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ニューヨーク市保健局がCOVID-19予防のためのセーファーセックスの指針を更新しました

2020年06月14日

 ニューヨーク市保健局は6月8日、COVID-19予防のためのセーファーセックスのガイドラインを更新しました。3月21日に発表したガイドラインに比べると少し緩くなっていて、いかに顔と顔が近づかないようにするかの「創意工夫をこらした」やり方を勧めるなどしています。
 

 ニューヨーク市保健局が3月21日に発表したCOVID-19予防のためのセーファーセックスのガイドラインは、他の機関がこのようなテーマを重んじてガイドラインを発表するまでには至らなかったこともあり、すぐに世界中に広まり(日本でも翻訳されて、HIV関連の団体などで紹介されています→例えばこちら)、ある意味、コロナ禍におけるセーファーセックスのグローバルスタンダードのようになっていました。
 みなさんご存じのように、ニューヨークはたいへん深刻な状況に見舞われましたが、それでも、一律に「セックス禁止!ダメ、絶対」と厳罰主義で押さえつけるのではなく、人々のセックスへの希求を尊重し、このような具体的でわかりやすい(誰もが納得できるような)ガイドラインによって人々に理解を促し、協力を求めていきました。
 
 その後、パンデミックのピークが過ぎて状況が落ち着いてきたことを受けて、ニューヨーク市保健局はCOVID-19予防のためのセーファーセックスのガイドラインを更新し、新たな指針を示しました。
「だけど、セックスしてもいいの?」
「はい! どのようにセーファーセックスを楽しみながらリスクを減らすかということについてのヒントをお伝えします」
と宣言されているように、「ダメ、絶対」ではない、「より安全な」方法が具体的にわかりやすく提示されています。
 冒頭にハームリダクションというワードが出てきました。このガイドラインのスタンスを示す重要なポイントです。
 ハーム・リダクションとは、個人や社会がもたらす危害(harm)を軽減する(reduction)ための社会実践のことで、公衆衛生および社会政策上の概念枠組・実践モデルのひとつです。薬物利用者が関わる犯罪による〈社会的危害〉と薬物利用者の深刻な濫用という〈個人への危害〉に関する〈現実的対応〉を模索するなかで創案され、静脈注射使用者の間でのHIV/AIDS流行の深刻化を受けて、広く採用されるようになりました。例えば薬物依存症の方に対して、薬物使用自体はジャッジせず(刑務所に収監するのではなく)、安全な注射針や見守りの環境を提供するようなことです(欧米ではそのための施設が設置されていたりします)。問題を抱える人を孤立させずに「その問題について話し合える関係性」を維持しながら、少しでも健康被害や危険の少ない解決策を探っていく方法論です。
 そもそもセーファーセックスという考え方も、HIVに感染した方や、HIVに曝露しやすい集団(ゲイ・バイセクシュアル男性など)に対して、全面的にセックスを禁止するのではなく、一人ひとりが感染のメカニズムを理解し、創意工夫で「より安全な」セックスの方法を考え、実践しようと提案する現実的にして建設的な態度ですので、ハーム・リダクションと似ていると思います。
 最新のガイドラインでは、どうしてもハッテンしたい時のセーファーな方法として、フェイスカバーやマスクをすること、できるだけ顔と顔が近づかないようにしながらの相互オナニー、壁越し(グローリーホールを使って?)など「創意工夫をこらした」やり方を提唱しています(素晴らしいですね)。withコロナ時代の新しいスタンダードとなるのではないでしょうか。

 おそらくもう少ししたらいろんなところできちんとした日本語訳が掲載されると思いますが、取り急ぎ、翻訳の間違いもあるかもしれませんが、全文を訳してみました(「COVID-19についての情報はこちら」といった箇所は割愛しています)。原文はこちらです(PDFです)
 
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セーファーセックスとCOVID-19

 全てのニューヨーカーはCOVID-19の感染拡大を減らすため、できるだけステイホームして他人との接触を最小限にすべきです。

 セックスは、人生における正常な営みであり、すべての当事者間で同意が得られるべきものです。この文書は、セックスの際にCOVID-19感染のリスクを減少させるための方法の提案です。セックスやセクシュアリティについての意思決定は個人と公衆衛生との間でバランスが取られる必要があります。この長引く公衆衛生上の危機の間も、人々はセックスを望みますし、そうすべきです。あなた自身やパートナー、私たちのコミュニティのリスクを減らすために、ハームリダクションの戦略を用いることを考えましょう。

