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ドラァグレース初のプラスサイズなピットクルーとなったミナ・ゲルゲスとは?

2020年08月10日

 『ル・ポールのドラァグレース』には、ドラァグクイーンだけでなく、ピット・クルーと呼ばれるマッチョな男性たちがパンイチで登場するのが恒例となっており、毎回入れ替わり立ち替わりいろんなイケメンが登場し、小道具を持ってきたり、ミニチャレンジでクイーンたちとからんだりしつつ、(視聴者にとっても、出演者にとっても)「アイキャンディ」の役をつとめてきました。しかし、ピット・クルーが人種的多様性に配慮されている一方で、見た目のタイプについては、腹筋が割れてるようなマッチョばかりで、Bear系もいなければ、Twink系(日本で言うジャニ系)もおらず、決して多様とは言えませんでした。新しく始まった『Canada's Drag Race』でようやく、この画一性が覆されることになりました。エジプト出身のクィア(ジェンダー・フルイド)のモデル、インフルエンサー、アクティヴィストのミナ・ゲルゲスが初めてのプラスサイズなピット・クルーに選ばれたのでした。

 ミナ・ゲルゲスは、学生時代の2015年からインスタグラムで、リアーナやビヨンセ、レディ・ガガ、ジェニファー・ロペスらセレブの写真を真似た写真を投稿して、注目を集めました。ミナは、同性愛が違法であるエジプトを離れ、カナダのトロントに移り住みましたが、トロントのアラブ・コミュニティではクィアであるがゆえに受け入れられず、「この世界のどこにも居場所がない」と葛藤し、また、ゲイコミュニティに深く染み込んでいるマッチョ=美というスタンダードに振り回され、「自分が嫌いで、太っていることは醜いと思いこみ」、摂食障害を患っていた時期もありました。そんな様々なアイデンティティの危機を乗り越えようとしていた時期に、身の回りの物を集めて女性のセレブに扮する投稿を始めました。この投稿が人気を博したおかげもあって、拒食症も克服できたのですが、次第にボディサイズが大きくなっていったことでバッシングも受けたそう…。そうしてミナ・ゲルゲスは、アラブ系のボディポジティブなクィアとしてのPRIDEを持ち、メッセージを発信するようになりました。





 ミナはファッション界のボディポジティブ・ムーブメントにも乗って、プラスサイズ・モデルとしてコスメ・ブランドSephoraのカナダでのキャンペーンや、今年のカルヴァン・クラインのキャンペーンにも起用されるなどしてきました。
 『Out』誌のインタビューでカルヴァン・クラインのモデルに起用されたことについて尋ねられたミナ・ゲルゲスは、「信じられない体験だった」と語りました。
「男性の美のスタンダードを再定義するために全力を尽くしたよ」
「今日に至るまで、クィア・アラブ・コミュニティはファッションやポップカルチャーの世界で誰も代表を生んでいない。そして僕はそれを変えたかった。アイコニックなカルヴァン・クラインでそれができたことは、クィア・アラブ・コミュニティに予期せぬビジビリティをもたらした。そして、体の大きな男性でもファッションの世界に身を置く価値があるっていうことを示せたと思う」


 そしてミナは今回、『Canada's Drag Race』のピット・クルーに起用され、テレビに登場したのでした。
 『Out』誌のインタビューによると、ピット・クルーのオーディションを受けたきっかけは、「ピット・クルーがゲイコミュニティでセレブレイトされる魅力的なボディの持ち主だから」だそう。
「ゲイコミュニティの縮図のようなもので、みんながそうなろうと頑張ってる目標のような体型だ。それは「有害な美のスタンダード」で、ゲイコミュニティに深く染み込んでいる。でも、脇腹の肉が掴めるような僕の体型が魅力的じゃないなんてことはない。美はたった1つの形に収まるわけじゃない、もっと多様でいいんだってことを示すことがとても大事だと思った」
「いつも思うのは、ゲイの美の理想の追求のなかで、自分の体型を憎んで絶望している若いゲイの子たちを見なきゃっていうこと。それは僕自身も傷ついてきたことだけど、克服した今、なんとかしなきゃって思う。だから、若いゲイの子たちに、僕のような体型でもいいんだよって知らせることが必要だって思った」
 オーディションでは、「全員、腹筋が割れてる威圧的なマッチョばかりだった中で、僕が唯一のビッグサイズだった。僕はお手洗いに行って、自分に魅力がないなんてことはないと自己暗示をかけた」といいます。
 そのような葛藤を乗り越えて、ミナはドラァグ・レース史上初めての「Love Handles(脇腹の肉)」と「妊娠線」がついた肉体を持つピット・クルーとなったのでした。

 放送のあと、いろんな方が賞賛のコメントをTwitterに投稿しました。
 ドラァグクイーンのAnastarzia Anaquway:「本当の意味でダイバーシティ&インクルージョンを理解できるカナダへようこそ。私たちは皆美しいということを示してくれた『Canada's Drag Race』に感謝!」
 ゲイであることをカミングアウトしている俳優のダニエル・フランゼーゼ:「カナダはボディタイプの多様性を実現した。いろんな体型があるって美しいこと。このインパクトは決して小さくないよ。ありがとう!」
 ドラァグクイーンのBrooke Lynn Hytes:「分厚くて美味しそう!」

 視聴者の多くの人たちが好意的に受け止めたのに対し、ゲイの間では何百ものラベリングや批判のコメントもあったそうで、ミナは「全然かわいくないことだよ」とコメント。「ネガティブにあれこれ言うのはやめて、多様性を認めようよ」
 一方、ミナと同様、自身の体型のイメージについて悩んでいた何千人もの人たちから、感謝のDMも届いたそうです。


参考記事:
Meet Mina Gerges, 'Drag Race's First Plus-Sized Pit Crew Member(Out)
https://www.out.com/television/2020/8/03/meet-mina-gerges-drag-races-first-plus-sized-pit-crew-member

‘Canada’s Drag Race’ Brings Beefiness To the Pit Crew With Mina Gerges(instinct)
https://instinctmagazine.com/canadas-drag-race-brings-beefiness-to-the-pit-crew-with-mina-gerges/

Drag Race’s first Pit Crew hunk ‘representing the big boys’ is redefining gay beauty standards – no matter what his haters say(Pink News)
https://www.pinknews.co.uk/2020/08/09/canadas-drag-race-pit-crew-plus-size-mina-gerges/

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