に行動に移せずにいるそうです。配偶者ビザを保持しているため、性別変更をすることで婚姻関係が「解消」されてしまえば、日本に住む在留資格も失うからです。
 エリンさんは永住権を取得しており、「友人や同じ境遇にいる人たちのためにも闘いたい」と語っています。

 また、日本では、未成年の子どもがいると性別変更は認められませんが、エリンさんはこうした制約のない出身地テキサス州の裁判所で性別を変更できました。
「私は日本で婚姻関係にあるなかでも、性別変更ができた特殊なケースです。もし私が日本人であればできなかったことなので、私には日本に住んでいるLGBTQ+の人たちが置かれる状況を改善する努力をする責任があると思いました。それは自分の問題を解決するより、ずっと大切なことだと感じます」
 
 お二人の裁判には、「Marriage for all Japan(結婚の自由をすべての人に)」弁護団のメンバーでもある永野靖弁護士、山下敏雅弁護士、加藤慶二弁護士のほか、高遠あゆ子弁護士が弁護団に加わることが予定されており、裁判に向けてクラウドファンディングが実施されました(※5月10日に終了)
 予定弁護団は「今回の二人には『トランスジェンダーの性別変更に手術を要する日本と要しない他国』、『同性婚ができない日本とできる他国』という事情から、極めて理不尽な状況が降りかかっています」「エリンさんがアメリカで女性に性別変更をしたにもかかわらず、日本でエリンさんが女性としてきちんと取り扱われない。二人は日本で婚姻しているのにもかかわらず、エリンさんの性別変更によって、緑さんの住民票上の記載を『妻』でなくそうとする。まったくおかしなことです」「おかしいことに『おかしい』と声を上げて闘うことは、とても大切で、そして、とても労力を要することです。どんな人も一人ひとりが尊重される社会、人権がきちんと保障される社会を皆さんと共に築いていきたいと思います」とのメッセージを発しています。
 本当は裁判に向けて5月にも弁護団と本格的な準備を始める予定でしたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、時期を遅らせることになったそうです。
 
 お二人も語っているように、エリンさんのケースが特殊で、エリンさんの性別変更が特例で認められればよいということではなく、そもそも日本で同性婚が認められていないということや、未成年の子がいては性別変更が認められないという、欧米先進国に比べて著しく不自由な法的状況であるということに根本的な問題があるわけで、どちらも早期に解消されることが望まれるのではないでしょうか。
 今後も、お二人の訴訟を、「Marriage for all Japan(結婚の自由をすべての人に)」とともに見守っていきたいと思います。
 
 

参考記事:
「家族であり続けたい」結婚20周年の2人が、国を提訴すると決めた理由(BuzzFeedNews)
https://www.buzzfeed.com/jp/sumirekotomita/elin-midori-mccready
18年間も結婚していたのに「妻」と認められなくなるなんて(BuzzFeedNews)
https://www.buzzfeed.com/jp/sumirekotomita/marriage-equality-in-japan
夫はある日、女性になる決意をした。2人の”妻”の思い(BuzzFeedNews)
https://www.buzzfeed.com/jp/sumirekotomita/living-true-to-herself

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