だけど、セックスしてもいいの?
はい! どのようにセーファーセックスを楽しみながらリスクを減らすかということについて、ヒントをお伝えしましょう。

1. COVID-19の感染の仕方を知る
◎あなたはCOVID-19感染者から感染する可能性があります
・このウイルスは、COVID-19に感染している人の唾液や粘液、息の中の粒子を通じて広がります、たとえその人が無症状であったとしても。
◎COVID-19とセックスの関係について、まだわかっていないことがたくさんあります
・このウイルスはCOVID-19感染者の糞便や精液から発見されています。
・COVID-19がヴァギナへの挿入やアナルセックスで感染するかどうかはまだわかっていません
・他のコロナウイルスはセックスではなかなか感染しないことがわかっています。この事実は、おそらくセックスはCOVID-19の通常の感染経路ではないだろうと推測させるものです。

2. 近しい人たちとだけセックスしよう
◎あなた自身が最も安全なセックスパートナー
 オナニーではCOVID-19は広まりません。行為の前後に少なくとも20秒は石鹸と水で手(やセックスの道具)を洗うようにすればさらに安全です。
◎次に安全なパートナーは、一緒に暮らしている人 
 密な接触(セックスを含む)は、ごく身近な人間関係の中だけにとどめておくことは、感染拡大を防ぐことに役立ちます。
・同意したパートナーとだけセックスしましょう。
◎同じ世帯以外の人との密な接触(セックスを含む)はできるだけ限定するべき
 もし家の外の人とセックスする際は、相手の人数を可能な限り少なくし、信頼できる相手を選びましょう。例えばPrEPをしているかとかコンドームを使うとかセーファーセックスについて話すように、COVID-19のリスクとなる事柄について話しましょう。彼とハッテンする以前にCOVID-19について尋ねましょう。
・いま症状があるか、あるいは、この14日以内に症状があったかどうか?
 COVID-19に感染した人の多くは症状が出ますが、無症状で感染させる可能性もあります。熱、せき、喉の痛み、呼吸が短い、といった症状があるかどうか尋ねましょう。ただ、症状があるかどうかを確認しさえすればCOVID-19を持っているかどうかが完璧にわかるというわけではないということに注意してください。
・PCR検査を受けたことがあるか?
 症状が出てから少なくとも10日経っている回復者、そして少なくとも3日間無症状の人は、おそらく感染させることはないでしょう。
◎2人だけなのか、3人以上なのか
 大勢が集まることは安全ではありません。複数の人との密な接触は避けるべきです。しかし、もしあなたが3人以上の集まりで相手を見つけようとする場合は、リスクを減らすために、以下のことがヒントとなるでしょう。
・ゲストリストは少なめに、親しい人だけにしましょう。
・その都度相手を変えるのではなく、同じ人と継続させるほうがよいです。
・より広く、オープンな、換気された場所を選びましょう。
・マスクなど顔を覆うものを着け、キスは避け、洗ってない手で目、鼻、口を触るのをやめましょう。
・アルコール消毒液を持参しましょう。
◎いつもネットでセックス相手を見つけてる人や、セックスで生計を立ててる人へ
 今は、直接会ってセックスすることは控える(お休みする)ことを検討してください。ビデオデート、セクスティング(セクシーなテキストや画像などをメールで送り合う)、チャット、Zoomを使ったパーティなどもありますよ。
◎身近な人たちの輪の外に出てセックスする、あるいはハッテンしようとする時
・あなた自身が症状がないか確認しましょう。
・PCR検査をより頻繁に受けましょう。NYでは無料で検査が受けられます
・高齢者や基礎疾患のある方のような、重症化するリスクのある人々との接触は用心してください。
・顔を覆うようにして、手をよく洗って、感染のリスクを最小限にしましょう。

