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パートナーと死別した経験をもつゲイの精神科医が教える心の癒し方

2020年07月23日

 人生をともにしたパートナーを死別で失ったゲイの精神科医・Tomyさんが自身の経験をもとに心の癒し方をアドバイスする本『失恋、離婚、死別の処方箋 別れに苦しむ、あなたへ。』が発売されました。
 
 新型コロナウイルスがもたらした悲劇のひとつは、患者が亡くなる最期の時さえ身近な人とともに過ごすことができないことだと言われています。過去にパートナーや親友がエイズで亡くなったという方や、自死で亡くなったという方もいらっしゃると思います。あるいは病気や事故で突然、大切な人を喪ってしまうこともあります。死別だけでなく、失恋など様々な別れを経験した人に向けて、苦しみやつらい気持ちをどう受け入れるか、そしてどのように自分を取り戻していくかを優しく説いた本が、『失恋、離婚、死別の処方箋 別れに苦しむ、あなたへ。』(精神科医Tomy著、CCCメディアハウス)です。
 著者は、もちぎさんに続いて今メディアからも大きな注目を集めるゲイの精神科医・Tomyさん。自らを「アテクシ」と呼ぶオネエな語り口が人気で、Twitterのフォロワーは17万超え。疲れた心や弱った心に染み入るツイートは、単に精神科医であるというだけでなく、ゲイとして苦労してきたからということでもなく、かつて人生を共にしたパートナーを死別で失った経験を持つからでした。

 Tomyさんは「彼と出会うために自分はゲイとして生まれてきたのだ、と思えるほどの相手だった」と語ります。突然の他界に、激しく苦しんだそうです。
 死別直後の混乱、そしてそれを振り切るように仕事に打ち込む時期を経て、いったんは仕事もプライベートも落ち着きを取り戻したかのように思えましたが、心身を異変が襲うようになったそうです。例えば、ちょっとした時間にぼうっとすることが増え、一瞬、記憶が飛ぶようなことが起きました。なぜか眠れない状態が続き、筋トレしていてもダンベルを持ち上げられなくなり、仕事でも診察中に患者にかける言葉が出てこないといった支障が出てきたそうです。
 精神科医でありながら、自身がうつ状態に陥ったのです。その後は、仕事量を調整したり、休日に何もせずゆっくり過ごしたりすることで、少しずつ改善していったそうです。
 苦しみの渦中で、Tomyさんは、自らが生きていくために思いついた言葉をメモとして残していました。そうすることで、少しでも楽になる方法を模索しました。また、精神科医として、自分と同じ経験をする人たちに、いつかそのメモが役立つのではないかとも考えました。そんな体験から生まれたのがこの本です。

 「配偶者の死」は、人生に起こるライフイベントの中でも最もストレスがかかる出来事だと言われています。しかし、Tomyさんは、「永遠に続くと思えるような別れのつらさも苦しみも、けっして永遠ではない。時間がかかっても、苦しみは徐々に快方に向かう。過去の記憶は時間が経つほどに詳細が削られていく。なぜなら、新しい経験がデータとして蓄積されていくからだ。残った記憶も、生々しさが次第に薄れていく。苦しみには終わりがある」と語ります。そして、「心が癒えていくプロセスを知識として知っておくことは、自分にいざ「その時」が訪れてしまった際の救いとなる」といいます。
 Tomyさんが、心を癒す方法として紹介しているのは、「書き出す」ということです。まず「いまつらいことは何か」と自問し、思いつく限りの答えを書き出します。出てきた答えを「症状」「考え・感情」「行動」の3つに分類し、そして、「考え・感情」「行動」に分類されたそれぞれを、つらい順に並べ、それぞれについての解決方法を考え、書き出します。考えついた解決方法はできそうなものから実際に試してみて、そのうえで自分の状態を客観的に観察します。こういう、アプローチと検証をくり返すことで、自分にとって効果的な癒しかたが見えてくるそうです。
 書き出すことには、自分自身の話を聞いてあげる「セルフ傾聴効果」、気持ちや考えを整理できる「セルフフィードバック効果」、さらに、過去の記録を振り返ることで状態が良くなっていることに気づける「セルフメモリー効果」など、多くのメリットがあるといいます。
 こうしたことの積み重ねで、着実に前に進んでいるという自信と、未来への展望を持てるようになるそうです。

 さらに、この本では、精神科医としてTomyさんが診てきたケーススタディも多数、紹介されています。
 例えば、「彼が事故で急逝し、心が追いついていかない。生きていることさえつらい」という相談に対しては、まず「ただそこにいるだけでじゅうぶん」とし、そのうえで自分にとって負荷のかかることは避け、いちばん自分が楽な状況を作るようアドバイスしています。
 「思い出すとつらいだけなのに、相手を思い出すようなことばかりしてしまう」という相談には、「あえてクヨクヨ、浸ってみるのもいい」と回答。そうすることで少しでも楽になっていると実感できるのであれば、ということです。
 また、「死別した相手にもっと優しくできたのに」と後悔しているという相談には、伝えたかったことを書き出してみるようアドバイス。書き出すだけでなく、手紙にして供えることも効果があるそうです。


失恋、離婚、死別の処方箋 別れに苦しむ、あなたへ。
精神科医Tomy:著、CCCメディアハウス:刊

 
 おそらくコロナ禍の影響でストレスに悩む方が本当に多くなってきているということもあるでしょう、Tomyさんはほかにもメディアに多数登場し、様々なアドバイスをしています。今抱えている不安やストレスを解消する手立てを見つけたいという方など、ぜひご覧ください。
ゲイの精神科医とエッセイストが語る“この不安からの小さな出口”(FRIDAY)
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参考記事:
大切な人との「別れ」に苦しむ人へ──カリスマゲイ精神科医が授ける自分を取り戻す処方箋(ニューズウィーク日本版)
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/07/post-94010.php

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