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『プリズン・ブレイク』主演俳優のウェントワース・ミラーが、もう異性愛者の役は演じないと宣言しました

2020年11月11日

 2013年、『プリズン・ブレイク』主演俳優のウェントワース・ミラーがカミングアウトしました。ウェントワースはロシアのサンクトペテルブルク国際映画祭への招待を受けましたが、参加を辞退。それを伝える手紙の中で初めて自身がゲイであることを公表しました。
「ご招待ありがとうございます。過去にロシアで楽しい時を過ごし、遠縁ではありながらロシア人の祖先がいる人間としては喜んで招待をお受けしたいところです。しかし、僕はゲイとして辞退しなくてはなりません」
「僕は同性愛者に対するロシア政府の現在の態度に心を痛めています。この状態は許されるべきものではありません。僕のような人間の基本的人権が否定され、公に愛することのできない国が主催する記念イベントに参加することは道義的に無理です」
 
 
 無実の罪で服役中の兄を助けるため、わざと罪を犯し、兄弟で脱獄を目指すというハラハラドキドキのストーリーで世界中の人々をトリコにした『プリズン・ブレイク』。2005年〜2009年にアメリカで放送され、『24 -TWENTY FOUR-』や『LOST』などとともに日本での海外ドラマブームを牽引した人気作です。ウェントワース・ミラーは『プリズン・ブレイク』でクールな弟・マイケルの役を演じ、一躍ブレイクを果たしました。
 そんなウェントワース・ミラーに主人公マイケルの役を再び演じてほしいという声は、今でも根強いそうです。

 しかし、11月8日、ウェントワースはインスタグラムに真っ白な画像とともにメッセージを投稿し、もうマイケル役を演じることはないと語りました。
 カミングアウト後、ウェントワースのアカウントには中傷のコメントが多数書き込まれました。彼は「僕のことはどうでもいい。僕がこのスペースで虐められることはない。僕には削除する、ブロックする、アカウントを閉じる力があるから。でも僕のアカウントを見ているクィアの子、自分の性的指向を最近カミングアウトした人やそうしようと考えている人に、こういうコメントを目にしてほしくない」と綴り、コメント欄の閉鎖を考えていると語りました。
 さらにウェントワースは、「関連して伝えておくと、僕は正式に『プリズン・ブレイク』から外れた」と宣言。「SNSでの中傷が原因ではなく(それがこの投稿の焦点ではあるけれど)、異性愛者の役は演じたくないからだ。彼らのストーリーはもう語り尽くされてきた」「だからもうマイケルは演じない。もしあなたがドラマのファンで新たなシリーズを望んでいるなら、がっかりするのはわかる。申し訳ない」「もしあなたが、ゲイ男性が演じるストレート男性に恋をしていて、ドラマの行方にヤキモキしているなら……それはあなたの作品だ」
 
 これまでに、同性愛者の役やトランスジェンダーの役を演じて高い評価を得てきた異性愛者・シスジェンダーの俳優はたくさんいましたが(『フィラデルフィア』のトム・ハンクス、『ミルク』のショーン・ペン、『カポーティ』のフィリップ・シーモア・ホフマン、『ボーイズ・ドント・クライ』のヒラリー・スワンクなどはオスカーに輝いています)、逆に異性愛者の役やシスジェンダーの役を演じて高く評価された同性愛者やトランスジェンダーの俳優はいません。
  『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズなどで世界的に有名なオープンリー・ゲイのベテラン俳優、イアン・マッケランは、4年前に「ゲイであるとカムアウトしている俳優もオスカーを獲得したことがない。偏見なのか、偶然なのか」「ストレート男性を演じた私にも(オスカーを)くれたらどうだね?」と語っています。
 ウェントワース・ミラーが映画やドラマは異性愛の物語だらけでゲイがほとんど描かれない、ハリウッドがもっと同性愛作品に前向きに取り組むつもりがないのであれば、自分はもう異性愛者の役は演じない、という勇敢な宣言は、長年のハリウッドのヘテロノーマティブなありように一石を投じるもので、性的指向による不均衡を解消していくうえで歴史的な意義を持つ行動と言えるのではないでしょうか。 
 
 『プリズン・ブレイク』で兄・リンカーンの役を演じたドミニク・パーセルも、ウェントワースの決断を支持し、「君の理由を100%支持するし理解する。自分の健康のため、自分に正直であるために君がそう決断したことを嬉しく思うよ」とコメントしています。
 

参考記事:
ウェントワース・ミラー、ドラマ「プリズン・ブレイク」には「もう出演しない」(ELLE)
https://www.elle.com/jp/culture/celebgossip/a34633117/wentoworth-miller-prison-break-201111/
ウェントワース・ミラー、『プリズン・ブレイク』卒業を宣言! 理由を「ストレートの役は演じたくない」と語る(SPUR)
https://spur.hpplus.jp/culture/celebritynews/202011/10/NgZREgc/
「プリズン・ブレイク」ウェントワース・ミラー、シリーズ復帰は「正式にない」(TVGroove)
https://www.tvgroove.com/?p=54617

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