3. 抗体を持っていることまたは以前の検査で陽性だったということが免疫を獲得したということには必ずしもならない。検査結果をセックスについての決定の手助けとすることについては慎重に。
◎抗体検査で陽性だった場合、過去に感染していたということは言えますが、免疫を獲得して再感染しないということは意味しません
◎過去にPCR検査で陽性の診断を受けた場合、かつてCOVID-19を持っていたことを意味し、そしておそらく再感染する可能性は下がります。それがどのくらいの保護の強さを持ち、どのくらい長く持続するのかはわかっていません。
◎これらの検査結果を、セックスの相手やどんなセックスをするかの意思決定に用いることには慎重に。なぜなら抗体検査の結果は免疫を獲得したという明確な証拠にはならないから。

4. セックス中は気をつけて
◎キスで簡単に感染します
 パートナーなど密な接触をする人間関係の外にいる人とのキスは避けること。
◎アナルリミング(ケツ舐め)は感染を広げる可能性があります
 糞便に含まれるウイルスが口に入り、感染を引き起こす可能性があります。
◎フェイスカバーやマスクを使用しよう
 あなたの趣味ではないかもしれませんが、今はマスクなど鼻や口を覆う何らかのフェイスカバーを用いることが、さらなる予防につながる手段です。激しい呼吸や、息切れのような浅く速い呼吸は、かなり感染の危険が高いので、マスクを着用したほうがよいです。
◎いつもよりちょっと「ヘンタイ」に
 創意工夫をこらしたセックスの体勢、例えば壁越しに(グローリーホールで?)とか体と体の間にバリアを作って顔と顔が近くならないようなセックスのやり方を編み出しましょう。
◎相互マスターベーションしよう
 フィジカル・ディスタンスを取りつつ、マスクなどで顔を覆いつつ、リスクを減らしましょう。
◎コンドームは唾液、精液、糞便の接触を減らすのに効果的
 オーラルセックス(フェラ)やアナルセックスをする際、コンドームの使用が効果があります。
◎セックスの前後に手洗いをすることが、最も重要
・石鹸で20秒以上手洗いすること。
・ディルドなどの道具も石鹸とお湯で洗いましょう。
・他の人が触るようなキーボードやタッチスクリーンも消毒を。

5. あなたや相手の人が体調不良ならセックスはやめておこう
◎もしあなたの体調が良くないようなら、キス、セックス、密な接触は避けよう
◎もしあなたがCOVID-19に感染している誰かと接触したら、家族以外の人との密な接触を避け、ニューヨーク市のガイダンスに従うこと。PCR検査を受けることが求められる
◎あなたやあなたのパートナーがCOVID-19の重症化の可能性がある基礎疾患を抱えている場合、今はセックスはやめておこう

6. HIVや他の性感染症を予防しよう
◎HIV:コンドームを使うこと、PrEP、HIVが検出限界以下になっていることは、予防に役立ちます。
◎他のSTI:コンドームを使うことが予防に役立ちます。


最新の情報は、ニューヨーク市保健局または米国疾病管理予防センターをチェック。

ニューヨーク市保健局は、コロナ禍の状況の進展によって、上記のガイダンスを変える可能性があります。

2020.6.8
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 ざっくりまとめると、セックス自体でのCOVID-19感染のリスク(まだわかっていません)よりは、マスクなどをして唾液や吐く息を避ける、手洗いをこまめにするなど、日常生活と同様のコロナ感染防止策を取ることのほうに注意を向けましょう、というお話でした。
 グローリーホールの提案もありましたが、マスクを着用してちょっとkinkyに楽しむ工夫としては、流行りのパピーマスクをかぶったプレイとかもいいかもしれませんね。
 セックス一律禁止!or(緊急事態宣言解除になったから)全面解禁!という「ゼロ100」思考ではなく、一人ひとりが感染のメカニズムを理解し、できるだけ感染を防げるよう創意工夫もこらしながら、より安全なセックスを楽しめるように考え、行動していけたらよいのではないでしょうか。
 
 なお、精液からウイルスが見つかった件に関して、感染症専門医の忽那賢志氏は、まだ性行為によって間違いなく感染したと考えられる事例や、ウイルス培養できる(ウイルスに増殖能力がある)ことが明らかになったわけではなく、「現時点では精液から新型コロナウイルスが検出されたことによって、私たちが新たに何か注意すべきことはないだろうと考えられます」と述べています(詳しくはこちら
  

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