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2020年大注目のクィア・ソングライター、ジャスティン・トランター

 今年、レディ・ガガの『クロマティカ』とセリーナ・ゴメスの『レア』に楽曲提供し、「2020年はジャスティン・トランターの年となりそうだ」とも称されている売れっ子ソングライターのジャスティン・トランター。バイセクシュアルでジェンダー・ノンコンフォーミングであることをオープンにしていて、GLAADの主要メンバーとして活躍し、2019年にアメリカ自由人権協会から表彰もされているというスゴい人でもあります。そんなジャスティン・トランターをフィーチャーした記事が『RollingStone』に掲載されていました。

 ジャスティン・トランターは1980年、イリノイ州に生まれました。初めはセミ・プレシャス・ウェポンズというグラム・ロック・バンドのフロントマンとして熱狂的なファンを生み、2006年にニューヨークでレディ・ガガと一緒にライブを行なったことがあった縁で、ガガをセミ・プレシャス・ウェポンズの前座にしていたそうです。しかし、レディ・ガガがあれよあれよと言う間に世界的スーパースターの階段を駆け上がったあと、今度はガガが、セミ・プレシャス・ウェポンズを自身のライブのオープニングとして1年間起用していました。 
 しばらくしてバンドがエピック・レコードから契約を切られたあと、トランターは、ワーナーの重役となったケイティ・ヴィンテンに曲作りの才能を見出され、ポップス界のアーティストたちのために曲を作ることになりました。トレンターの最初の大ヒット曲はフォール・アウト・ボーイの「センチュリーズ」です(2014年から現在までに4度プラチナを獲得しています)
 そうしてトランターはソングライターとして活躍するようになりました。仕事上の苦労も様々ありましたが、それよりも何よりも、曲作りの現場にクィアな人がほとんどおらず、頻繁に気まずい空気が流れ、ホモフォビックな発言もしばしば耳にしたそうです。トランターは「音楽ビジネスの中でも、このソングライティング業界が相当な男社会だということに衝撃を受けたね。バンド活動をしているときは自分の世界を構築するのは自分自身だ。でも、ソングライティングの世界では仕事に関わる人たち全員との共同作業を強いられる。僕のバンドのメンバーは全員ストレートだったけど、彼らはとても進歩的な考え方で、芸術家気取りで、良い意味で変だった。ポップスの世界に入ったら、セッション中にバスケットボールの試合を見ている人がいて、カルチャー・ショックを受けたよ。特に最初の1年は、僕はステージに立つ気分ですべてのセッションに参加していたから、フルメイクだったし、15センチのヒールを履いていた。それを見た相手はみんな困惑していたね」
 しかし、ヴィンテンが苦心して道を開拓したことで、トランターはジュリア・マイケルズ、マットマン&ロビンなどのヒットメーカーたちと仕事をするようになりました。マットマン&ロビンとはセレーナ・ゴメスの「Lose You To Love Me」を共作しています(セレーナ初の全米1位を獲得)。仲のいいソングライターやプロデューサーたちは、トランター独自のものの見方を正当に評価してくれるようになったそうです。
 トランターは2015年以降、グウェン・ステファニー「Used To Love You」、DNCE「Cake By The Ocean」、ブリトニー・スピアーズ「Slumber Party ft. Tinashe」、ジャスティン・ビーバー「Sorry」、マルーン5「Cold ft. Future」、イマジン・ドラゴンズ「Natural」、ジャネール・モネイ「Make Me Feel」、デュア・リパ「Swan Song」など、次々に、ビッグネームの楽曲や話題曲、ヒット曲を手がけていきます。昨年は『アリー/ スター誕生』のサントラや、アリアナ・グランデのアルバム『thank you, next』などにも楽曲提供しています。そして、今年はガガのアルバムもゴメスのアルバムもチャートで1位を獲得しました。先月リリースされたTWICEの「MORE & MORE」も手がけています。
 
 トランターは2018年、ケイティ・ヴィンテンと一緒にFacetというレコード・レーベルと音楽出版社を設立しました。二人はFacetを「どんな人も受け入れるコミュニティ」と考えており、世代やセクシュアリティを超えてあらゆるアーティストとソングライターと契約し、開拓し、指導するそうです。トランターは「以前の僕は超フェムで超クイアなロッカーだった。あの頃の僕には“ポップスでヒットメーカーとして成功する”なんてありえなかった。そういうことが存在しない世界だから」と語ります。今、ヴィンテンがトランターにしてくれたことを他の人たちにすることが、彼らのミッションとなっています。
 トランターは、Facetと契約を結んだ黒人トランス女性のソングライター、シェア・ダイアモンドと一緒にHBOのリアリティ番組『WE‘RE HERE ~クイーンが街にやってくる~!』のテーマ曲「I Am America」を作っています。このパワフルな楽曲は、LGBTQ+コミュニティの強さを象徴するアンセムとなり、今年のエミー賞でベスト・オリジナル・ソング賞の最有力候補と噂されています。 
 
 一方、トランターは2016年、オーランドのゲイクラブ『Pulse』で起こった銃撃事件の後、いてもたってもいられず、オーランドに飛び、GLAADのサラ・ケイト・エリスと協力し、「Equality Florida Pulse Victims Fund」へのチャリティとなる「Hands」をルポールやブリトニー、セレーナ・ゴメスらとともに制作し、貢献を果たしました。
 2017年には、正式にGLAADのメンバーになり、同年のGLAADメディアアワードでは「あなたに曲を作ってあげる」権利をオークションにかけ、12万ドルをチャリティとしました。
 2019年には、アメリカで最も影響力のある団体「アメリカ自由人権協会」のビル・オブ・ライツ賞(人権擁護に貢献した人々を表彰する賞)を受賞しました。
 
 音楽ビジネス界に絶対的に必要な多様性をもたらすために、トランターはこれからも活動に情熱を注ぐつもりだと語ります。
「最近はクイアであることをカムアウトするアーティスト、LGBTQの若手アーティストたちが契約を得ているので喜ばしいよ。ほんと、最高なんてもんじゃない。『アメリカン・アイドル』後にアダム・ランバートがメジャーデビューしたときは、正気とは思えない論争が巻き起こったよね。あの頃は恐ろしいと感じたものだけど、そこから進歩した今の状況はとても気に入っている。LGBTQのエグゼクティヴの数が増えてほしいし、特に有色人種のLGBTQのエグゼクティヴが見たい。でも、どんなLGBTQのエグゼクティヴも歓迎だ。だって、正直な話、今の僕の頭の中には2人くらいしか浮かばないから。多様性のある人々に仕事を任せると、その下にいる人たちにも多様性が出てくるんだよ」 
 

参考記事:
ガガやアリアナの近作に貢献、無名のグラム・ロッカーがポップスの世界で成功できた理由(RollingStone)
https://rollingstonejapan.com/articles/detail/34295

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