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上司のアウティングでうつ状態に陥ったゲイの方が、職場がある豊島区に救済申し立てを行いました

2020年06月12日

 性的指向を上司にアウティングされた20代のゲイ男性(仮にAさんとします)が、職場がある豊島区に対し、事業者への指導などを求める申し立てを行ったことが明らかになりました。

 Aさんは2019年に保険代理店に営業職として入社しました。最終面接で書類を記入する際、緊急連絡先に(同性パートナーシップ登録をしている)同性パートナーの名前を記入し、会社の代表と上司にカミングアウト、「同僚には自分のタイミングで伝えたい」と話しました。
 しかし、その1ヵ月後、上司がパートの従業員に、Aさんに同性パートナーがいることを暴露(アウティング)したことが発覚しました。「一人ぐらい、いいでしょ、と上司から笑いながら言われた」そうです。Aさんはパートの従業員から無視されたり避けられるようになりました。その一件以降、Aさんは上司を信用できず、必要最低限の業務上のやり取りをして、それ以上のコミュニケーションを取れなくなってしまったといいます。上司からは日常的に暴言を吐かれるようになり、仕事を休みがちになると、電話で「ふざけるな」「バカ」「頭が悪い」「いい加減にしろ」と暴言を吐かれたり、会議で上司に意見をしたところ頬を殴られるなど、ハラスメントがエスカレートしていったといいます。「他の社員にも上司が自分の性的指向を広めているのではないか」という不安に苛まれ、動悸やめまい、震え、対人恐怖、不眠などの症状が生じ、電車に乗ることもできず、会社に行けなくなり、11月に精神科を受診し、抑うつ状態と診断を受け、現在まで休職しているそうです。なお、Aさんは社長へ相談し改善を求めたりもしましたが、労働環境は改善されなかったそうです。

 心身ともに限界だったAさんは、パートナーの方のサポートもあり、「こんな理不尽なことには納得できない」という思いを抱くようになり、相談機関を探し、POSSEという労働相談のNPO法人を見つけ、総合サポートユニオンに加入。団体交渉で改善を求めることを決意しました。
 団体交渉は2020年3月と5月に行いましたが、アウティングに関する会社側の主張は「本人の同意なく上司がパートへ言うというアウティング行為は認めるが、Aさんが職場でオープンにしていきたいという意向があったので、良かれと思ってやったことだ」というもので、謝罪や賠償、再発防止策の策定などにも応じませんでした。
 
 Aさんが勤める会社は東京都豊島区にあります。
 豊島区は2019年3月に男女共同参画推進条例を改正し、性的指向や性自認による差別の禁止や同性パートナーシップ証明制度、そして「アウティングの禁止」も盛り込みました。条例は苦情処理委員会の設置を規定しており、区民は、条例に違反する区の施策に対する改善や人権侵害について救済の申し立てができるようになっています。必要に応じて委員会による調査が行われ、区から関係者に対して助言や指導、人権侵害の是正の要請が行われます。
 6月12日、Aさんは職場でアウティング被害を受けたことについて豊島区男女平等推進センターに申し立てを行い、会社への指導などを求めました。センター側は所長が対応し、「アウティングはあってはならないこと。区としても遺憾に思い、大変残念なこと。重く受け止める」と回答がありました。アウティング被害に関する個人の救済の申し立ては、豊島区では初めてのことだそうです。
 豊島区への申し立て後、Aさんは(石川大我参議院議員らの応援も受けて)本社前でアウティングについて理解を求める宣伝行動も行いました。
 
 今月からパワハラ防止法が施行され、SOGIハラやアウティングの防止策を講じることが企業に義務づけられましたが、Aさんの勤める会社は、防止策を講じていないどころか、そもそもアウティングがどういうことなのか、何が問題なのかということを全く認識していないようです。この会社は「善意でやったこと」と主張していますが、法令や条例で禁止されているようなことがそのような言い訳で許されるはずがありません…。速やかに謝罪し、再発防止に努めるべき、と区からも指導が入るのではないでしょうか。
 
 Aさんは今後、精神疾患を患うほどのハラスメント受けたことについて労災を申請する予定です。
「アウティングがどれほどマイノリティを傷つけるかを知ってほしい。他の人に同様の経験をしてほしくない」とAさんは語ります。
 今回のAさんの勇気ある告発が、職場でのSOGIハラやアウティングの防止につながり、被害に苦しむ当事者が少しでも減っていくことを祈ります。


※なお、13日(土)・14日(日)にセクシュアルマイノリティ向けの無料労働相談ホットラインが緊急で開設されるそうです。職場でLGBT差別やアウティングなどで困っていることがあれば、この機会にぜひ、相談してみてください。
「セクシャルマイノリティ労働相談ホットライン 」
日時:6月13日(土)、14日(日)13時~17時
番号:0120-987-215(通話料・相談料無料、秘密厳守)
主催:特定非営利活動法人POSSE


 

参考記事:
「一人ぐらいいいでしょ」 性的マイノリティーへの「アウティング」と闘う(Yahoo!)
https://news.yahoo.co.jp/byline/konnoharuki/20200613-00183178/
善意でも危険。職場で同性愛暴露され精神疾患に。豊島区に救済を申し立て(Yahoo!)
https://news.yahoo.co.jp/byline/matsuokasoshi/20200612-00183061/
「上司がアウティング」同性パートナー持つ男性が会見(朝日新聞)
https://www.asahi.com/articles/ASN6D6760N6DULFA016.html
性的指向を上司に暴露された男性、豊島区へ救済申し入れ 会社側は「"善意"でアウティングした」(弁護士ドットコム)
https://www.bengo4.com/c_18/n_11334/

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