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森会長の“両性”発言に批判が相次いでいます

2021年02月05日

 JOC臨時評議員会で「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」などと女性差別発言をして非難を浴びた森喜朗会長は2月4日、記者会見を開き、約20分間にわたって記者と質疑応答しましたが、そのなかで「(世の中には)女性と男性しかいないんですから。もちろん両性っていうのもありますけどね」との発言があり、新たに批判の声が上がっています。

 1992年バルセロナ五輪柔道女子銀メダリストで日本女子体育大学教授の溝口紀子氏が4日、日本テレビ系「情報ライブ ミヤネ屋」にリモート出演しましたが、番組MCの宮根誠司キャスターから会見についての感想を問われた溝口氏は、「冒頭、森さんが女性蔑視のような発言に対して撤回すると言ったんですけども、その後に私は椅子からずり落ちちゃった発言があって」「男性、女性、両性っておっしゃったんですね。これ、かなりNGワードで。LGBTの方をおっしゃりたかったのかわからないですけども、この発言はもう海外では本当に差別ととらえられるんじゃないかと」「やっぱり今のオリンピックアスリートとか世間のLGBTの考え方って随分(森会長の世代と)変わってて。その中で3つなんですよ、男性、女性、両性って。それだけで分かれないんですよ、区分できないんです。それを公の場で言っちゃったことがすごい、ちょっと問題発言。今度、そこを突かれるなと思います」と指摘しました。

 また、キャスターの辛坊治郎氏は自身がパーソナリティを務めるニッポン放送「辛坊治郎 ズーム そこまで言うか!」で、「今回一番ひっかかったところ」だと語りました。辛坊氏は「私もね、あのときの森さんの言い方が、とにかく女性と男性しかいないと言い切ったんですよ。(その後)多分空気を一瞬読んだのでしょうね、これ自体が失言と取られかねないと思った森さんは、そっから付け加えるべき言葉で『もちろん両性もいる』って言ったが、両性って何よ」「男性女性という分け方では性の問題は扱えない」と批判していました。

 ハフィントンポストの記事「森会長、謝罪会見の「男性、女性そして両性」発言に疑問の声も」では、「「両性」という言葉は、女性と男性の枠に限定しない性別のXジェンダーやノンバイナリーを意味した可能性はある。しかし、性的少数者の当事者たちへの配慮としては、乱雑な言葉遣いともとられ、森会長の「両性」発言にSNSなどで批判が出ている」として、Twitterなどで「LGBTQなどに配慮しなきゃと考えがよぎったのだろうが、出てきた言葉が”両性” 」「知識の無さを露呈したにすぎない」「男性と女性と『両性』という括りで社会を語る。正直、話になりません」「国際社会にさらに恥をさらした」「インターセックスの人のことを言いたかったのか? だとしても「両性」と呼ぶのは蔑視的」「考え方のアップデートができていない」などと批判する声が相次いでいることに触れています。

 一般社団法人fair代表理事の松岡宗嗣さんはTwitterで、「実際の映像でも「男性と女性しかいないから」と言い切り「やばいまた燃えちゃう」と焦ったのか、取ってつけたように「両性もある」と言った印象だった。言及しただけマシかもしれないが、明らかに認識が甘いし不適切、まず「男性と女性しかいない」という言葉との矛盾。」「いや、やはり認識が「甘い」ではなく「間違っている」な…。性自認が両性とは言わないし、ここでいう両性は「両性具有」という意味なのだろうか。だとしたらなおさら間違った認識。」とコメントしています。
 
 そもそも森会長の言う"両性"とは何のことを指しているのでしょうか。
 「女性と男性しかいないんですから。もちろん両性っていうのもありますけどね」という文脈から、Xジェンダー(ノンバイナリー)の方のジェンダーアイデンティティに含まれる「中性」「両性」「無性」「不定性」などの中の「両性」、つまり、自分のことを男でも女でもあると認識するジェンダーアイデンティティのことを指しているのではない、ということは明らかでしょう(上記のハフィントンポストの記事の「女性と男性の枠に限定しない性別のXジェンダーやノンバイナリーを意味した可能性はある」とは、そういう意味です)
 もし、性分化疾患の方たちのことを指しているのだとすれば、これは侮蔑的表現にほかなりません(日本性分化疾患患者家族会連絡会「ネクスDSDジャパン」は、こちらの投稿で「DSDs(インターセックスの体の状態)に対して「両性」「両方」「どちらでもない」という表現を使うのはpejorative(侮蔑的)である」と述べています)
 また、「「LGBTQのこと頭にありますよ」パフォーマンスはお控え願いたい。そして的を外しています(一橋大学ジェンダー・セクシャリティ|LGBTQ+ Bridge Network)」「いちいちTG、TSの話まで持ってくると余計に腹が立つ」といった声も上がっているように、トランスジェンダーやジェンダーアイデンティティが非典型な方全般、あるいは性的マイノリティ全般のことを指しているとの見方もあります。もし(性分化疾患ではなく)LGBTQへの「配慮」としてあのように述べられたのだとしても、知識不足も甚だしいと言わざるをえません。2018年、東京2020大会組織委は大会ビジョンに掲げる「多様性と調和」の実現に向け、障がい者や性的少数者(LGBT)らが働きやすい環境を整備することなどを森喜朗会長ら幹部が宣言しましたが(共同通信「東京五輪、多様性と調和実現を 森会長ら幹部が宣言」より)、2年以上かけて森会長はいったい性的少数者(LGBT)にどれほど関心を払ってきたのか、とのそしりを免れないですよね…。
 
 海外では、女性差別発言に関して、IOC委員のヘイリー・ウィッケンハイザー氏や欧州議会安全保障・防衛小委員会のナタリー・ロワゾー委員長などから厳しい批判の声が上がっていますが、今回の"両性"発言に関しても、海外のLGBTIQコミュニティからの批判は避けられないでしょう。たいへん残念です。
 

参考記事:
森会長、謝罪会見の「男性、女性そして両性」発言に疑問の声も(ハフィントンポスト)
https://www.huffingtonpost.jp/entry/news_jp_601b9883c5b62bf307542c3d
溝口紀子氏 森会長の“両性発言”に「これ、かなりNGワード」「海外では差別ととらえられる」(スポニチアネックス)
https://www.sponichi.co.jp/sports/news/2021/02/04/kiji/20210204s00048000397000c.html
辛坊治郎氏 森会長「男性、女性、両性」発言に「今回一番引っかかったところ」(デイリースポーツ)
https://www.daily.co.jp/gossip/2021/02/04/0014055527.shtml

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