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風船で持ち上げられた大きなレインボーフラッグがクレムリンへ、LGBTへの抑圧を強めるロシア政府への抗議として

2020年08月20日

 LGBTへの抑圧をますます強めているロシア政府への抗議として、元アルハンゲリスク市長で現在はアーティストのゲイの方が、たくさんの風船をつけた巨大なレインボーフラッグをクレムリンに向けて風船で飛ばしました。

 ロシアは、2013年に同性愛プロパガンダ禁止法(アンチ同性愛法)を導入し、パレードなどLGBTの権利を公に表明することや同性愛を「奨励する」行動を禁じています。そのため、ロシアでレインボーフラッグを掲揚することは挑発的な行為と見なされます。

 今年6月25日、モスクワのアメリカ大使館はプライド月間を祝してレインボーフラッグを掲げました(もっとも、トランプ政権は大使館のポールを使ってレインボーフラッグを掲揚することを禁止しているので、建物のあちこちに掲げられました)。プーチン大統領は「そこで働く人々がどんな人なのかがうかがい知れるというものだ」と嘲るように述べました。保守派の人々の中にはあからさまに「社会秩序を乱す」と反発する人もいました。のちにレインボーフラッグは撤去されました。
 27日には「ロシアと世界中のLGBTの人々との連帯の表明」としてイギリス大使館がレインボーフラッグを掲げました。イギリス大使館は声明で、性的マイノリティの人々は特別な特権を求めているわけではなく、ただ尊厳をもって扱われることや他の人々と平等に権利を与えられることを望んでいるだけだと述べました。
 ほかにも、カナダ大使館がレインボーフラッグを掲げています。

 ロシアでは先月、同性婚禁止を含む新憲法が国民投票で成立しました。政府を支持する団体が製作した改憲案への賛成を求める広告では、同性カップルの養子となった孤児が悲しみ、それを見た高齢女性が嫌悪感もあらわに唾を吐く様が描かれました。「これがあなたの選択するロシアですか?」というナレーション。「国の将来を決めましょう」
 国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」欧州・中央アジアのモスクワ事務所副所長、ターニャ・ロクシナは、「2013年の同性愛プロパガンダ禁止法の制定以来、政府があおってきた同性愛者への差別を継続するものだ」と指摘、活動家のアレクセイ・ナザロフは「(プーチン氏は)同性愛嫌悪という手法を10年以上にわたり使ってきた。LGBTを差別する国の政策と合法化された暴力がロシアを支配している。改憲は差別が新たなステージに向かうことを示している」と語っています。
 
 この新憲法が制定されてすぐ、プーチン大統領とのテレビ会議で、保守系政治団体「女性連合」のエカテリーナ・ラホワ代表が「虹色のアイスクリームは子どもがLGBTに興味を持つきっかけになる。青少年の健全育成を阻害する」と珍説を披露し、販売中止を求めました。プーチン大統領はアイスへの評価は避けつつも「LGBTに関わる情報は統制する必要がある」と応じました。
 また、改憲後、LGBTの権利擁護を訴えるデモに参加した人権活動家が逮捕されています。

 そんななか、8月15日(土)の夜、モスクワのマネージュ広場で、たくさんのレインボーカラーの風船が巨大なレインボーフラッグをゆっくりと持ち上げ、浮かび上がり、クレムリンへと飛んで行く様がソーシャルメディアに掲載されました。
 このプロテストは、アレクサンダー・ドンスキーというパフォーマンスアーティストによるものです。アレクサンダー・ドンスキーは、ロシア北部のアルハンゲリスクの元市長(2005年-2008年)で、2006年、大統領選に立候補することを発表しましたが、2007年に経済犯として当局に訴追され、執行猶予付きの3年の刑を言い渡されました(支持者はこれを政治的な策略によるものだと主張しています)。その後、彼は現代美術家兼ギャラリーオーナーとなり、2017年にゲイであることをカムアウトしています。

 ドンスキーは、『ノーヴァヤ・ガゼータ』紙に対して、このアクションは、今年のプライド月間にアメリカやイギリスの大使館がレインボーフラッグを掲げたことをプーチン大統領が批判したことへのレスポンスだと述べました。また、自身のギャラリーが最近、何者かによって破壊されたことも語りました。
 彼はこのデモンストレーションを「LGBTはクレムリンを超えて」と名付けました。 

 



参考記事:
Gay artist uses balloons to float giant rainbow flag over Moscow(Queerty)
https://www.queerty.com/gay-artist-uses-balloons-float-giant-rainbow-flag-moscow-20200819
モスクワの英国大使館にLGBTコミュニティの旗が掲げられる(Sputnik)
https://jp.sputniknews.com/life/202006287571290/
「虹色の旗」に不快感 プーチン氏(時事通信)
https://www.jiji.com/jc/p?id=20200706105907-0035123231
[FT]ロシア憲法改正は誰のため LGBT活動家の嘆き(日経新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO61192650W0A700C2000000/
改憲で「虹色アイス」とばっちり 同性婚禁じたロシア、LGBTに逆風強まる(東京新聞)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/45606

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