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韓国のクィア映画『ユンヒへ』が青龍映画賞で2部門受賞

 大鐘賞と並ぶ韓国の二大映画賞の一つ「青龍映画賞」の授賞式が2月9日に開催され、映画『ユンヒへ』のイム・デヒョン監督が監督賞と脚本賞を受賞しました。

 『ユンヒへ』はそのほとんどが小樽で撮影され、昨年11月の大阪韓国映画祭でも上映されているのですが(大阪では『ユニヘ』という名前でした)、日本ではあまり情報がなく、レズビアン作品としての意義について語る情報となると、皆無に近いです。そんななか、『キミのセナカ』などLGBTQ関連の本をたくさん販売しているLONELINESS BOOKが、この映画のメイキングブックも手がけていて、実に素晴らしい解説文を書いていましたので、ご紹介いたします。
 「ユンヒへ 윤희에게(Moonlit Winter) / メイキングブック」解説ページによると、『ユンヒへ』は韓国でこれまでになかった中年女性のクィア映画として、韓国版『キャロル』とも称され、絶賛されている作品です。
 こんなストーリーだそうです。

 まもなく巣立ちを迎える高校生の娘を育てたユンヒ(キム・ヒエ)のもとに、ある日、一通の手紙が届く。その手紙を読み、心の奥にしまっていた初恋の記憶が蘇るユンヒ。それは20年前、連絡を絶ち日本へ行ってしまったジュン(中村優子)からの手紙だった。
「ユニへ、元気だった? ずっと前から聞きたかった。あなたは私のことを忘れてしまったかも。もう20年も経ったから。急に私のことを伝えたくなったの。生きていればそんな時もあるでしょう、どうしても我慢できなくなってしまう時が。あなたは私にとって憧れの対象だった。あなたと出会ったから、私は自分がどんな人間なのか知ることができたの。時々、韓国が恋しくなる。私たちが住んでいた町にも行ってみたいし、一緒に通った学校にも訪れてみたい。韓国にいる母は元気にしているのか…そしてあなたがどう過ごしているのか気になっています」
 その手紙をこっそり読んだ娘のセボムは、そのことを隠したまま、手紙の送り主が暮らす北海道、小樽へ一緒に旅行することを提案する…。

 この作品は、2019年釜山国際映画祭でクィアカメリア賞を受賞しています(ベルリン国際映画祭のテディ賞、ベネツィア国際映画祭のクィアライオン賞のように、釜山国際映画祭も最優秀LGBTQ映画賞を設けているんですね!)
 受賞について、以下のように評されています。
「久しぶりに映画を見て、胸躍る経験をした。それが韓国で作られた女性たちの愛の物語を描いた映画だからなおさらだ」
「性的少数者への嫌悪と差別がひどい現実の中で、この作品に出会えてよかった。可視化されずに対象化されたり、しばしば無視される女性の生活を、繊細に表現する監督の視線が感じられた」


 GLOBE+「小樽で撮影の韓国映画「ユニへ」イム・デヒョン監督インタビュー」では、イム・デヒョン監督が韓国のLGBTQ事情について語っています。

――日本では近年LGBTら性的少数者について社会的に受け入れる動きが続いています。偏見も以前に比べると減り、カミングアウトする人も増えました。韓国ではどうでしょうか? この映画を作りながら、あるいは韓国で公開して感じたことはありますか?

 日本では一部の地域で同性間のパートナーシップを認める制度があること、国会議員の中でもカミングアウトした性的少数者がいることは知っています。韓国でもやはり声を上げる人たちはたくさんいますが、韓国社会が日本社会に比べてこのイシューではまだ停滞している印象はあります。韓国では性的少数者を嫌悪する集団が政治勢力となっているためかもしれません。
 この映画を公開し、韓国のLGBTコミュニティから支持されました。特にL(レズビアン)のコミュニティの支持でした。私はこの映画を通して今よりももっと大変だった過去を過ごしてきた世代の性的少数者について考える機会を作りたいと思いました。
 
 イム・デヒョン監督自身はストレート男性だと思われますが、「今よりももっと大変だった過去を過ごしてきた世代の性的マイノリティ」のリアリティを世に問うために脚本を書き、この映画を製作したのです。イム・デヒョン監督のそのようなひたむきな思いが込められた映画は、キム・ヒエさんや中村優子さんの演技のおかげもあって、また小樽という土地の魅力も相まって、「韓国の『キャロル』」とも称されるような、とてもいい作品になったのでしょう。そうして今回の青龍映画祭での受賞につながりました。
 そして監督は、LONELINESS BOOKのツイートによると、受賞スピーチで「ユンヒへはクィア映画です。ご覧のとおり、2021年はLGBTQコンテンツが当たり前になっています、それが嬉しい」と語ったそうです。素敵です。

 今後、世界的にも評価されるといいですね。
 そして、日本で一般公開される日が来るのを楽しみに待ちましょう。
 


参考記事:
ユンヒへ 윤희에게(Moonlit Winter) / メイキングブック(LONELINESS BOOKS)
https://qpptokyo.com/items/5eb1b84872b9117d875719ed
小樽で撮影の韓国映画「ユニへ」イム・デヒョン監督インタビュー(GLOBE+)
https://globe.asahi.com/article/13947127

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